5号館を出て

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浮き草が地球を救うか

 数日前のScienceDaily (Apr. 7, 2009) のScience Newsに浮き草が「使える」という話題が載っていました。

Tiny Super-plant Can Clean Up Animal Waste And Be Used For Ethanol Production

 汚水をキレイし、エタノール燃料の材料になるという、このスーパープラントはduckweed(カモの草)と呼ばれているようで、カモなどの水鳥が好んで食べるのでしょう。写真を見たところそこいらの池や水田にふつうに見られるいわゆるウキクサ(アオウキクサ?)のように見えます。
浮き草が地球を救うか_c0025115_18423191.jpg
 確かに、夏などはあっという間に水が見えなくなるくらい池の表面を覆い尽くすほどのスピードで増える連中です。それが、養豚場から出る廃液処理に使えて、さらにアルコールのもとになるデンプンの合成量も多いのだそうです。

 一時期、バイオエタノールの原料として食糧問題を引き起こしていたトウモロコシよりも、このウキクサは単位面積あたり5倍から6倍ものデンプンの収量があるのだそうで、カモにはかわいそうですが、たしかにアルコールを作るにはヒトを飢えさせる元凶になるおそれのあるトウモロコシよりははるかにすぐれていると思われます。しかも、汚水処理もやってくれるので、まさに一石二鳥("We can kill two birds – biofuel production and wastewater treatment – with one stone – duckweed")です。

 日本でも、ウキクサを含めホテイアオイやウォーターレタスなどと呼ばれる水上にプカプカ浮いて殖える植物は、あちこちで厄介者扱いされてしばしばニュースにも取り上げられていますが、それを回収してバイオエタノールが作れるのであれば、こちらも一石二鳥になりそうです。

 問題は、これらの水をたっぷり含んだ植物からデンプンをとりだし、それをアルコール発酵させてエタノールを作るのにどのくらいの費用がかかるかということ(と、安定して供給されるかどうか)だと思いますが、そこらあたりに関しては、研究費をつぎ込む価値があるテーマになると思います。

 こういう純粋に応用的な研究はなかなか基礎研究者が自分の研究テーマとして研究費を申請するというモーティべーションが出にくそうなので、国や企業が率先してテーマを示して研究者を募ってはどうでしょう。

 こういうウキクサを育てるのには水が深い必要はなさそうですから、多層化したガラス張りの培養施設なんかを作ると、意外と省スペースの未来的ウキクサ農場工場というものができそうな気がするというのは素人の戯言でしょうか。
Commented by beachmollusc at 2009-04-11 19:33 x
たまたま先ほどまでわが家の裏に来ていたカルガモのペアをながめていました。

ニュース元の論文を見たらSpirodela polyrrhiza、ウキクサでした。わが居候のカモたちもこれをよく食べます。無性的に倍々ゲームで増えますので、成育適期には短期間で水面を覆ってしまいます。場所によっては稲作水田で一面に広がっています。

このニュースで紹介されたウキクサの利用については窒素吸収の方に重要な意味があるようです。畜産、特に養豚は汚水の発生量が半端ではありません(養豚場が流域にある河川はものすごく臭います)。畜産汚水処理でバイオマス資源を生産するシステムの技術開発には研究投資が必要です。現状は、たとえば工場式養鶏では鶏糞を焼却工場に運んで産業廃棄物として燃やします。畜産業が工業化されつつありますが、環境負荷を小さくする廃棄物処理技術開発が遅れているのです。このニュースの研究ではパイロット農場で実証試験中ですね。
Commented by beachmollusc at 2009-04-11 19:49 x
ウキクサと排水をキーワードにして論文検索したら、同じアイデアの研究がありました。これは講演要旨だけのようですが、世界各地、特に中国で同様な研究が進行中だろうと思います。

ミジンコウキクサによる排水処理 : デンプン生産システムの構築
川畑 祐介 , 池 道彦 , 藤田 正憲
日本水処理生物学会誌. 別巻 = Journal Japan Biological Society of Water and Waste 22, 111 ,20021015

Commented by stochinai at 2009-04-11 23:25
>世界各地、特に中国で同様な研究が進行中だろうと思います。

 役に立ちそうなら、遠慮せずに国際協力でもなんでもしながら、どんどんやって欲しいものですね。
Commented by 薬作り職人 at 2009-04-11 23:37 x
先日の報道ステーションでは、モからのcrude oil精製の話が取り上げられていました。取り上げられていた米国のベンチャー企業では、基本的な技術はほぼできあがっていて、あとはコストダウンという段階だそうです。
こちらは、排水処理というとらえかたよりも、積極的な資源としての活用を考えているようですね。
by stochinai | 2009-04-10 18:59 | 科学一般 | Comments(4)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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