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白髪の原因が明らかになった

 白髪は典型的な老化症状のひとつですが、特に健康被害があるわけではありませんし、洋の東西を問わず知恵の象徴と考えられていることや、最近の染色技術の発達で比較的簡単に隠すことができることから、それほど深刻に語られることがないものです。しかし、もしもそれを阻止する方法が発見されれば、それは老化防止とつながるという期待も持たれていますので、話題になることも多いと思います。

 一昨日出た論文で、白髪の原因は過酸化水素(H2O2)だということが示されました。

Senile hair graying: H2O2-mediated oxidative stress affects human hair color by blunting methionine sulfoxide repair

The FASEB Journal article fj.08-125435. Published online February 23, 2009

 解説記事は、ScienceDaily の Why Hair Turns Gray Is No Longer A Gray Area: Our Hair Bleaches Itself As We Grow Older ScienceDaily (Feb. 24, 2009) が良いと思います。

 過酸化水素が白髪の原因と聞くと、髪を過酸化水素で脱色して「金髪」にすることを思い出します。これは、髪の色の原因となっているメラニンという色素が過酸化水素で酸化分解されて色が抜けるのですが、白髪の原因が過酸化水素だからといって、それによってメラニンが分解されているわけでは、もちろんありません。

 髪の毛を作る毛包という組織では、過酸化水素が常に作られているのだそうです。若いうちはその量が少ない(マイクロモル・レベル)ことと、それを水と酸素に分解するカタラーゼという酵素が活発に働いているので、問題は起こりません。もしも過酸化水素が分解されないと、メラニン色素を作る酵素であるチロシナーゼという酵素の中にあるメチオニンというアミノ酸が過酸化水素によって酸化されることで、酵素としての働きを失うことがわかりました。しかし、たとえそういう状況になっても、若いうちはチロシナーゼの中で酸化されたメチオニンから酸素を奪うことでチロシナーゼの働きを回復させる力を持ったMSRAという酵素とMSRBという酵素が毛包の中で働いており、ほとんど問題は起こらないようです。

 ところが、年をとって毛包の中で作られる過酸化水素の量が増える(ミリモル・レベル:1000倍!)と、カタラーゼやMSRA/B自身も酸化されてその活性を失ってしまい、結果としてチロシナーゼの働きを回復させることができなくなるという悪循環に陥って、一気に髪の色が失われるということになるというわけです。模式図をごらんください。
c0025115_21251061.jpg
 培養した毛包を使った実験では、メチオニンを添加することで作られた過酸化水素を減らすことができるというような結果も得られているそうで、毛包の中の過酸化水素を減らす方法が開発されたら、髪が白くなることを阻止できるかもしれないというようなことも書いてありました。

 そういう目で、古くから髪に良いと言われてきた海藻や卵・チーズ・レバーなどにメチオニンが多く含まれていることが気になりました。食物の一部として摂取されたメチオニンが、どのくらい毛包に届くのかははなはだ疑問ですが、これからの研究の展開によっては意外と無関係ではないことがわかったということになるかもしれません。

 今回の研究結果も、コラーゲンやヒアルロン酸などと同じように白髪予防にメチオニンを食べようという短絡的な話につながることを恐れますが、メチオニンというアミノ酸だけで白髪が防止できるのだとしたら、それはそれでなかなかおもしろい話だと思いました。

 メチオニン入りシャンプーならいいのかな~(?)という気もしますが、試してみて効かなかったとしても、当方は責任をとりませんので、悪しからず(笑)。
Commented by 鶏肋 at 2009-02-28 08:28 x
興味深いです。元の論文が読めてないのですが、どうしてそこまで毛包の過酸化水素が増加するのでしょう。ストレスで白髪になるというのも、同じ過程なのでしょうか。
Commented at 2009-03-05 22:33 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
by stochinai | 2009-02-25 21:46 | 医療・健康 | Comments(2)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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