5号館を出て

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ダーウィン医学のお気に入り

 朝日ドットコムより

 薬効かぬアタマジラミ急増 2年で倍、全体の1割超に

 私が生まれる前は、子どもの頭にはシラミがいるのが普通だったと聞いていますが、日本を占領したアメリカの進駐軍が持ち込んだDDTで、ほぼ撲滅されてしまったという話で、ノミはたくさんいましたがシラミは見たことがありません。

 それが、最近は子ども達の間で意外にシラミが多く見られるようになっていると聞いたことがあります(いまだにほんものは見たことがありません)。そして、国立感染症研究所(東京都新宿区)の調査によるとそのシラミに薬が効かないものが増えているというのです。
 感染研昆虫医科学部は、06年から全国の保健所などを通じて集めたアタマジラミの遺伝子を解析した。駆除薬が効かない抵抗性のタイプは06年は4.76%だったが、07年6.18%、08年11.49%と倍以上に増えていた。3年間に届いた28都道府県分のうち13都道県分で抵抗性が確認され、広がりが懸念されている。

 国内で製造承認されている駆除薬は、シラミの神経細胞にある特定たんぱく質に作用し殺虫効果を持つ。しかし抵抗性のシラミは、このたんぱく質の構造を決める遺伝子の一部が従来と異なっていた。
 要するに遺伝子の突然変異で、タンパク質の一部の形が変わり殺虫剤が働かなくなったということです。

 そういう個体と変異してない個体がいるところで駆除薬を使うと、変異のない個体は死に、変異のある個体は生き残りますので、生き残った個体およびその子孫は薬が効かないということになります。つまり、駆除薬による「人為選択」で起こる進化と考えることができるわけで、なんとアメリカでは「米国では抵抗性が全体の90%近くに上」ってしまっているのです。

 そうです。これこそ、まさにダーウィン医学(進化医学)のもっとも得意とするストーリーのひとつです。

 では、昔のシラミはなぜDDTで撲滅されてしまった(ように見えた)のでしょうか。おそらく、DDTに耐性のものも出現していたのではないかと思われますが、それ以と同時に良く髪を洗うようになったなどという生活の変化もあって、目にとまらなくなったのではないかと思われます。そして、DDTは使用禁止になってしまいましたので、DDT耐性の人為選択は働かなくなったことも関係あるかもしれません。

 いずれにせよ、ウイルス、細菌、害虫などを薬剤で駆除しようとすると、必ず耐性個体が出現し、薬によって選択されて増えてくるというのは、ダーウィン医学お得意のストーリーです。

 では、どうすれば良いのかというと、殺すならアルコールやアルカリといった「物理的手段」で確実に殺すか、そうした生物の「天敵」になりそうな生物と戦わせる、感染経路を断つなど、耐性個体の進化を許さない方法が望まれます。

 それこそがダーウィン医学のお得意分野なのです。もちろんコマーシャルです(笑)。

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進化から見た病気 (ブルーバックス)

Commented by js at 2009-02-17 19:02 x
1年ほど前に子供がシラミをもらってきて、家族間で流行りました。駆虫薬も使いましたが、薬についてる目の細かい櫛でこまめに梳くだけでほとんど駆除できるように感じました。頭にアルコールやアルカリってわけにいきませんし。爪でつぶすといい音がして気持ち良かったです。
Commented by stochinai at 2009-02-17 20:29
 すみません。言葉足らずでした。その爪でつぶす変わりに、アルコールやブリーチを使うということです。
 子どものころノミを同じように爪でつぶした記憶があります。ノミは気をつけないと、爪でつぶそうとすると飛び跳ねて逃げられたりしたものです。
by stochinai | 2009-02-16 21:47 | 生物学 | Comments(2)

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