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風邪にもビタミンD

 太陽に当たることで作られるビタミンDは骨の代謝に重要だということは古くから知られていましたが、ビタミンDが不足すると呼吸器系の疾患にかかりやすくなることを示す論文が発表されました。

 Association Between Serum 25-Hydroxyvitamin D Level and Upper Respiratory Tract Infection in the Third National Health and Nutrition Examination Survey

 全国調査で明らかになった血清中のヒドロキシ・ビタミンDと上気道の感染症の関係

 ARCH INTERN MED/VOL 169 (NO. 4), FEB 23, 2009 (pdf)

 解説記事は、SciAm.com の 60-Second Science Blog の Vitamin D deficiency linked to more colds and flu と、Physorg.com の Vitamin D deficiency may increase risk of colds, flu をご覧下さい。

 話は簡単で、ビタミンDが不足すると普通の人よりも36%気道感染にかかりやすくなり、それがぜんそくの人の場合にはビタミンが足りている人に比べ5倍感染しやすく、さらにCOPDと呼ばれる慢性閉塞性肺疾患を持っている人でも2倍感染しやすくなるという結果が得られた、ということです。つまり普通の人でも、1年に2回は風邪をひくのだそうですが、ビタミンD不足の場合にはもう1回余計に風邪をひき、ぜんそくやCOPD持ちの人だと1年に4-5回のところをビタミンDが不足しているともう1回風邪をひくという統計結果です。

 約19000人の血中のビタミンDレベルを測定すると同時に、ここ数日の間に咳を含む上気道の炎症(風邪)の症状があったかどうかを尋ねてまとめて作ったのが次のグラフです。
c0025115_230642.jpg
 シーズンを問わず、血中のビタミンD濃度と、風邪をひかないという傾向が見事に相関してるという結果が得られています。

 ビタミンDが不足するとhCAP-18と呼ばれる抗菌作用を持ち免疫系を刺激する働きのあるペプチドの合成が下がることが知られており、ビタミンDによってそうした免疫系が活性化されることで、風邪をひきにくくなるのではないかと考えられています。

 かつて、ビタミンCが風邪の予防や治療に効果があると言われたこともありますが、今ではほとんど否定されているようです。一方、今度のビタミンDの働きはどうやら確からしい感じです。現在でも、ビタミンDは骨の健康のために平均的アメリカ人1日に200-600単位(IU)を取ることを推奨されていますが、今回の調査から明らかになった免疫系の活性化のためには、例えば1日に1000-2000単位を取るのが望ましいと主張する学者もいるようです。

 アメリカ人というのは、こういうデータが出るとすぐにサプリメントでなんとかしようとして、国中が沸き立つ傾向がありますので、この先ビタミンDブームが起こるのかもしれません。しかし、こうした時にすぐにビタミンDサプリメントに頼るのではなく、まずは適度に日光にあたることやビタミンDを多く含む魚をたくさん食べることを目指すべきでしょう。また、ビタミンDが不足すると風邪をひきやすいとしても、風邪の誘引は他にもたくさんありますので、総合的な防御を心がけることも必要です。

 こういう論文が出ても、「ビタミンDさえたくさん取っていれば、風邪やインフルエンザにかからない」、というような誤った結論に踊らされないように気をつけたいものです。不足するのは問題ですが、過剰にあれば大丈夫という結果はどこにもないのですから。
Commented by varoko at 2009-02-25 13:33
ちょうど私も昨日ニュースを聞いてたところで、トラックバックさせて頂きました。
by stochinai | 2009-02-24 23:19 | 医療・健康 | Comments(1)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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