2009年 08月 28日
イヌの毛のパターンは3つの遺伝子の組み合わせで決まる
Science誌の速報版、Science Expressに載っている論文です。
Published Online August 27, 2009
Science DOI: 10.1126/science.1177808
Science Express Index
REPORTS
Submitted on June 16, 2009
Accepted on August 14, 2009
Coat Variation in the Domestic Dog Is Governed by Variants in Three Genes
著者はEdouard Cadieu 他たくさんの方々
膨大な数のイヌの遺伝子を解析して、その毛のパターンを決める遺伝子を探したところ、基本的にたった3つの遺伝子の組み合わせで決まるという結果を示したものです。
解説記事がBBC NEWSにあります。
Variety of dogs' coats explained (イヌの毛がいろいろある理由が遺伝子レベルで解明された)
このBBCの写真にあるように、イヌには短毛や長毛、柔らかい毛や堅い毛、ヒゲのような長い部分をもったものとそうでないものなどいろいろなパターンがあります。いろいろな犬種はありますが、基本的にこれらの性質の組み合わせくらいしか毛のパターンがないというふうにも言えます。
著者達は、80品種に属する1000匹以上のイヌの遺伝子を解析して、毛の質と関係している遺伝子をさがしたところ、基本的に3つの遺伝子の型の組み合わせで決まっていることがわかりました。遺伝子は次の3つでした。
RSPO2: Rスポンジン2
FGF5: 繊維芽細胞増殖因子5
KRT71: ケラチン71
スポンジンと繊維芽細胞増殖因子は細胞を刺激するタンパク質で、ケラチンは毛の主成分のひとつです。要するに、これらの遺伝子が毛を作る細胞を活性化したり、毛そのものの質を変えることでイヌの毛のパターンが決まっているということのようです。
論文自体(pdf)は速報なので図もないのですが、添付されている補足資料(pdf)に膨大なデータと図が載っています。
その中に載っている図で、非常に印象深いのは、furnishedという言葉で表されている、おそらくイヌのヒゲのような毛の生え方を決めている「ある遺伝子」の型がヒゲのあるなしと、とても良く一致していることを示すこの図です。
上半分がヒゲのあるイヌの遺伝子パターンで、下がヒゲのないものです。
これほどきれいではありませんが、長毛(上)と短毛(下)の遺伝子パターンです。
そして、ちょっと微妙ですが、安定した巻き毛(上)と巻き毛になったりならなかったりするイヌの遺伝子(下)の違いです。
これらの変異がどの遺伝子にあるかを調べた結果、上に挙げた3つの遺伝子の中にあり、その変異の仕方の組み合わせで、イヌの毛のパターンが決まっているのだ、というのがこの論文の結論です。
遺伝子の型の組み合わせと毛の質の決まり方をまとめた表があります。上から、短毛、ワイヤ(針金状の堅い毛?)、ワイヤでカール、長毛、長毛でヒゲあり、カール、カールしてヒゲありの毛質ができる3つの遺伝子の組み合わせパターンがまとめられているものです。
イヌというのは、ヒトによって短期間に遺伝子変異が選択されてたくさんの遺伝的性質(形質)が固定化されて品種が作られたので、こういう解析にはもってこいの材料で次から次へと同じような論文が出ている印象があります。
同じようにヒトの手で作られた、ブロッコリーやカリフラワー芽キャベツやケールなどを含むキャベツの仲間が、どのようにしてあんな形になったのかを決める遺伝子の変化もまちがいなくどこかの研究室で調べられているものと思います。そろそろ論文が出てくるかもしれませんね。
Published Online August 27, 2009
Science DOI: 10.1126/science.1177808
Science Express Index
REPORTS
Submitted on June 16, 2009
Accepted on August 14, 2009
Coat Variation in the Domestic Dog Is Governed by Variants in Three Genes
著者はEdouard Cadieu 他たくさんの方々
膨大な数のイヌの遺伝子を解析して、その毛のパターンを決める遺伝子を探したところ、基本的にたった3つの遺伝子の組み合わせで決まるという結果を示したものです。
解説記事がBBC NEWSにあります。
Variety of dogs' coats explained (イヌの毛がいろいろある理由が遺伝子レベルで解明された)
このBBCの写真にあるように、イヌには短毛や長毛、柔らかい毛や堅い毛、ヒゲのような長い部分をもったものとそうでないものなどいろいろなパターンがあります。いろいろな犬種はありますが、基本的にこれらの性質の組み合わせくらいしか毛のパターンがないというふうにも言えます。
著者達は、80品種に属する1000匹以上のイヌの遺伝子を解析して、毛の質と関係している遺伝子をさがしたところ、基本的に3つの遺伝子の型の組み合わせで決まっていることがわかりました。遺伝子は次の3つでした。
RSPO2: Rスポンジン2
FGF5: 繊維芽細胞増殖因子5
KRT71: ケラチン71
スポンジンと繊維芽細胞増殖因子は細胞を刺激するタンパク質で、ケラチンは毛の主成分のひとつです。要するに、これらの遺伝子が毛を作る細胞を活性化したり、毛そのものの質を変えることでイヌの毛のパターンが決まっているということのようです。
論文自体(pdf)は速報なので図もないのですが、添付されている補足資料(pdf)に膨大なデータと図が載っています。
その中に載っている図で、非常に印象深いのは、furnishedという言葉で表されている、おそらくイヌのヒゲのような毛の生え方を決めている「ある遺伝子」の型がヒゲのあるなしと、とても良く一致していることを示すこの図です。
これほどきれいではありませんが、長毛(上)と短毛(下)の遺伝子パターンです。
遺伝子の型の組み合わせと毛の質の決まり方をまとめた表があります。上から、短毛、ワイヤ(針金状の堅い毛?)、ワイヤでカール、長毛、長毛でヒゲあり、カール、カールしてヒゲありの毛質ができる3つの遺伝子の組み合わせパターンがまとめられているものです。
同じようにヒトの手で作られた、ブロッコリーやカリフラワー芽キャベツやケールなどを含むキャベツの仲間が、どのようにしてあんな形になったのかを決める遺伝子の変化もまちがいなくどこかの研究室で調べられているものと思います。そろそろ論文が出てくるかもしれませんね。
by stochinai
| 2009-08-28 21:42
| 生物学
|
Comments(0)