5号館を出て

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セクハラを訴えたらパワハラを受け、あげくにクビにされる

 自衛隊が事実上の解雇通知 札幌地裁で係争中の女性自衛官に(02/16 20:52)
 同僚からわいせつ行為を受けたなどとして、道内の航空自衛隊に所属する女性自衛官(22)が国に損害賠償を求めた訴訟で、原告の代理人弁護士が16日、記者会見し「女性が事実上の解雇通知を受けた」と明らかにした。
 これが日本を守る自衛隊の実態ということでしょうか。最初のセクハラ事件に関して空自千歳地方警務隊から書類送検を受けた地検も不起訴処分にしたということで警務隊および地検双方にも共犯の疑いもあり、そうなると日本という国ぐるみでセクハラを見逃し、パワハラを擁護したということになると言わざるを得ません。

 事件の概要は例えばこちらをご覧ください。

 女性自衛官人権訴訟で明らかになった自衛隊の実態

 被害者からの申し立てが中心なってはいますが、加害者および管理者(自衛隊)からの説明が極端に少ない以上、それをほぼ信じても良いと思っています。要するに、自衛隊内で発生したセクハラ事件を訴えでた女性自衛官に対して、組織ぐるみとも言える退職強要があり、組織内では問題の解決はないと思った原告がセクハラおよびパワハラに対する損害賠償訴訟を起こしたのですが、今度は自衛隊あるいは防衛省という組織として、現時点において説明することのできない理由(内定であるという理由で航空自衛隊はコメントを拒否しています)で、彼女の任用継続を拒否するという発表がされたということです。

 私は知らなかったのですが、自衛官は公務員でありながらその身分保障のない職業のようで、彼女の身分である「空士長の任用は2年ごとに更新される」という期限付き雇用だったそうです。このサイトではおなじみのポスドクや派遣社員を含め、「再任が可能な期限付き雇用」という身分が、雇用主に対して如何に弱い立場に置かれているかということを象徴的に示している事例だと思います。

 明らかに悪いことをした「犯人」がいて、それを訴えた人間が組織の「和」を乱すものとして排除されるというのは、伝統的な日本的組織には典型的に見られるパターンですが、それは決して許されるべきではないという立て前から、例えば大学などでは毎月のようにセクハラ・アカハラ(パワハラ)を理由とした懲戒免職が報告されるようになってきました。

 中には、それは本当にアカハラなのか?と思われるような事例がないわけでもありませんが、基本的に(そして時には必要以上に)弱い立場のものの立場にたった処分が行われるということで、とりあえずは良いのだと思います。もちろん、不当な処分があった場合には、それに対する訴えも認められなければなりません。

 そんな中で、今回の航空自衛隊=防衛省がとった対応はあまりにも古くさく、そんな組織の状態でこれからの日本の防衛を担うことを任せられるのかと、はなはだ疑問に思われるところです。かの自衛隊を心から愛する多母神さんのご意見も是非ともうかがいたいところです。(彼なら、自衛隊という組織を守るためには、どんな理不尽な要求でも上司の意見には従えと言いそうですが、それを言った時点で自衛隊は終わりだと私は思います。)

 女性自衛官は数が増えてきているようですがまだまだ少なく、それだけに非常に優秀な人が多いと聞きます。そういう優秀な女性自衛官の能力を発揮させて、本当の意味で日本と世界の平和を守ることに貢献してもらえるのであれば、現時点では明らかに違憲な自衛隊の存在というものを見直すこともあり得るかもしれませんが、こんなふうに組織ぐるみでセクハラ・パワハラを続けているような組織に日本の国民が守れるはずはありません。そんな自衛隊ならいりません。

 最後にこの被害者であり、再度被害者になりつつある女性自衛官が訴訟を起こした時の記者会見に送った声明の一部を引用させていただきます。ソースはこちらJANJANです。
 私は、私の人権と女性としての尊厳を取り戻すため、国と闘いたいと思います。3年前、自衛隊に入隊したころ、私は自衛隊に対する大きな期待と夢を持っていました。今でも私は自衛隊に期待をしております。それは、今後自衛隊が社会常識が通用する普通の組織となり、女性が安心して働ける職場になれるかどうかにかかっていると思います。

 最後に、私が立ち上がることで、同じ体験をされた方に勇気と希望を与えることができればと思います。
 自衛隊だけにとどまらず、日本という国全体に投げられた課題だと思います。
Commented by ある at 2009-02-23 02:49 x
ちょっと違いますが、正義感で内部告発した人(食品会社)も結局は告発者が組織に抹殺されているケースが多いようですから、おっしゃるとおり、国全体が組織内部の人間の人権保護について真剣に考える必要がるとおもいます。
Commented by habichan at 2009-02-23 15:56 x
こういうニュースは、ブログを読む醍醐味です。
たぶん福岡県では、新聞を含めて、全く報道されてないと思います。
ニュースといえば「東京発」と「地域ニュース」のみがテレビから流れていますが、地方発でも重要なニュースはあるわけで。
北海道の方々にとっては承知の事実でも、離れた場所へも同様に報道されているとは限りません。
続報があれば、ぜひブログで発信してください。
Commented by stochinai at 2009-02-23 21:11
 こっちでもなかなか報道されないので情報は少ないのですが、できるだけフォローしたいと思います。こちらには、サポートページがあります。

女性自衛官の人権裁判を支援する会
http://jinken07.dtiblog.com/
Commented by 碧猫 at 2009-02-24 21:32 x
はじめまして。
こちらのエントリを拝見し、見て回って集めた情報でエントリを上げました。トラックバックが通らないようですので、ご挨拶にコメントさせていただいています(エントリのアドレスはURL欄に)。
Commented by stochinai at 2009-02-24 23:23
 ありがとうございます。

 皆さま、こちらにまとめサイトができましたので、是非ともごらんください。
http://azuryblue.blog72.fc2.com/blog-entry-622.html
Commented by 教育機関もダメ at 2009-08-23 17:27 x
大学でのセクハラも訴えたほうが泣き寝入りするパターンが圧倒的です。被害者が加害者扱いされるというセカンドハラスメントもあります。訴えても脅されて不起訴になることもめずらしくないようです。蟻地獄です。
Commented by 5号館の近所 at 2009-08-24 04:36 x
そう、大学も同じです。私が知る限り少なくとも大学では、不当なことに不当だと抗議すると、もっと嫌がらせしたくなる人が多いようです。だから、周囲の大学人を見る限り、万事につけ抗議するのではなくやり返す、報復という手段を取る人が多いです。これが唯一の抑制になっているようです。野蛮で、やくざのようです。
Commented by 非常勤 at 2010-03-14 14:54 x
もう、泣き寝入りで辞めるんですが・・・(しかも全員クビなんです。)某大学の非常勤です。
私は一年にわたり、グループで権力をもっている方からパワハラを受け続けました。非常に理不尽な理由で大勢の前での罵倒等です。他の方も、見ていて不快で怯えてるということを踏まえ、代表の先生に相談したところ、継続はなくなりました。
継続の条件自体が「そのようなことを気にせず忠誠を誓う」ということで。
ハラスメントに関しては「個人の受け止め方」もあると思い、負けず、孤独に闘ってきました。
私が一番ストレスに感じていたのが、財源の事務処理です。
一歩間違えたら、完全に不正につながるような指示です。
その件のいくつかについてはなんとか、止めてきました。
・・・そのことを、正職員に相談したところ、「先生方が間違ったことをした場合、それを止めるのが皆さんの仕事。それができないとなると事務としての資質を問われる」という返答でした。
非常勤では、とても太刀打ちできないので、正職員に相談したのに・・

どこにも言えずに、たまたま見つけた、当ブログで書かせて頂きました。
Commented by stochinai at 2010-03-14 23:30
 ここに書いたからといって、「非常勤」さんの状況が即改善されるということはないと思いますが、おっしゃるような状況はまだまだたくさんあるのが日本の現状だと思います。内部告発は可能だと思いますが、今の日本では残念ながら内部告発者もまた被害を受ける存在になってしまうことが多いようです。というわけで、まずはご自分の身を守ることが最優先されると思いますが、その上でもし可能ならばなんらかの方法で「悪」を世間的に露見させることをしなければ、被害者が続くことになります。

 難しいことですが、どこかでなんとか断ち切りたい負の連鎖です。
Commented by 非常勤 at 2010-03-15 21:13 x
見ず知らずの通りすがりのものが、書き込んでしまってすみませんでした。削除した方がよいようでしたら、と思い、本日立ち寄りました。
毎日、揺れています。
この際、思い切って「告発」しようかどうかなどとも思います。

被害者は私以外に過去に何人もいたようで、これからもでてくると
思うので、、
私のような単なるパートならともかく、将来のある学生も被害にあったようなのです。
予算と格闘しつつ、毎日悩んでいます。
Commented by stochinai at 2010-03-15 21:28
 まずは、ご自分の身を守ることを最優先にお願いします。その上で、弁護士を含めある数の「同士」を募ることができるようでしたら、告発も選択肢のひとつになるかもしれません。弁護士さんを間に立てると、問題の人物や大学当局も意外と簡単に折れたりすることもあります。人に迷惑をかけたくないと、孤立無援で戦ってもいろいろな人に影響が及ぶものですので、理解者と相談しながらというのが良いと思います。「理解者」などいないと思われるようなところにも、必ずいるものです。いままで我慢してきたのですから、ここでぶち切れるよりは「悪」を懲らしめる手段を冷静に考えてみましょう。
Commented by 非常勤 at 2010-03-16 21:48 x
アドバイスまで頂くことになり、本当にありがとうございます。

おっしゃる通りです。大部分の関係者の方は、諦めて、見てみぬふりですが、、理解してくださる方もゼロではありません。
今一度冷静に考えてみます。
by stochinai | 2009-02-22 23:24 | つぶやき | Comments(12)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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