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お酒を飲んで赤くなる人は週に缶ビール11本までで我慢

 週に缶ビール11本も飲む「お酒に弱いヒト」はあまり多くないと思いますが、統計的にはそれ以上飲むと食道がんの発生率が急増するというデータがあります。この話は、日本を含む東洋人に関係の深いことなので、日本で研究が進んでいることもあり、日本では結構有名な話です。

 2003年に Cancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention という学術雑誌に日本人だけが著者の論文が掲載されています。(Vol. 12, 1227-1233, November 2003
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 非常に衝撃的な内容で、クローズアップ現代をはじめテレビなどでも取り上げられたので、記憶にある方もいらっしゃるかもしれません。ところが、この論文をごらんになればわかりますが、写真や図が一枚もなくデータのすべてが数字の並んだ表だけで示されています。

 「内容が重要なのだからそれでいいじゃないか」というご意見もあろうかと思いますが、この論文はもっと広く読まれるべき内容だという判断からか、データはほとんど同じものを使っているのですが最新のPlosMedicineに主に医療者向けの解説記事(Research in Translation)として再び取り上げられました。解説記事ですから、いわゆる学術論文よりははるかに読みやすく、医師だけではなく一般の読者向けにも適したリーダーフレンドリーなものに仕上がっています。フリージャーナルですので、是非とも全文を入手してご覧下さい。
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 ヒトがアルコールを飲むと、アルコール脱水素酵素(ADH)の働きでアセトアルデヒドになります。このアセトアルデヒドが悪酔いや二日酔いの原因になるのですが、発がん性があることもわかってきました。体内にはアセトアルデヒドを分解するアセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH2)があり、酵素がきちんと働けばアセトアルデヒドは速やかに無害な酢酸へと分解されるのですが、東洋人では2つあるこの酵素の遺伝子のひとつまたはふたつが変異型になって働きを失っているヒトがかなりたくさんいるのです。両方の遺伝子が変異型の場合には、いわゆるお酒を飲めないヒトということであまり問題にならないのですが、片方の遺伝子が変異型の場合には約1/16と言えども代謝能力があるので、お酒を飲めるヒトもあるいは好きなヒトもたくさんいます。

 しかし、変異型のALDH2遺伝子を持っているヒトの場合は、お酒を飲むとすぐに「赤くなる」という特徴があります。こんな感じですね。
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 こういうヒトは遺伝子を調べるまでもなく、少なくとも片方の遺伝子に変異が起こっていることが90%くらいの確率で言えるのだそうです。もちろん、最近大学の新入生に対して行われるようになっているアルコールパッチテストでも同様に判定できます。

 顔が赤くなるくらいならご愛敬なのですが、アセトアルデヒドは遺伝子DNAを構成するデオキシグアノシンと反応して下図のように変化させてしまうことが発がんの原因になると疑われています。
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 というわけで、変異したALDH2遺伝子を持つヒト(つまり赤くなるヒト)はアセトアルデヒドには特に注意しなければならないということになりますが、お酒の中のアルコールがどのくらい発がんと関係しているかを示した下の図が衝撃的です。
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 お酒をほとんど飲まないヒトの食道がんの発生率を1として、あまり飲まないヒト、適度に飲むヒト、たくさん飲むヒトと分けてグラフを描くとこうなります。青がお酒を飲んでも赤くならないヒト、赤がお酒を飲むと赤くなるヒトです。いずれもアルコールの消費量に応じて発がん率が高まるのですが、赤くならないヒトに比べ、赤くなるヒトが大酒を飲むとなんと7-8倍くらいがんになりやすくなるということを示しています。

 では、安全そうに見える「あまり飲まない」という量はどのくらいなのでしょうか。図の説明に描いてあるのですが、1ユニットをアルコール22グラムとすると、あまり飲まないヒトは1週間に1から8.9ユニットまでということになっています。つまりアルコールを5%含むビールならば、1週間に3900ml以下ということになります。つまり、それが350mlの缶ビール11本というわけです。

 毎週缶ビール11本というと、日本人としては「かなり飲む」っていう感じかもしれませんね。ちなみに、中くらいは9から17.9ユニット、大酒のみは18ユニット以上です。18ユニットというと缶ビールならば毎週22本以上ということになります。

 グラフをよく見て、赤くならないヒトもアルコール摂取量に応じて食道がんの発生率が上がっていることに注意しましょう。またタバコや濃いアルコール摂取ががんの発生率を上げることや、果物や緑黄色野菜が下げることもあるようですから、この話だけで振り回されないようにもしたいものです。

 先日書いたように、適度のアルコールは脳に快感をもたらす効果もありますので、功罪を理解した上で楽しもうというメッセージとして受け止めたいと思います。

(論文の中には、食道がんのかたまりを生で撮した、ちょっと衝撃的な写真もありますので、ご注意ください。)
Commented by ゆき子 at 2012-10-14 08:31 x
麻薬よりもアルコールで短命が正解ですね
覚醒剤は頻繁に出来ないから
アルコールを18歳以下にも飲ませましょう
by stochinai | 2009-03-24 22:02 | 医療・健康 | Comments(1)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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