5号館を出て

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遺伝子をちょっと調べれば目の色がわかる

 すでにぜのぱすさんが解説し、その危険性についても言及されていますので、特に私が付け加えるべきこともないのですが、3月9日のnaturenews に遺伝子を調べるだけで、目(虹彩)の色をほぼ間違いなく予言できるという方法が紹介されています。写真はウィキペディアから引用した「青い目」の虹彩の拡大図です。
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 皮膚や髪そして虹彩の色を決めるのはメラニン(黒色のユーメラニンと黄色のフェオメラニン)の量と分布様式なのですが、それを支配するということがわかっている8つの遺伝子の中の特定の37部位を調べ、その組み合わせパターンを解析することによって、ロッテルダムに住むオランダ系のヨーロッパ人ならば、目の色が青か茶色かを90%以上の正解率で言い当てることができるということです。他の色だと正解率は70%くらいになるというので、日本を始めヨーロッパ以外の国では使えないかもしれません。(下の図で示されたAUCという値が正解率と考えてよいように思います。)

 元論文は、Current Biology Volume 19, Issue 5, R192-R193, 10 March 2009 です。

Eye color and the prediction of complex phenotypes from genotypes
遺伝子をちょっと調べれば目の色がわかる_c0025115_19533421.jpg
 この手法を使うと、犯罪現場に残された犯人の遺留遺伝子(髪の毛、フケ、唾液、精液)などから予め犯人の目の色が推定できるので、犯罪捜査に威力を発揮することが期待されているのだそうですが、ほとんどのヒトの目の色が黒か茶色の日本ではいまひとつピンとこない話です。

 それよりも、遺伝子がちょっとだけ手にはいると、その持ち主の髪や目の色がわかるということになると、受精卵診断に使われて、金髪で目の青い女の子だけを妊娠したいという希望を持った「親」の希望にどのように対処することになるのか予測可能な気がして、なんとも不安な気持ちになります。これが、ぜのぱすさんが言及している「デザイナーベビー」です。

 生まれて見るまで男女がわからなかった時代は新生児の死亡率が高かったこともあり、「生まれて、無事育ってさえくれれば、それ以上のことは何も望まない」という感じだったのですが、だんだんとそうでもなくなるのかもしれませんね。
Commented by ぜのぱす at 2009-03-11 22:20 x
ははは、私の記事の方は、naturenewsの内容をそのままなぞっただけで、stochinaiさんの解説記事の方が、余っ程、的を得た要約になっていて、わざわざ、訪れて呉れる方々が居た場合に申し訳ないです(笑)。

これって、odd eyeのヒトのSNPsはどうなっているんだろう、と生物学的な疑問があるんですが’・・・・。
Commented by stochinai at 2009-03-11 23:27
 おそらく、目だけではなく色はかなりepigeneticに決まる部分が大きいのだと思います。というわけで、落ちはやっぱり「遺伝子だけではすべてが決まらない」になるんでしょうね。チャンチャン。
by stochinai | 2009-03-11 20:01 | 生物学 | Comments(2)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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