5号館を出て

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ありそうもない化石が掘り出された

 動物の化石というと、恐竜を筆頭に脊椎動物の骨の化石やサンゴの骨格や貝殻などのようにカルシウムなどを含む硬い組織だけが(もちろん他の鉱物などに置換されることも多いのですが)保存されるのが普通です。しかしながら、そうした硬い組織を含まないものでも「幸運」が重なると何千万年、何億年も残ることがあります。タコの化石はそうしたものの中でも特に保存されにくいものと考えられており、中生代以前のタコの化石は現在に至るまでたった1例しか報告がありません。しかも、それは100年以上前の1896年のものです。

 古生物学の専門誌 Palaeontology の最新号に載った論文には、そんな珍しいはずのタコの化石がレバノンの石灰石の中から一気に5匹分も発見され、そのうち3種が新種として報告されています。9500万年前の地層に埋まっていたこれらのタコは、現存のタコとほとんど同じ吸盤のある8本足という姿形をしており、墨袋や袋状の外套膜の内側にあるエラまでもはっきりとわかるような素晴らしい保存状態です。
ありそうもない化石が掘り出された_c0025115_20594228.jpg
 さらにすばらしいことに、この論文はオープンアクセスになっており、世界中の誰でもが自由に閲覧することができます。

NEW OCTOPODS (CEPHALOPODA: COLEOIDEA) FROM THE LATE CRETACEOUS (UPPER CENOMANIAN) OF HÂKEL AND HÂDJOULA, LEBANON

 この発見により、タコが現在の形に進化したのが、想像されていたよりもずっと古いことや、原始的なタコはイカのように体側にヒレを持っていたのではないかと考えられていたことが間違いかもしれないことなど、今までのタコの進化の常識が続々と覆されているようです。

 最近ではレバノンがニュースになるのは、イスラエルとの戦争のことばかりですが、こういう平和的なニュースが送られてくるのはほんとうに喜ばしいことです。

 戦争の爆撃で、こうした地球進化の遺産が研究されることなく破壊されている可能性もあるのではないかと考えると、戦争というのは取り返しのつかない愚かな行為であることが再認識されます。

 戦争よりはタコの化石ですね。

 紹介記事はこちらの2つです。違うソースですが、文面がまったく同じなのは、どこかから記事を購入しているということなのでしょう。

Cretaceous Octopus With Ink And Suckers -- The World's Least Likely Fossils? ScienceDaily (Mar. 17, 2009)

Cretaceous octopus with ink and suckers -- the world's least likely fossils? March 17th, 2009
Commented by ポリ at 2009-03-19 06:28 x
猫サイズ肉食恐竜にせよ、岩手のベルム紀大量絶滅の証拠にせよ、このタコにせよ、地層・化石の話はロマンがあって楽しいですね。8本足や墨袋まで見えるとは、すごい。
by stochinai | 2009-03-18 21:11 | 生物学 | Comments(1)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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