2009年 10月 15日
ブログ・アクション・デーに寄せて
今年のブログ・アクション・デーのテーマは Climate Change 気候変動です。今や、気候変動や地球温暖化という言葉を聞かない日がないくらいの日々が続いています。一方、専門は全然違いますが、私もいちおう自然科学者の端くれとして、今気候変動が起こっているのかという問いには簡単にYESと答えられるほどの情報を持ち合わせていないのも、また事実です。
気候が変動しているかどうかはわからないとしても、毎年のように「今年は異常気象だ」という話にもなります。しかし、50年も生きているとたいていの「異常気象」は過去に経験済みだったりします。冬に大雪が降ったり、異常に雪が少なかったり、真冬に雨が降ったりすることはもちろん、夏にまったく雨が降らなかったり、大雨が降って洪水になったり、寒い夏があったり、異常に暑い夏があったり、過去数十年を振り返ってみると、いろんな気象が脈絡なく出現しているような記憶があり、そういう意味では「地球は常に異常気象」なのではないかとさえ思います。
その一方では、確かに温暖化という気候変動は進んでいるのかもしれないということは、北海道で育つ植物がこの10年くらいで確実に変化をしてきているということから感じることができます。北海道の米がおいしくなったのはもちろん品種改良の努力がもっとも大きいのでしょうが、農業関係者の方に聞いても気温上昇が米をおいしくしているのはまちがいないとおっしゃる方が多いようです。また、道南のほうでは北海道ではほとんど採れなかったサツマイモの生産が始まったりしているとも聞きます。
北大には全国的に有名なイチョウの並木があります。その並木は、毎年今の時期になると急速に葉を黄色に変えていくのですが、不思議なことにこの色づくタイミングはその年の気象がどうだったかということにはそれほど大きく影響されないようにも思えます。今日見てきたところでは、例年のように最初に色づく一本が見事に黄葉しておりました。ただ残念ながら、北海道が暖かくなったかもしれないことと、この色づく時期の関係については記憶も資料も持ち合わせておりません。
こういう植物は、どうやって気候や気象を感知しているのでしょうか。少々の「異常気象」では、かれらの年間カレンダーが動揺するようには見えません。もちろん、植物にとって気温と水分と太陽の光が非常に重要なファクターであることはわかりますが、日夜報道が騒ぎ立てている二酸化炭素は彼らにとっては重要な栄養源(?)でもあります。二酸化炭素が増えて地球が温暖化することは、一般的な植物にとっては悪いことではないのかもしれません。
この木の葉や幹や実は、太陽エネルギーを使って二酸化炭素と水で作られていることを考えると、素朴な思いではありますが、二酸化炭素の正しい使い方は植物を育てることだと感じられます。
もちろん、現在の人間活動は植物を育てるのに必要な量をはるかに越えて二酸化炭素を出していることが問題とされているのでしょうが、人類が二酸化炭素を出すために使っている炭素源のほとんどは、植物が光合成によって吸収した二酸化炭素がもとになっていることを考えると、必要なことは二酸化炭素を出さないことだけではなくて、植物を育てることのような気もします。
人類が燃やしてしまった石炭や石油をもとに戻すことが簡単にできるとは思いませんが、地球上におけるリサイクルとは植物の活動を考えずには成り立たないものだと思います。二酸化炭素を出さない工夫とともに、二酸化炭素を植物の形に戻したり、木造の建築物などの形で「長期間固定化」するなどということは、あまりにもスケールの小さいアイディアということになってしまうのでしょうか。
樹齢何十年という木を見ていると、その中にどのくらいの二酸化炭素が閉じこめられているのか知りたくなりませんか。
気候が変動しているかどうかはわからないとしても、毎年のように「今年は異常気象だ」という話にもなります。しかし、50年も生きているとたいていの「異常気象」は過去に経験済みだったりします。冬に大雪が降ったり、異常に雪が少なかったり、真冬に雨が降ったりすることはもちろん、夏にまったく雨が降らなかったり、大雨が降って洪水になったり、寒い夏があったり、異常に暑い夏があったり、過去数十年を振り返ってみると、いろんな気象が脈絡なく出現しているような記憶があり、そういう意味では「地球は常に異常気象」なのではないかとさえ思います。
その一方では、確かに温暖化という気候変動は進んでいるのかもしれないということは、北海道で育つ植物がこの10年くらいで確実に変化をしてきているということから感じることができます。北海道の米がおいしくなったのはもちろん品種改良の努力がもっとも大きいのでしょうが、農業関係者の方に聞いても気温上昇が米をおいしくしているのはまちがいないとおっしゃる方が多いようです。また、道南のほうでは北海道ではほとんど採れなかったサツマイモの生産が始まったりしているとも聞きます。
北大には全国的に有名なイチョウの並木があります。その並木は、毎年今の時期になると急速に葉を黄色に変えていくのですが、不思議なことにこの色づくタイミングはその年の気象がどうだったかということにはそれほど大きく影響されないようにも思えます。今日見てきたところでは、例年のように最初に色づく一本が見事に黄葉しておりました。ただ残念ながら、北海道が暖かくなったかもしれないことと、この色づく時期の関係については記憶も資料も持ち合わせておりません。
もちろん、現在の人間活動は植物を育てるのに必要な量をはるかに越えて二酸化炭素を出していることが問題とされているのでしょうが、人類が二酸化炭素を出すために使っている炭素源のほとんどは、植物が光合成によって吸収した二酸化炭素がもとになっていることを考えると、必要なことは二酸化炭素を出さないことだけではなくて、植物を育てることのような気もします。
人類が燃やしてしまった石炭や石油をもとに戻すことが簡単にできるとは思いませんが、地球上におけるリサイクルとは植物の活動を考えずには成り立たないものだと思います。二酸化炭素を出さない工夫とともに、二酸化炭素を植物の形に戻したり、木造の建築物などの形で「長期間固定化」するなどということは、あまりにもスケールの小さいアイディアということになってしまうのでしょうか。
樹齢何十年という木を見ていると、その中にどのくらいの二酸化炭素が閉じこめられているのか知りたくなりませんか。
Commented
by
kikori
at 2009-10-16 19:38
x
お久しぶりです。
北大のイチョウ並木の黄葉はいつも楽しみにしています。
さて、一般的には、植物の生育には「積算温度」が重要な因子となりますが、
他にも日長や特定の気温なども影響します。
例えば、紅葉の開始は日最低気温がある温度になるとスイッチが入り
変化が開始すると考えられています。
樹木は二酸化炭素は閉じ込めません・・・などの揚げ足取りはともかく、
「木材という形で炭素を固定する」手法での温暖化防止対策は
真剣に議論されている最中です。
これが日の目を見ていないのは、木材として固定された炭素量を
どこの国の量としてカウントするかについて合意が得られていない
ためだったりします。
木材が存在する国ということになると、輸入国が圧倒的に有利ですし、
木材を生産した国ということでは、「木材」の形で固定されるかどうかが
確定できないという論点だったと思います。
北大のイチョウ並木の黄葉はいつも楽しみにしています。
さて、一般的には、植物の生育には「積算温度」が重要な因子となりますが、
他にも日長や特定の気温なども影響します。
例えば、紅葉の開始は日最低気温がある温度になるとスイッチが入り
変化が開始すると考えられています。
樹木は二酸化炭素は閉じ込めません・・・などの揚げ足取りはともかく、
「木材という形で炭素を固定する」手法での温暖化防止対策は
真剣に議論されている最中です。
これが日の目を見ていないのは、木材として固定された炭素量を
どこの国の量としてカウントするかについて合意が得られていない
ためだったりします。
木材が存在する国ということになると、輸入国が圧倒的に有利ですし、
木材を生産した国ということでは、「木材」の形で固定されるかどうかが
確定できないという論点だったと思います。
0
Commented
by
stochinai at 2009-10-16 19:52
政治的なことは良くわかりませんが、木材生産国と輸入国で炭素量を折半するということはできないものなのでしょうか。
また、日本にはすばらしい木造建築の伝統があるのですから、炭素保有のために新しい木造建造物をどんどんと創り出して世界へ輸出していくという戦略で、二酸化炭素対策を世界に提案していっても良いのではないでしょうか。
日本にとって、チャンスのような気もするのですが、木造建造物を造る職人がいなくなってしまったということも大きいのかもしれませんね。
また、日本にはすばらしい木造建築の伝統があるのですから、炭素保有のために新しい木造建造物をどんどんと創り出して世界へ輸出していくという戦略で、二酸化炭素対策を世界に提案していっても良いのではないでしょうか。
日本にとって、チャンスのような気もするのですが、木造建造物を造る職人がいなくなってしまったということも大きいのかもしれませんね。
Commented
by
nq
at 2009-10-17 15:07
x
木材の有効活用は、無害でよいと思います。
心配なのは、CO2の地中固定など、不自然な対策をとって、寒冷化が進行したときに取り返しがつかなくなることです。人類全体の生存のためにはは、温暖化よりも寒冷化による飢饉や疫病蔓延の方が危険性が高いですから。21世紀になってから続いている寒冷化がIPCCのいうように小さな揺らぎなのか、新しい傾向なのか、これから数年たたないとわからないままでの地中固定など人工的な対策は危険です。化石燃料エネルギーの節約を何よりも優先するのが本来だと思います。一番有効なのは、中国、インドなどの新興国に燃料節約技術を供与することでしょう。
心配なのは、CO2の地中固定など、不自然な対策をとって、寒冷化が進行したときに取り返しがつかなくなることです。人類全体の生存のためにはは、温暖化よりも寒冷化による飢饉や疫病蔓延の方が危険性が高いですから。21世紀になってから続いている寒冷化がIPCCのいうように小さな揺らぎなのか、新しい傾向なのか、これから数年たたないとわからないままでの地中固定など人工的な対策は危険です。化石燃料エネルギーの節約を何よりも優先するのが本来だと思います。一番有効なのは、中国、インドなどの新興国に燃料節約技術を供与することでしょう。
Commented
by
qsat
at 2009-10-17 18:35
x
地中固定で気になるのは、いつの日か地上に現れたときの影響が劇的になるかもしれないことです。CO2の影響はまだ限定的でも、放射性廃棄物の場合は目も当てられないかもしれません。
by stochinai
| 2009-10-15 18:50
| コンピューター・ネット
|
Comments(4)