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コーカサス山脈の残雪の上に根を張る植物

 驚きました。北海道でも雪が融けるやいなや、たくさんの植物が花をつけて彼らの寒さに対する強さに驚かされるのですが、最近 Ecology Letters という学術雑誌に出た論文には、雪の上に根を張る植物が登場しています。

Ecology Letters
Published Online: 4 Jun 2009
LETTER
New nitrogen uptake strategy: specialized snow roots
(新しい窒素獲得戦略:雪に特化した根)


 もちろん、私は専門として植物の論文をフォローしているわけではありませんので、ニュースソースはこちらです。

ScienceDaily
Science News
Newly Discovered Snow Roots Are 'Evolutionary Phenomenon'
新しく発見された「雪根」は進化によって獲得された


 ロシアのコーカサス山脈の高地で生活する植物 Corydalis conorhiza は、スプリング・エフェメラルのひとつです。北海道で普通に見られるエゴエンゴサクは学名が Corydalis ambigua と同じ属で、見た目もかなり似ています。

 雪解けとともに花を咲かせるこの植物は、他のスプリング・エフェメラルの花と同じように雪が融ける前にある程度育っていなければならないのですが、ほとんどの植物が雪の下で生長するのに対して、なんと融けかかった残雪の表面に根をはるという荒技をやってのけています。

 論文の写真を引用します。
コーカサス山脈の残雪の上に根を張る植物_c0025115_21332192.jpg
 (c) が芽とそのまわりに張り巡らされた根です。根の下は (a) に示された残雪です。(d) が雪が解けたところで、その後 (b) のように花が咲いたときには、雪の上にあった根は見えなくなっています。今まではおそらく花が咲いたところばかり観察されていたので、雪の上に根を張った様子が発見されたいなかったのだろうと思います。

 この根がちゃんと機能しているということは、雪の中に放射性同位元素で印を付けられた窒素を入れておき、この植物に取り込まれることが確認されています。

 北海道に住んでいると、雪に耐える植物などは珍しくないのですが、ここまで積極的に雪を利用している植物というのは聞いたこともありません。

 でも、この発見に刺激されていろいろと探してみると、意外と同じようなものは続々と見つかるような気もします。特に来年の春は、エゾエンゴサクの芽と根を要チェックですね。
Commented by kikori at 2009-06-15 19:52 x
おもしろい話題ですね。
植物の雪中保存中に根が伸びるのは結構あるのですが
ここまでと言うのは初めてです。来年の早春のエンゴサク、要チェックですね。
植物の活動は温度と日照時間の2つの要素が大きく関係していますので
そのあたりがKEYかもしれません。
by stochinai | 2009-06-12 21:43 | 生物学 | Comments(1)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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