5号館を出て

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ヨーロッパで農耕を始めた民族はそれまで狩猟をやっていた民族の子孫ではない

 まず、この地図をご覧ください。この地図の中で緑で表されている領域は紀元前5500年から5000年くらいの時期に農耕が行われていた領域を示しています。
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 これって、数日前にお見せしたこの地図と似ていると思いませんか。
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 こちらはコンピューターシミュレーションで、図の中で赤い中心のあたりで遺伝子の変異を持ったヒトが出現し、ヨーロッパに広がって行った様子を示したものです。この変異を持った人はおよそ7500年くらい前(つまり紀元前5500年くらい前に出現したとされていますので、このふたつの地図が重なるのは両者の結論の正しさを示しているともいえるように思われます。

 また、上の図の中に赤い四角で表されているのは、ミトコンドリア遺伝子の解析からわかった紀元前13400年から紀元前2300年の狩猟民族の骨が出てきた場所です。そして、黄色の丸で表されているのはその後に出現した農耕民族の骨が出てきたところで、色が違うのはこの2つの民族に遺伝的連続性がない、すなわち農耕民族は狩猟民族がいなくなった(あるいは追い出した)後に、別の場所から移住してきたことを示しています。

 上の図は今日のScienceOnlineに登場した論文に出ているものです。

Published Online September 3, 2009
Science DOI: 10.1126/science.1176869

Genetic Discontinuity Between Local Hunter-Gatherers and Central Europe’s First Farmers

B. Bramantiほか多数


 この論文の内容もタイトルに示されているとおりで、ヨーロッパで大昔に農耕を開始した人達は、それまで同じ地域で狩猟をして生活していた人達とは遺伝的連続性がない、つまり別の場所から移住してきた人であるということを示した論文です。

 古い遺跡から発掘された骨のミトコンドリアDNAを解析してわかったこの結果は、先日書いた「乳糖耐性遺伝子変異はいつどこで起こったがが推定された」に登場する、ヨーロッパで最初に牧畜・農耕を始めた人達がどこか別の場所から移住してきた人達であることを示しているというわけです。

 また、同じ論文には現在のヨーロッパ人は、この狩猟民族とも農耕をしていた人々とも遺伝的関係がないということが示されていますので、今現在ヨーロッパに住んでいる人達もまた、農耕民族がいなくなった後あるいは、先住の農耕民族を追い出して住み着いた集団であるということも推測されるということになります。

 こうやって続々と人類史が生物学的に解析されてくると、なんだかワクワクしますね。
Commented by ぜのぱす at 2009-09-05 02:33 x
コレは、面白い。名前にリンクしているのは、以前に書いたエントリーですが、アミラーゼ遺伝子のコピー数が、ヒトの歴史の中で、でんぷんを多く食べる地域(或いは、農耕社会)のひと達は、そうでない地域(狩猟社会)のひと達に比べて、遺伝子が重複して増えて、より多くの遺伝子を持つ様に適応している、と云う話は、もしかすると、そもそも、祖先の違うヒトを比較していた可能性がありますね。
by stochinai | 2009-09-04 23:52 | 生物学 | Comments(1)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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