2009年 03月 07日
万能薬ウコンの謎が解けた
カレーに黄色い色をつけるスパイスとして有名なウコン(ターメリック)の主成分は、ウコンの学名Curcuma longaからクルクミン (curcumin) と名付けられたポリフェノールで、こんな構造をしています。

ウコンは、お酒を飲む前に飲むと劇的な二日酔い防止効果があるというなかば伝説的な話は有名ですが、その他にもたくさんの薬理作用を持っていることが知られており、Wikipediaによると「抗腫瘍作用や抗酸化作用、抗アミロイド作用、抗炎症作用」があるそうです。つまり、がんにも老化にも傷などにも効く万能薬というわけです。
一方、あまりにもいろいろなことに効くと言われているので、その効果がいったいどういう科学的基礎に基づくのか不審に思われ、疑いの目を持たれていることもあるようで、私もどちらかというと「そんなになんにでも効く薬があるのか」という感想を持っていたひとりです。
ところが、3月3日に出た J. Am. Chem. Soc. の論文では、クルクミンが細胞膜の構造を変えるという結果が示されており、これならば今までに示されていたたくさんの薬理作用を一気に説明できるかもしれないという説得力を持つものでした。
Determining the Effects of Lipophilic Drugs on Membrane Structure by Solid-State NMR Spectroscopy: The Case of the Antioxidant Curcumin
例によってScienceDailyの解説記事からたどりつきました。
Turmeric Ingredient Makes Membranes Behave For Better Health
化学に弱い私ですので、うまく説明できるかどうかわかりませんが、細胞膜のことをご存じの方ならば、この図を見ただけでパッと納得できるかもしれません。緑で描かれているのがリン脂質で、オレンジ色がクルクミンです。

これを見て、クルクミンがコレステロールのような働きをしているのではないかと思った人もいらっしゃるかもしれません。
論文で示された実験では、さまざまな条件でクルクミンを添加した細胞膜の性質をSolid-State NMR(固体核磁気共鳴)という方法で解析ているようです。残念ながら私は、NMRに関してはまったく説明することはできませんが、それを使うと分子の状態が推測できるということくらいはわかります。
それでわかったことは下の図に示されたように、細胞膜にクルクミンが含まれない時、ちょっと含まれる時、比較的多く含まれる時で、細胞膜の厚さ(および流動性などの性質)が変わるということのようです。

このことから、細胞膜にクルクミンが含まれることで、その濃度によっては細胞がなにかを分泌したり取り込んだり、分裂したり融合したりすることに大きな影響を与えることが推測されます。
また細胞膜には、細胞が持つたくさんの機能を担うタンパク質などが埋め込まれていますので、細胞膜の物理的な性質が変わるだけでも、細胞膜の中のそうした分子の働きに大きな影響が出ます。こういうことが明らかになってくるとなぜクルクミン(ウコン)が万能薬としてさまざまな働きを発揮することができるのかということが不思議ではなくなってきます。
今回得られた知見をもとに、今後はクルクミンがどのようにさまざまな薬理作用を示すのかが、続々と明らかになってくることが期待されます。
すごい発見だと思います。

一方、あまりにもいろいろなことに効くと言われているので、その効果がいったいどういう科学的基礎に基づくのか不審に思われ、疑いの目を持たれていることもあるようで、私もどちらかというと「そんなになんにでも効く薬があるのか」という感想を持っていたひとりです。
ところが、3月3日に出た J. Am. Chem. Soc. の論文では、クルクミンが細胞膜の構造を変えるという結果が示されており、これならば今までに示されていたたくさんの薬理作用を一気に説明できるかもしれないという説得力を持つものでした。
Determining the Effects of Lipophilic Drugs on Membrane Structure by Solid-State NMR Spectroscopy: The Case of the Antioxidant Curcumin
例によってScienceDailyの解説記事からたどりつきました。
Turmeric Ingredient Makes Membranes Behave For Better Health
化学に弱い私ですので、うまく説明できるかどうかわかりませんが、細胞膜のことをご存じの方ならば、この図を見ただけでパッと納得できるかもしれません。緑で描かれているのがリン脂質で、オレンジ色がクルクミンです。

論文で示された実験では、さまざまな条件でクルクミンを添加した細胞膜の性質をSolid-State NMR(固体核磁気共鳴)という方法で解析ているようです。残念ながら私は、NMRに関してはまったく説明することはできませんが、それを使うと分子の状態が推測できるということくらいはわかります。
それでわかったことは下の図に示されたように、細胞膜にクルクミンが含まれない時、ちょっと含まれる時、比較的多く含まれる時で、細胞膜の厚さ(および流動性などの性質)が変わるということのようです。

また細胞膜には、細胞が持つたくさんの機能を担うタンパク質などが埋め込まれていますので、細胞膜の物理的な性質が変わるだけでも、細胞膜の中のそうした分子の働きに大きな影響が出ます。こういうことが明らかになってくるとなぜクルクミン(ウコン)が万能薬としてさまざまな働きを発揮することができるのかということが不思議ではなくなってきます。
今回得られた知見をもとに、今後はクルクミンがどのようにさまざまな薬理作用を示すのかが、続々と明らかになってくることが期待されます。
すごい発見だと思います。
>Solid-State NMR(固体核磁気共鳴)
そんなものが出ているのですね。化学方面で何か同定しようと思ったらX線を取るのがひとつの選択肢であった頃を考えると、隔世の感です。
そんなものが出ているのですね。化学方面で何か同定しようと思ったらX線を取るのがひとつの選択肢であった頃を考えると、隔世の感です。
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クルクミンがその様に作用するとは…これはすごい発見ですね。
今後、クルクミンに限らず生体膜における物理的変化が及ぼす影響というものが解明されていけば新薬の開発にもつながることを期待しています。
今後、クルクミンに限らず生体膜における物理的変化が及ぼす影響というものが解明されていけば新薬の開発にもつながることを期待しています。
はじめまして。クスリウコンの粉末を飲んでいます。2週間ほどになりますが、継続して飲んでいる人のデータ等を見れるサイトはありますか?
申し訳ありません。私は知りません。
by stochinai
| 2009-03-07 16:48
| 医療・健康
|
Comments(4)