5号館を出て

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ドイツで撃ち落とされたカモがH5N1ウイルス陽性だった

 インフルエンザにかかったというだけで、それがヒトへの感染拡大が危惧されているH5N1でなくとも、何十万羽も処分されてしまうほどの反応をしてしまうのが日本という国ですが、ドイツではたまたま撃ち落とされたカモを調べてみたらH5N1ウイルスに陽性だったという、ある意味なんとも「のどかな」ニュースが送られてきました。

 情報源は、新型インフルエンザ・ウォッチング日記さんのところです。

撃ち落としてみたらH5N1! (鳥インフルエンザ ドイツ)

 元ネタはmsnbcなのですが、あまり詳しくありません。

Deadly bird flu strain found in Germany
EU executive says the infected wild duck is the first case of disease in ’09


 高病原性のトリインフルエンザがドイツで発見された。
 EU幹部は野生のカモの感染は2009年になって初めての報告だと語っている。

 全文引用しても良いくらいの短さですが、重要な情報はこれだけです。
BRUSSELS - The European Commission says a wild duck shot in the German state of Bavaria has tested positive for the lethal H5N1 strain of the bird flu virus.
 「ブラッセル発 EUの委員会がドイツのババリア州で撃ち落とされた野生のカモが致死性のH5N1型のトリインフルエンザ・ウイルスを持っていたと発表した」ということです。これはEU内の27のブロック(国)で、今年最初に見つかった例になり、2008年の2月にイギリスで11羽のトリからウイルスが見つかって以来のできごとになります。

 ドイツの関係者はウイルスの拡散が起こっているかどうかを確認するための調査を開始したということですが、その後の発表がないところを見るとどんどん見つかるというような状況ではないのかもしれません。

 ドイツには食用として家禽化されたカモであるアヒルの養殖が行われており、2年前にはそこで死んだアヒルからH5N1ウイルスが検出されて大騒ぎになったこともありますが、現在のところ発症はもちろんウイルスが検出されたという話も聞きません。しかし、たまたま撃ち落とされたたった1羽のカモがウイルスを持っていたということは、ウイルスは意外と広範に拡がっているのかもしれません。それにもかかわらず、発症の報告がないのはトリたちはすでにH5N1に対して免疫状態を獲得しているという可能性があるのかもしれません。

 もし、そうならばたとえウイルスがいても感染が拡大することはないかもしれません。野生のトリは高病原性のウイルスに感染した場合、死んでしまうか打ち勝って免疫になるかという結果になります。免疫になっていれば、ウイルスはその身体の中で増殖することができませんので、感染はそれほど拡がらないはずです。

 ヨーロッパでの野生のトリの間では、すでに免疫状態が広まっているのだとしたら、喜ぶべきことです。

 いたずらに病気の出現を恐れるばかりではなく、健康なトリを調べることも大事だという教訓になったと思います。
Commented by mittyu at 2009-03-12 23:27 x
カモはインフルエンザウイルスの自然宿主ですから、普通にウイルスを保有しています。カモの側の要因で発症しません。全身でウイルスが増えていても無症状だったりします。この状態では、中和抗体などが生成されるような強い細胞性免疫の活性化も起こっていないでしょう。
しかし、今回分離されたウイルスを、ニワトリなどの家禽に感染させると強い病原性を発揮する可能性があります。家禽間で数回継代されることでも、強い病原性を獲得する事例が確認されています。野鳥は確率の問題でH5N1含めたインフルエンザウイルスを持っていますので、野鳥と生きている家禽の接触をできるだけ避けることと、家禽で摘発されたらただちに淘汰することが防疫法として一般的な考え方です。
Commented by mittyu at 2009-03-12 23:30 x
長くなって申し訳ありませんが、もう一点。
 
野鳥にも強い病原性を引き起こすようなウイルスは、宿主を殺して感染環をストップさせるか、又はstochinaiさんのおっしゃる通り宿主の中和抗体の生成(免疫の賦活化)によって淘汰されますから、あまり広がらないだろうと考えられています。

ところが、免疫を中程度活性化させるタイプだったら、ウイルスを殺しもせず、宿主は生きるため、常にウイルスを排出し続けるキャリアになる可能性もあります。このあたりのウイルスと宿主の綱引きはかなり微妙なため、一概に「宿主が死んでなかったらウイルスは増えない」とは言えないようですね。
Commented by stochinai at 2009-03-12 23:42
 なるほどと思えました。詳しい説明をありがとうございました。

 一方で、そのような「正しい」知識が一般の方々にも共有されるべきだと感じました。報道だけ見ても、決してこのような知識を得ることはできません。

 マスコミだけにまかせておかず、あるいはいたずらに恐怖をあおるようなものだけではない「科学者」からのメッセージを期待しています。もちろん、私もできる限りのことはしたいと思っています。
by stochinai | 2009-03-12 20:10 | 医療・健康 | Comments(3)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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