2009年 05月 23日
アメリカで除草剤に耐性を獲得した雑草が増えている
昨日の朝日新聞朝刊の科学欄に出ていた記事です。
除草剤グリホサート効かぬ雑草 米で勢力を拡大中 (5月22日朝日朝刊13版)

Wikipediaによると、すでに特許は切れており、ラウンドアップの日本での商標権と生産・販売権は2002年に日本モンサントから日産化学工業へ譲渡されて販売されていますが、他にもたくさんのジェネリック薬品が出ています。
野外では細菌などによって速やかに分解されるため、ヒトや動物などへの安全性が高いことと、ほとんどすべての植物を枯らしてしまうことから、広く使われていますが、ラウンドアップ耐性になるタンパク質や、ラウンドアップ分解酵素の遺伝子を導入したダイズ、トウモロコシ、ナタネ、ワタとラウンドアップを同時に使うことで、農業における除草の手間がいらなくなるとして、爆発的にその使用が増えてきています。
除草剤などに対する耐性は、植物が進化することによって獲得されることもありますが、今回アメリカで増加している雑草のグリホサート耐性が、ひょっとするとラウンドアップ耐性にしようとして導入した遺伝子が、他の植物へと移動することによって生じたものである可能性も危惧されます。
もしも、そういうことだったら遺伝子組み換え作物の使い方を再検討しなければなりませんし、そうでなくとも除草剤グリホサートでは対処できない雑草が増加しているとすれば、他の除草のやり方を見つける必要があります。
抗生物質に耐性の細菌が進化してくることはいまや常識になっていますが、ウイルスは抗ウイルス剤に対して耐性を進化させますし、植物は除草剤に対する耐性を進化させます。害虫と呼ばれている昆虫なども殺虫剤に対する耐性を進化させてきます。
進化する生物に進化しない薬物で対応するということ自体に限界があることを自覚し、進化学的考察に基づく生態学的防除などを考えることが求められていると思います。
「ダーウィン医学」の次は、「ダーウィン農業」ですね。
除草剤グリホサート効かぬ雑草 米で勢力を拡大中 (5月22日朝日朝刊13版)
現地を調査した佐合隆一・茨城大教授(雑草学)によると、米国では9種のグリホサート抵抗性雑草が報告されている。とくにオオホナガアオゲイトウとヒメムカシヨモギが、広い面積で発生しているという。グリホサートは、アメリカのモンサント社が開発し、ラウンドアップという商品名で有名な除草剤です。有効成分はグリホサートイソプロピルアミン塩(イソプロピルアンモニウム N-(ホスホノメチル)グリシナート)だそうです。

野外では細菌などによって速やかに分解されるため、ヒトや動物などへの安全性が高いことと、ほとんどすべての植物を枯らしてしまうことから、広く使われていますが、ラウンドアップ耐性になるタンパク質や、ラウンドアップ分解酵素の遺伝子を導入したダイズ、トウモロコシ、ナタネ、ワタとラウンドアップを同時に使うことで、農業における除草の手間がいらなくなるとして、爆発的にその使用が増えてきています。
除草剤などに対する耐性は、植物が進化することによって獲得されることもありますが、今回アメリカで増加している雑草のグリホサート耐性が、ひょっとするとラウンドアップ耐性にしようとして導入した遺伝子が、他の植物へと移動することによって生じたものである可能性も危惧されます。
もしも、そういうことだったら遺伝子組み換え作物の使い方を再検討しなければなりませんし、そうでなくとも除草剤グリホサートでは対処できない雑草が増加しているとすれば、他の除草のやり方を見つける必要があります。
抗生物質に耐性の細菌が進化してくることはいまや常識になっていますが、ウイルスは抗ウイルス剤に対して耐性を進化させますし、植物は除草剤に対する耐性を進化させます。害虫と呼ばれている昆虫なども殺虫剤に対する耐性を進化させてきます。
進化する生物に進化しない薬物で対応するということ自体に限界があることを自覚し、進化学的考察に基づく生態学的防除などを考えることが求められていると思います。
「ダーウィン医学」の次は、「ダーウィン農業」ですね。

>除草剤などに対する耐性は、植物が進化することによって獲得されることもありますが、今回アメリカで増加している雑草のグリホサート耐性が、ひょっとするとラウンドアップ耐性にしようとして導入した遺伝子が、他の植物へと移動することによって生じたものである可能性も危惧されます。
植物が除草剤耐性を獲得するのは、進化の過程だと思いますが、「他の植物へ移動する」というのは、遺伝子の水平伝搬のことと思います。もしそうなら、影響は大きいかと思います。言及されるからには、それなりの根拠があると思われますので、根拠をお示し下さい。
植物が除草剤耐性を獲得するのは、進化の過程だと思いますが、「他の植物へ移動する」というのは、遺伝子の水平伝搬のことと思います。もしそうなら、影響は大きいかと思います。言及されるからには、それなりの根拠があると思われますので、根拠をお示し下さい。
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根拠はありません。危惧しているだけです。ただ、そうではないということを証明するのは遺伝子組み換え作物を使っている側の責任だとは思いますが。


他種の植物間で遺伝子がコンタミする可能性としては、薬剤耐性遺伝子が導入された植物の花粉が、近縁種と交雑することで起こることは容易に想像されますが、生殖的に隔離された(近縁ではない)全く異なる種に他種の性質が移動するのは、生物学的なメカニズムとしては、例えば、バクテリアを介して、遺伝子が移動する可能性が考えられます。実際、或る種のバクテリアから"バクテリアの遺伝子"が移動することを利用して、初期の トランスジェニック植物が造られた訳で、バクテリア→植物と云う遺伝子の流れは自然界に存在します。もし、逆に植物→バクテリアと云う遺伝子の移動例が見付かれば、理論上は植物A→バクテリア→植物Bと云う風に遺伝子が移動する可能性はあるでしょう。但し、現時点では、植物→バクテリアと云う移動例は確認されていないようです。当然乍ら、確認されていない=存在しない、ではないので、注意を怠らないのは当然でしょう。バクテリア以外にも、ウィルスを介して、遺伝子が移動する可能性もあるのかな?そちらは良く知りません(笑)。
あまりよくは理解していないのですが、Wikipediaのこの記述が気になっていたのです。以下、引用。
アグロバクテリウム・ツメファシエンス Agrobacterium tumefaciens CP4株のEPSPSはグリホサートで阻害されないため、このバクテリアのEPSPS遺伝子を利用して植物にグリホサート耐性能を付与することになった。そこで、問題になったことが植物のEPSPSはプラスチドに存在するが、バクテリアのものは細胞質に存在することである。そのため、A. tumefaciens CP4株由来のEPSPS遺伝子にプラスチドに移行させるための輸送ペプチド (transit peptide) 部分のDNAを融合させたものを植物に導入して、バクテリア由来のEPSPSをプラスチドに輸送させてラウンドアップに植物を耐性化させている。
アグロバクテリウム・ツメファシエンス Agrobacterium tumefaciens CP4株のEPSPSはグリホサートで阻害されないため、このバクテリアのEPSPS遺伝子を利用して植物にグリホサート耐性能を付与することになった。そこで、問題になったことが植物のEPSPSはプラスチドに存在するが、バクテリアのものは細胞質に存在することである。そのため、A. tumefaciens CP4株由来のEPSPS遺伝子にプラスチドに移行させるための輸送ペプチド (transit peptide) 部分のDNAを融合させたものを植物に導入して、バクテリア由来のEPSPSをプラスチドに輸送させてラウンドアップに植物を耐性化させている。

私の上述の『或る種のバクテリア』の一種は、正にAgrobacteriumですが、 Wikiの引用されている記述を見る限りは、植物に導入した遺伝子の由来がAgrobacterium由来だと云うことで、必ずしも形質転換にAgrobacteriumを利用した方法が取られたかどうかは、文脈からは分かりませんね。何れにしろ、花粉を介した異種間のハイブリッド形成が起こらない限り、或る植物からの遺伝子が他種の植物へ移る可能性を示唆する科学的証拠は、今のところ、ないんじゃないでしょうか。繰り返しですが、証拠がない=自然界で起きていない、と云うことではないので、今後もモニターを続ける必要があるのは当然でしょうね。

せのばすさんが仰るようなモニター継続と、AtoZさんが求める科学的(多分)根拠を示すことができるような「調査・研究」が、適切に行われることを期待します。
そして、適切な場で適切に、情報が伝えられる状況を願っています。
そして、適切な場で適切に、情報が伝えられる状況を願っています。

こんにちは。
あまり詳しくはない分野なので、詳細は理解できませんが。でも、もし現在の一般的な科学で根拠が示せない危惧ならば、その危険性を証明する責任はやはり危惧を述べる側にあると思うのですが。
(調査研究が必要なのには異論がありません)
あまり詳しくはない分野なので、詳細は理解できませんが。でも、もし現在の一般的な科学で根拠が示せない危惧ならば、その危険性を証明する責任はやはり危惧を述べる側にあると思うのですが。
(調査研究が必要なのには異論がありません)
話を混乱させてしまい、スミマセン。遺伝子組み換え作物から、「導入遺伝子の水平伝搬が起こらない」ということを証明することは、理論的に不可能ですので、それを証明せよと言ったのは明らかに筆がすべっていました。「ない」ということは科学的に証明できませんから。逆に、「危惧」に関してはたとえ1例でも実例を示せば事足りるので簡単です。
私が言いたかったのは、現在の一般的な科学で水平伝搬は起こりえないということを、素人の人々にわかるように「説明」するのは、新しい技術を使う側の責任ではないかということでした。
もちろん、利害関係のない第三者の科学技術批評家が行うのがベストでしょうが、この手の話は設備を持ったところで実験的研究をしない限り、いつまでも水掛け論が続いて不毛だと思います。
私が言いたかったのは、現在の一般的な科学で水平伝搬は起こりえないということを、素人の人々にわかるように「説明」するのは、新しい技術を使う側の責任ではないかということでした。
もちろん、利害関係のない第三者の科学技術批評家が行うのがベストでしょうが、この手の話は設備を持ったところで実験的研究をしない限り、いつまでも水掛け論が続いて不毛だと思います。

ラウンドアップはよく使用しますが、この除草剤は発売当初からスギナに対しては身体構造および生態の関係で効果が薄く、苦労しております。
耐性雑草の件ですが、細菌の耐性菌と同じように遺伝的多様性を持っている植物の中で、たまたま耐性を持っていた個体が選抜され、生き残った耐性雑草だけが繁茂している可能性もあると思います。
耐性雑草の件ですが、細菌の耐性菌と同じように遺伝的多様性を持っている植物の中で、たまたま耐性を持っていた個体が選抜され、生き残った耐性雑草だけが繁茂している可能性もあると思います。
この分野に全くの素人の機械系のエンジニアですが,グリホサートは,近所の水田のあぜで広く撒かれているので興味があります.また,私自身,庭先の土手ではびこるクズを抑えるために昨年から撒布方法を試行錯誤しています.昨年は芽生えの時期に根本に傷をつけて原液を注入しようとしましたが,うまく行かず,例年通り大繁茂.今年は希釈液を繁った葉に霧吹きでピンポイント撒布.今のところ効果があるようで,クズだけが枯れてきました.
アメリカ南部では日本から導入したクズが大繁茂し,今では駆除不可能,というよりもアメリカ南部を代表する植物にまでなったそうです.ラウンドアップがもっとクズに効けば,このようなことにならなかったでしょう.
モンサント社はラウンドアップを売るよりは,ラウンドアップ耐性の作物種子を売ることで利益を上げているはずですが,彼らにとっても耐性遺伝子は脅威になるのでしょうね.
とりとめのない話ですみません.
アメリカ南部では日本から導入したクズが大繁茂し,今では駆除不可能,というよりもアメリカ南部を代表する植物にまでなったそうです.ラウンドアップがもっとクズに効けば,このようなことにならなかったでしょう.
モンサント社はラウンドアップを売るよりは,ラウンドアップ耐性の作物種子を売ることで利益を上げているはずですが,彼らにとっても耐性遺伝子は脅威になるのでしょうね.
とりとめのない話ですみません.
by stochinai
| 2009-05-23 21:37
| 生物学
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Comments(11)