5号館を出て

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ドーキンスが聖職者と和解

 Nature のブログ The Great Beyond にちょっとおもしろそうな記事が出ています。

Dawkins agrees with priest on evolution - July 28, 2009

 ドーキンスが牧師(イギリス国教会では、聖職者を牧師と呼んでいるのかどうかはよく知りませんが、聖職者のことです)と合意したというタイトルですが、要するにイギリスの小学校で進化の教育をするようにという提言文書にドーキンスだけではなく、キリスト教牧師である大学教授(Reverend Professor)の Michael Reiss という人も署名したというニュースです。

 私は、この Michael Reiss という教授のことはよく知らなかったのですが、昨年イギリスの科学学会であるロイヤル・ソサエティの科学教育部門の理事かなにかの職に就いていたにもかかわらず、自らの信仰にもとづいて創造説(地球の生命は進化によってではなく神が作ったという説)を擁護したために、その職を追われるという事件の主人公だった人のようです。

Creationism stir fries Reiss (17 September 2008)


 その Michael Reiss さんが、ドーキンス達と26名の連名でイギリス・ヒューマニスト連盟の名前で、イギリスの教育政策に関する専門家会議からの答申に意見を提出しました。イギリスの教育大臣の Ed Balls に提出された意見書には次のように書かれています。
We find it extraordinary that evolution and natural selection find no place in the section ‘Science – life and living things’. The theory of evolution is one of the most important ideas underlying biological science. It is a key concept that children should be introduced to at an early stage so as to ensure a firmer scientific understanding when they study it in more detail later on.

我々は進化と自然選択が「科学-生命と生物」という教科の中で教えられていないことに大きな問題があると考える。進化理論は生物科学の基礎としてもっとも重要な考え方である。子ども達がその初期に受ける教育の中において教えられるべき重要なコンセプトであり、そのことによって後の教育で受ける細かい知識が確かなものになるのだ。
 このニュースを読んで、我々日本の科学者集団も、こんなふうに国の教育政策にどんどん発現していかなければならないと思いました。

 今朝のBBCの番組では、牧師の Reiss さんが、「進化は生物学の核心部分にある考えであり、・・・・小学校で教えられなければならないと考えています」などと発言したそうですので、昨年の「舌禍事件」で学会を追放されたのは、実はマスコミの誤解報道によるものではないかとも書かれていました。

 いずれにしても、Nature blog は 「お帰りなさい。牧師教授!」と結んでおります。

 良い話ではありませんか。
Commented by huwahuwamohumoh at 2009-07-28 21:57 x
はじめまして。どれだけ一般市民に伝わっているかは怪しいけれど、イギリスやアメリカではこういう声明が多いですね。日本でも進化学会などが中心となって新聞に一面広告打ったら面白そうですね。11月24日あたりに。
Commented by stochinai at 2009-07-29 12:09
 やっぱり文化の違いなのかもしれませんね。また、新聞広告って恐ろしいほど値段が高いのも難点です。11月24日というのは「種の起源」の出版記念日ということだと思いますが、わかってくれる人がどのくらいいるか(笑)。
by stochinai | 2009-07-28 21:05 | 生物学 | Comments(2)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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