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ヤドカリウミサソリ?

 5億年くらい前のカンブリア紀の海には、ウミサソリというサソリの化け物のような巨大な甲殻類鋏角類(エビ・カニの仲間)がいたのですが、今月出版された GEOLOGY という雑誌には、そのウミサソリのあるものがヤドカリのように巻き貝をかぶっていたのではないかという論文が載っています。

Hermit arthropods 500 million years ago?
Geology, April 2009, v. 37, no. 4, p. 295-298, doi:10.1130/G25181A.1


 ナショナルジオグラフィックに解説記事が載っていますが、ウミサソリというのはこんな生き物です。
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 First Tool Users Were Sea Scorpions?

 Geologyに載っている論文は、貝殻をかぶったウミサソリの化石が発見されたというものではなく、動物がはいずり回った痕跡を解析して「想像」したものです。つまり、「証拠」はこの写真だけです。
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 この跡を解析してみると、それがウミサソリが尻尾を巻き貝に突っ込んで歩き回っている様子がわかるのだそうです。

 さらに、その動物は現存のヤドカリのように貝殻の中にすっぽりと体を入れて住んでいるのではなく、尻尾だけを突っ込んで他の体は外に出ていたということなども、その引きずり痕跡から推測できるるようで、手を使った想像模型などもある、楽しい論文になっています。
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 ここからが、さらに想像がふくらむのですが、中に隠れるのではないとすると、ではこの貝殻はどういう役割をしていたのかというと、それはエラ呼吸していたウミサソリが陸に出てエラが乾くと呼吸ができなくなるので、エラを濡らしておくための水筒の役割を果たしていたのではないかというのです。

 そんなバカなという人もいるかもしれませんが、ここまで想像できるというのは、すばらしいと思えます。さすがに論文には書いてありませんが、ナショナルジオグラフィックのインタビューに答えて、著者は「我々が水に潜る時に空気を呼吸するためにアクアラングを使うように、ウミサソリは陸に上がっている時にエラ呼吸するために水の入った貝殻を、呼吸するためのエアロラングとして持って歩いてにしていたのだろう」と言っています。

 水筒を持ったウミサソリが、敵のいない陸上をはいずり回りながら、たっぷりとある餌をのんびり食べていた時についたのが、今回発見された痕跡だというのです。

 古生物学の研究者は想像力がないとつとまりそうもありませんね。
Commented by ぢゅにあ at 2009-04-15 01:19 x
全然関係ありませんが、上の夕焼け写真、ポプラの向こうの手稲山とそっくりの絵がU-Massアマースト校のクラーク広場にあったなあと思っていたら、論文を書いた先生は、お隣のアマースト大学の方のようですね。関係ないところで思考が繋がって不思議な気分です。
一見ダニのようなウミサソリの想像模型、間抜け具合が妙にいいですねえ。
Commented by beachmollusc at 2009-04-15 07:39 x
古生物学ではいろいろな空想ができて楽しいのですが、実証が難しいことが難点です。干潟が露出している間にシアノバクテリアのマットを食べていたという仮説のようですが、藻類のマットがあればその上を歩くウミサソリは乾燥問題に直面しないのではないか、と思います。干潮時に出なくても満潮の間に食べればよいはずですし。貝殻の種類は特定されたのか、記事には見当たらないようです。元論文を閲覧するのは有料なのでやっていません。

ハイハイドロクダムシという小さい甲殻類を現在手元で飼育中ですが、これは貝殻や砂粒などを自分の隠れ家になるように接着して組み立てています。巻貝の貝殻をそのまま使うヤドカリ方式から一歩進んだものです。画像は私のブログで紹介しました。
このドロクダムシの仲間は名前のように泥を塗り固めた海底に固着した管を作って、その中に棲む(群棲する)連中ですが、ハイハイは泥管ではなく移動できるヤドを運んで歩きまわります。本体を突くと中から飛び出して逃げますので、ヤドはいつでも新築可能だと思います。
by stochinai | 2009-04-14 20:20 | 生物学 | Comments(2)

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