5号館を出て

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なんだったのかアジサイ中毒

 有用情報が満載なので、いつも勉強させていただいている「医学処 -医学の総合案内所-」さんのところで、不思議な情報を見つけました。

 アジサイの葉が原因とされた食中毒事件、原因物質検出せず。

 昨年、立て続けにアジサイの葉を食べたことによる中毒事件が起こり、私もびっくりして2回とも取り上げました。

 アジサイによる食中毒と遺伝子組み換え根粒菌
 信じられないニュース2題

 ところが、10日ほど前の読売新聞(読売オンライン)によると、件のアジサイの葉から中毒の原因物質が検出できなかったということなのです。

 アジサイの葉は毒?原因物質検出できず…昨年2件の食中毒
 当初は青酸系の成分が原因とされていたが、1件では検出されず、もう1件も微量で、「シロ」の可能性が高くなった。アジサイが食卓に上ることは昔からあり、市場にも流通しているのに、過去に中毒の報告が全くなかったのも不可解で、「別の有毒成分があるのでは」「アジサイの種類によって違う」という見方も出ている。アジサイは、はたして有毒なのか。各地の研究者や行政担当者は首をひねりながら、謎を追いかけている。
 実は、このことは昨年の夏の時点ですでにわかっていたことのようで、厚生労働省では先に出した「アジサイの喫食による青酸食中毒について」 (平成 20 年7月1日付け食安監発第 0701001 号)を廃止して、8月18日に新たに「アジサイの喫食による食中毒について」(食安監発第 0818006号)を出しています。

 その中でも基本的には、アジサイの葉や花が食中毒の原因になる疑いが強いので、「食品又は料理の飾り用としての販売をしない」ようにと呼びかけていますが、「アジサイに青酸配糖体が含有されているとの知見」については未確認であると訂正しています。

 読売の記事の中でも、その点に言及されています。
 ところが、客が食べた店先のアジサイを県で精密に調べても青酸配糖体は検出されず、農薬など他の毒性物質も出なかったという。

 一方、大阪市立環境科学研究所は、葉1グラムあたり29マイクロ・グラムの青酸配糖体を検出したものの、「微量だから1~2枚で中毒は起きないはず」と困惑する。
 現時点では、独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所 安全性研究チームが作成している、「写真で見る家畜の有毒植物と中毒」というページにあるアジサイの項がもっとも信頼できそうです。
有毒成分

有毒植物に関する単行書等にアジサイの葉は青酸配糖体を含むという記載があったため,本ウェブサイトでもそのように記載してきました.また,厚生労働省の課長通知(平成20年7月1日付け)でもそのように記載されていました.しかし,下記のつくば市での中毒を機に,「アジサイの葉に含まれる青酸配糖体」に関する原著論文を検索しましたが,現時点では見つかっていません.

下記の文献(1)および茨城県つくば市でのヒトの食中毒事例のように,アジサイが中毒を起こすことは確かだと思いますが,その原因物質は青酸配糖体ではないようです.

厚生労働省の課長通知も,青酸配糖体が含まれているという事実が確認できないことから,8月18日付けで修正版が出ています.
 というわけで、アジサイの葉を食べることで中毒が起こるのかどうかというところから疑問視されているようなのですが、昨年の6月13日と6月26日という極めて近接した時期に、茨城県つくば市と大阪市北区という離れた土地で摘まれたアジサイの葉を食べたことで類似の中毒症状が引き起こされたということを矛盾なく説明することのできる原因が宙に浮いてしまったことだけは間違いありません。

 こういう謎をどこかのポスドクが見事に解き明かしてくれると、いろんな意味でうれしいんですけどね。
Commented by nq at 2009-03-28 10:07 x
そもそも、アジサイが原因だったのでしょうか? 2件目は、一件目がおおきく報道されたための予断に引きずられたにすぎないのかもしれません。stochinaiさんの「そういう犯罪はともかく、たとえ飾りや器の代わりとしても、料理屋さんで使うことだけは絶対にやめてもらいたいものです。
」というコメントには当時に大きな違和感を感じたことを覚えています。周知でない原因で食中毒を起こしてしまったものを犯罪とならべて論評していたことを変だと思ったわけですが、そもそも報道の根拠も怪しくなったわけです。不祥事(もどき)が一旦報じられると、その尻馬に乗って、水に落ちた犬は叩けとばかりに騒ぎ立てる日本のメディアと同体質のことはしてほしくないです。
 また、このようなあやふやな報道の「謎」は、年限内に成果を出すことをもとめられるポスドクの研究テーマとしてふさわしいのでしょうか。日常的な食の安全に関わる研究は、試験設備をもつ公的研究機関の業務ではありませんか?
Commented by stochinai at 2009-03-28 10:39
 「尻馬に乗って、水に落ちた犬は叩けとばかりに騒ぎ立てる」姿勢を批判しているつもりではあるのですが、全然できていないことに冷や汗をかきながら、大いに反省しております。
 ポスドクが謎を解いてくれるというのは、別に研究テーマにすることを考えていたわけではなく、その周辺の研究をしているポスドクの中には、この話を聞いて(多くの人が見逃している点に)ピンとくるものがあって、見事な仮説を立ててくれるというようなことを期待しています。検証は試験機関がやってくれれば良いと思っています。楽しい想像だとは思いませんか?
by stochinai | 2009-03-27 21:53 | 医療・健康 | Comments(2)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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