5号館を出て

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イカもタコも音が聞こえる

 ほとんどの方はこのタイトルを見て、そんなの当たり前だと思われたことでしょう。そんな当たり前みたいなことでも、実は100年以上も前から論争になっていて、決着がついていなかったのだそうです。
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© PhotoXpress.com

 イカやタコの行動を見ていると、船のスクリュー音や水槽の壁をたたくといったことで生じる水の振動を感じていることに疑いはないのですが、サカナの浮き袋のような空気の入った器官を持っていない彼らは、そうした振動に対する反応がサカナに比べるとかなり鈍いということもあり、解剖学的には「耳」もないので、皮膚などで水の振動を感じることはできても、我々が普通に感じる400ヘルツ以上のいわゆる「音」は聞こえないという説も有力だったようです。

 というわけで、その論争に決着をつけるべく、台湾の研究者(台北国立科学アカデミー)が麻酔をかけたイカ(Sepiotheutis lessoniana) マダコ(Octopus vulgarisに、400ヘルツ以上の「音」を聞かせて、神経がその音に反応するかどうかを電気生理学的に検出したところ、眠っているイカタコの神経が音に反応することが示されたということです。

 原著論文はこちらです。

Comparative Biochemistry and Physiology - Part A: Molecular & Integrative Physiology
doi:10.1016/j.cbpa.2009.02.040
Acoustically evoked potentials in two cephalopods inferred using the auditory brainstem response (ABR) approach


 実験に使ったイカでは400-1500ヘルツの音に反応したのですが、マダコは400-1000ヘルツまでしか反応が見られなかったということです。
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 横軸に音の周波数をとったこのグラフでは、その値が低いほど音に敏感に反応するということを示しており、両種とも600ヘルツ付近の音によく反応しているのは、水中という環境で重要な音だということかもしれません。また、海底に住むタコよりも、サカナのように水中を泳ぐイカの方が音に対して敏感なのは、なんとなくわかるような気もします。

 ところで、彼らはどこで音を聞いているのかについては論文の中では明らかになってはいないのですが、サカナやエビなども音を聴くために使っていると考えられている平衡胞を使っているのではないかと推測しています。

 調べてみると、使っている「音」は283ヘルツ以下の低周波ですが、昨年すでに日本人が「頭足類が平衡胞で水中音を感知している」という論文を発表していますね。

Fisheries Science
Volume 74, Issue 4, Pages 781-786
Underwater sound detection by cephalopod statocyst


【追記】ネタ元を忘れてました。

BBC Earth News
The cephalopods can hear you

by stochinai | 2009-06-15 20:44 | 生物学 | Comments(0)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


by stochinai