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キウイフルーツの性染色体

 植物は雌雄同体のものが多いですし、さらには1つの花の中に雌しべと雄しべという雌雄の器官があるものも珍しくありませんが、もちろん雌雄異株のものもあります。動物は逆に雌雄異体のものが多いですし、雌雄を決める遺伝子もいろいろとわかってきていますが、それがわかるはるかに前から、染色体の組み合わせでオスメスが決まるという性染色体というものの存在が知られていました。ヒトでは、女性がXX型ホモの性染色体を持ち、男性がXY型ヘテロを持っていますが、鳥類や爬虫類の多くはオスがホモでメスがヘテロの性染色体を持っているZW型です。もちろん、ミミズやカタツムリのような雌雄同体のものもいますが、圧倒的に雌雄異体が多いのが動物の特徴のひとつです。

 植物に雌雄異株がそれほど多くないとはいっても、我々になじみの深いイチョウが雌雄異株なのは有名ですし、最近では良く食卓に上がるようになったキウイフルーツが雌雄異株です。
キウイフルーツの性染色体_c0025115_20342796.jpg
 いつものようにウィキペディアからお借りした写真ですが、キウイフルーツの写真というとどうしても果実の断面を示したものになってしまいますね。

 で、このキウイフルーツの性染色体が確定されたという論文がもうすぐ出るそうです。
Lena G Fraser, Gianna K Tsang, Paul M Datson, H NIHAL De Silva, Catherine F Harvey, Geoffrey P Gill, Ross N Crowhurst and Mark A McNeilage.
A gene-rich linkage map in the dioecious species Actinidia chinensis (kiwifruit) reveals putative X/Y sex-determining chromosomes. BMC Genomics, (in press)
 BMC Genomics はオープンアクセスジャーナルですから、どなたでも無料で全文にアクセスできますので、興味のある方はぜひともチェックしてください。

 キウイフルーツの染色体は1ミクロン以下という小さいもので、雄でも雌でも29対58本の染色体があるため、交配実験でXY型(雌がXX,雄がXY)だろうと推測されていたものの、染色体の観察からだけでは性染色体というものが今ひとつはっきりしなかったのだそうですが、昨年の夏頃に遺伝子(ESTs)がある程度解析されたという報告もあったので、ここに至るのは時間の問題だったと思います。

 さまざまな染色体を特徴づけるマイクロサテライトという塩基配列をもとに、各々の染色体の特徴(遺伝子組成図)を明らかにし、性染色体と思われるものを追いつめたのでした。その結果、2本ずつある染色体の中に花粉形成の時にしっかりとペアにならないものがあり、そのうまくペアにならない染色体の領域に雄特有の遺伝子配列があることを見つけたという論文のようです。

 そこには、雌しべの形成を抑制する遺伝子と花粉形成を促進する遺伝子があったということですから、その領域がまさに雄株を作らせるために働いていると考えられますので、それを持った染色体がY染色体ということが結論できたというわけでしょう。
キウイフルーツの性染色体_c0025115_2052504.jpg
 雌しべのない雄花(左)と花粉のできていなさそうな雌花(雌花)がならんだこの写真をみると、確かにその2つの遺伝子が働いていることがわかります。(雌雄異株なのに、こんなに近く雄花と雌花があるのは一瞬不思議に思われますが、なんのことはない、別の株のツルが絡み合っているだけでしょう。)

 この先、長い時間が経てば、ヒトの性染色体と同じように、X染色体とY染色体はまったく異なるものへと進化する可能性もあり、まさに性染色体が進化しつつあるところを見ているといっても良いのかもしれません。

 ヒトなどの動物のオスメスを決める遺伝子と、植物の雄株雌株を決める遺伝子は随分と違うものだと思いますし、現在ではそのほとんどが雌雄同株の植物とそのほとんどが雌雄異体の動物を比べると、性染色体はその共通祖先が持っていたものではなく、動物と植物が分かれたずっと後になってから別々に現れたものだと思われます。それにもかかわらず、性染色体という共通の構造が出現したのは収斂進化(収束進化)と言えるでしょう。

 雌雄異体の状態が長く続くと性染色体が進化してくる必然があったということだとすると、性染色体がどうしてあるのかを考える時に、大きなヒントを与えてくれるものだと思います。

 自然はいつも偉大な先生です。
by stochinai | 2009-03-10 21:07 | 生物学 | Comments(0)

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