5号館を出て

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インフルエンザが夏にはやるのは何も今年に限ったことではない

 夏なのに新型インフルエンザが猛威をふるっているような報道が目立ちます。今回のインフルエンザに感染した方が3人お亡くなりになったことは事実ですが、気をつけてニュースを見聞きすると、インフルエンザが原因で亡くなったという表現をされていることはほとんどないことに気がつきます。お年寄りや、すでになんらかの疾患をお持ちの方などは、インフルエンザでなくても普通の風邪が原因で肺炎を起こし、重篤な結果になりがちなものですから、インフルエンザに限らず様々な感染症には気をつけなくてはなりません。

 お亡くなりになった方には、心からお悔やみを申し上げますが、この先「新型インフルエンザ」が原因でバタバタとヒトが倒れていくというパニック映画のような状況がくるかもしれないという根拠はまだ何もないと思われます。

 そもそも、今回のインフルエンザ騒動がなんとなく落ち着きを取り戻したのは、多くの人が夏になればインフルエンザの活動は収まると「なんとなく」考えたからではないでしょうか。厚労大臣はそれを称して「国民の慢心」というようなことを言ったそうですが、国民というものは油断しがちな存在ですから、それに警鐘を鳴らすためにあるのが厚労省というお役所なのではないでしょうか。そういう意味では慢心は大臣がお持ちだったのではないかと拝察します。

 それはさておき、夏になるとインフルエンザが収まるというのはどういう根拠からでしょうか。ネットでちょっと調べただけでも、夏にインフルエンザがはやるのは(特に近年は)珍しいことではなくなってきているようです。

 これは2005年7月22日の記事です。

 沖縄でインフルエンザ注意報発令
“常夏の楽園”沖縄で前代未聞の夏のインフルエンザが大流行し注意報が発令されている。インフルエンザといえば冬の流行が相場だが、南国でなぜ今はやるのか。観光シーズンを迎え、往来客が増える中、本土への影響はないのか。夏休み前に異例の学級閉鎖もあった琉球インフル事情とは。 (大村歩、吉原康和)

 沖縄県健康増進課によると、三月中旬に患者数約四千人とピークを迎え、例年通りそのまま終息に向かうとみられていたが、六月中旬に二つの保健所管内で一定点(一診療所あたり)の患者数が、感染症流行注意報発令の基準となる十人を超える異変が起きた。
 六月下旬から患者は増え続け、七月中旬の最新の調査では、患者数八百二十七人、一定点当たり約十四人に上っている。傾向としては沖縄本島北部から順に中部、那覇市周辺、南部に感染が拡大しているようだ。

 根路銘所長によると、タイやベトナム、中国南部など熱帯・亜熱帯地域でのA香港型の流行パターンは、暑くスコールが多く湿度の高い五月から七月。これまでの日本の流行パターンとは異なるが「沖縄での七月の流行は、東南アジア型の流行パターンに類似してきたということで、極めて注目される現象だ」と指摘する。
 というわけで、もう4年も前に沖縄で同じようなケースが報告されているのです。

 2006年7月13日(木)

 夏なのにインフルエンザが止まらない 沖縄は流行が拡大中
 夏には終焉するはずのインフルエンザ流行がいまだに続いており、特に沖縄県では5月中旬から急増しています。

  特に患者数が多いのは沖縄県(同23.1人)で、ピーク時の2月中旬(同17.5人)を大きく上回っています。沖縄は昨年の夏もインフルエンザの流行がありましたが、今年はそれ以上の流行になりそうです。
 2006年07月23日

 夏インフルエンザに気をつけろ
 中でも猛威にさらされているのが沖縄だ。実は、昨夏に続く2年連続の季節外れの流行である。
「4月上旬に冬の流行が終息した後、5月中旬から再び増え始めました。最新の6月26日~7月2日のデータでは、定点当たり患者報告数は18.6人。2週前の25.0人からは減りましたが、今冬のピークが17.5人、調査開始以来初の夏の流行だった昨夏のピークが、7月中旬の14.3人でしたから、まさに異例事態。学級閉鎖も出ています」(沖縄県健康増進課)
 2006/07/31

 夏のインフルエンザ?
そもそも、夏風邪として扱っていたものの中には、インフルエンザの4月以降の下火勢力が含まれていたと考えられます。今年だけ違ってきた理由は、インフルエンザ検査キットの改良です。

で、急な高熱、ひどい倦怠感、関節痛などの特徴的な症状のある方を、検査の俎上に乗せると、出るは出るは、主にB型。それで、学校なんかでは、周囲にインフルエンザ患者がいたと言う情報がきちんと伝わるもので、ますます確定診断を増やす。そんなところが、理由の一つ。と言うのが戸高的解釈です。
 2007年の記事はありませんが、これは2008年10月14日(火)の記事です。

 夏にインフルエンザ?
9月26日付けの日経新聞にありました。

インフルエンザ、夏に流行

沖縄では近年、インフルエンザが夏に流行、学級閉鎖が相次いでるそうです。

那覇市の年間平均気温は1980年代まで22度で推移していましたが、90年代に入って23.2度、00年代は23.5度に上昇しています。

香港並みの平均気温です。
20度台後半の東南アジア各国に近づいています
 ということで、夏にインフルエンザがはやるのは沖縄ではもはや普通のことのようで、温暖化が進んでくるとそれが日本全体に広がっても不思議はない状況になってきているのかもしれません。

 それと、もうひとつは検査技術の発達です。昔から「夏風邪」という言葉があるように、夏でも風邪やインフルエンザがはやることはしばしばあったのだと思います。それが、最近の検査技術の発達で「夏風邪」の中のあるものはインフルエンザであることが明らかになったということは大いにありそうです。しかも、今年はそのインフルエンザが例のブタフルエンザつまり「新型インフルエンザ」であることの動かぬ証拠(遺伝子検査)を比較的簡単に出せる状況にあります。そこで、夏にもはやることが珍しくないインフルエンザを調べてみたら「新型」だったということでもあるのではないでしょうか。

 もちろん、今はやっているのがインフルエンザであることがわかることは良いことです。そこで、今我々がすべきことは冬にやっていたのと同じように、インフルエンザになったら自宅にしばらく引きこもって休養し、身体の免疫システムがウイルスを追い出す余裕を与えつつ、他の人にウイルスをまき散らさないこと、複数の人間が出入りする場所へ行って、ドアノブや電車のつり革にさわったあとは手洗いを励行することなことで、まずは良いのではないかと思います。

 こんな段階で、厚労大臣が悲壮な顔で記者会見をして、インフルエンザ蔓延宣言などをすることは、文化国家のとる態度ではないように思われます。
Commented by KAYUKAWA at 2009-08-20 22:51 x
 ご指摘の通りですね。「新型」の毒性(致死率)が急に上がったわけではなく、その一方で「超過死亡」まで含めれば毎年1万人の方がインフルエンザ(一般)で亡くなっている、ということを理解したり説明したりするのは、案外と難しいようですが。
 僕としては、これを機に、「原因」という単純な発想ではなく、「リスク・ファクター」という概念が広まればいいな、と思っております。
Commented by pluto at 2009-08-20 22:57 x
あの大臣はああいった記者会見が大好きなんだと思います。
年金にしても、空港での水際作戦にしても・・・・・記者会見大好き 
でも、仕事は官僚なり下々に丸投げ というか 放り出すので困りますが
 地球各地でパンデミックみっくな感じですものね
by stochinai | 2009-08-20 19:32 | 医療・健康 | Comments(2)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


by stochinai