5号館を出て

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黒いハイイロオオカミはイヌから遺伝子を受け継いだ

 今日出たScienceの表紙には、普通のハイイロオオカミと黒いハイイロオオカミが遠吠えしている写真が出ています。「シートン動物記」に収録されている「オオカミ王ロボ」に出てくるオオカミはハイイロオオカミだそうですが、今や絶滅が心配されている種でもあります。
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 イヌの毛の色を黒くする遺伝子は、defensinという免疫関連タンパク質の変異によって起こるという論文が2007年の11月30日号のScienceに載っていて、ゼミで紹介したので覚えていました。
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 今回Scienceの表紙になった論文では、色の黒いハイイロオオカミや黒いコヨーテを調べてみたところ、イヌと同じ変異遺伝子を持っていることがわかったということが述べられています。

Molecular and Evolutionary History of Melanism in North American Gray Wolves

 イヌもコヨーテもオオカミも40000年くらい前はまだひとつの種でしたが、この毛の色を黒くする変異は、イヌとオオカミが分かれてからイヌという種の中で起こった変異であり、オオカミやコヨーテではその変異は発生しなかったと考えられるので、黒いオオカミやコヨーテが持っている変異遺伝子はイヌとの交雑によって起こったと結論されています。

 オオカミの一部が家畜化されることによってイヌに進化したのは15000年から40000年くらい前ということになっており、黒いイヌとオオカミやコヨーテの交雑が起こったのは、その後14000年くらい前から、ひょっとすると500年前くらい前(かなり大ざっぱですが)かもしれないと書いてありました。

 なんか、このニュースはしばらく前に見たことがあるような気がして検索してみたら、National Geographic News の2月5日付けの記事がありました。

Wolf-Dog Mating Led to Darker Wolves

 日本語の翻訳もこちらにあります。

黒いオオカミはイヌとの交雑で誕生か?

 最近は、「遺伝子汚染」とかいう恐ろしげな言葉で野生生物の遺伝子の「純粋性」を守ろうとかいう動きもあるようですが、こんな論文を読むと交雑するのは生物側の勝手じゃないのだろうかということも感じます。
Commented by g-hop at 2009-03-10 19:02
>最近は、「遺伝子汚染」とかいう恐ろしげな言葉で野生生物の遺伝子の「純粋性」を守ろうとかいう動きもあるようですが、こんな論文を読むと交雑するのは生物側の勝手じゃないのだろうかということも感じます。

例えば、稀な渡り鳥が自力で飛んできて交雑するのは構わないと思うのですが、近年問題となっているのは人為的に運ばれてきた移入種との交雑の話です。「生物側の勝手」というわけにはいかないと思います。

それは「人間の勝手」と呼ぶ方が相応しいでしょうね。温暖化によって「自然に」分布を広げた、といった例では問題は連続的で、境界が曖昧になることは承知していますが。
Commented by stochinai at 2009-03-10 19:33
 1万年くらい前、まだヒトが文明と呼べるほどの道具を持っていなかったころは、家畜としてのイヌもほとんどオオカミと変わらない状況にあったでしょうから、イヌとオオカミが「勝手に」交雑をすることもあったでしょうね。その頃だと「人為的な移動」といっても、ヒトの移動速度は野生動物よりも遅かったかもしれません。こういう歴史的なことも考え出すと、どこからが「人為的」なのかという線を引くのがとても難しいと思いました。

 だからといって、環境に対する影響を無視した「人間の勝手」な行為もすべてOKだなとという乱暴な意見に荷担する気が毛頭ないことは言うまでもありませんが。
by stochinai | 2009-03-06 19:46 | 生物学 | Comments(2)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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