5号館を出て

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インフルエンザ公欠

 最近、全学教育の教務からこんなメールがよく来ます。(改行の位置は適宜変えてあります。)

*** 先生
全学教育科目担当教員 各位

            北海道大学学務部教務課全学教育担当

     インフルエンザによる学生の欠席について

 このことについて,別添ファイルの学生より検査によりインフルエンザと診断された旨連絡がありました。
 つきましては,当該学生は高熱等の症状が治まるまでと,治まってからの2日間は自宅待機となるため,かねてから依頼しておりますとおり当該学生の履修する全学教育科目における欠席の取扱いについては,学生の不利益となることがないよう,特段のご配慮をいただくよう,よろしくお願いたします。

 なお,この欠席者情報は履修登録後(10月19日以降),インフルエンザと連絡があった学生の一覧です。履修登録前にインフルエンザで欠席した学生は含まれておりませんので,ご了承願います。
 また,一覧に記載されていない学生より,今後インフルエンザで欠席していたと申し出がありました場合は,学生に所属学部へ申し出るようご指示いただくとともに特段のご配慮をいただくよう,併せてお願いいたします。
 要するに(新型)インフルエンザという診断書を持って教務課に申し出た学生に関しては、大学の方針で自宅待機をさせることになっているため、欠席であったとしても学生の不利益にならないように(つまりは出席扱いとして)対応してくださいという申し出です。

 まあ、今回のインフルエンザに関しては、大学が大々的に学生・教員に対して、罹患した場合には十分な自宅待機を求めておりますので、本人は出席したかったとしても大学の方針を遵守するならば、欠席せざるを得ないわけですので、もちろんそのことだけで不利益にならないようにはしようと思います。

 しかし学生にとっては、新型インフルエンザではなくとも、やむを得ず欠席しなければならない事情はいくらでもあり得ます。私はずっと前から必ず、授業を欠席したものには単位を与えないと宣言してから開講するようにしています。ただし、理由の如何を問わず(たとえ理由もなく欠席した場合でも)、2000字以上のレポートを提出すれば出席したとみなすと言ってあります。

 つまり、単なるサボりであろうと、サークルの大会であろうと、近親者の不幸であろうと、交通事故であろうと、新型インフルエンザであろうと、私の授業に関しては欠席したらレポートを書くことを、強要しているのです。

 そもそも、授業を休むということはせっかくの大切な勉学のチャンスを失することです。それは、誰のためでもなく自分のために非常な不利益だと思います。私は、その不利益を挽回するためのチャンスとしてレポートを書くために勉強することを求めているだけです。たとえ、どのような理由があるにせよ、授業料を払っている大学の授業を受けないということは大きな損失です。レポートを書くことでその損失をリカバーできるならば、それは感謝されこそすれ恨まれるようなことではないと思います。

 ところが、学生の中には「自分はインフルエンザにかかって、診断書もあるのだから、たとえ授業に出なくとも、出たというクレジットをくれても良いのではないか。高校でも、公式な学校行事で欠席する時には『公欠』という制度があったのだから、インフルエンザによる私の欠席も出席として認めるべきではないか」という主張をするものがいます。こういう話を聞くと、「君は大学を辞めたほうがよいのではないか」という言葉が喉から出そうになりますが、グッとこらえることができるようになりましたが、次のような「イヤミ」をいうことはたまにあります。

 大学としてインフルエンザによる欠席は不利益にならないように扱うという方針があるので、君がレポートを出したくないというのならば、そのことだけによって単位を落とすような扱いはしません。しかし、理由がなんであれ休んだ分、君は大学で勉学をするという機会を失うという大きな損失を受けたのだと思う。その損失を挽回するためにレポートを書くことを勧めるけれども、勉強したくないというのならばあえて強制はしません。それにしても、そんなに勉強するのがきらいなのですか?

 こういう学生が増えてきたら、大学も存在意義はありませんね。
Commented by ogaga at 2009-10-27 01:40 x
その学生さんは、インフルエンザという印籠を見せたのに、相手が無条件でへへーっとなってくれなかったのが悔しかったのかな、と思いました。
Commented by オーツ at 2009-10-27 08:23 x
「今回のインフルエンザに関しては、大学が大々的に学生・教員に対して、罹患した場合には十分な自宅待機を求めております」ということは、教員が罹患した場合は、公欠になり、授業が休講になるとともに補講をしなくてもよい(講義を行ったものとみなす)ということなのでしょうか。
Commented by stochinai at 2009-10-27 09:24
 そう言えば、教員が罹患した場合には、教員に不利益が生じないような措置があるという話は聞きませんね(笑)。
Commented by jd at 2009-10-27 10:33 x
レポートを強制せずとも勉強したい人は休んでしまった分を自分で勉強すると思います。その勉強の結果が正しいかどうか知りたければ自分で教授に聞きに行くと思います。勉強したい人なら強制されてレポート書かなくてもいいような気がしますが。どうでしょうか?
Commented by stochinai at 2009-10-27 10:53
 悪くはないと思いますが、それなら大学では学ぶ環境だけ提供しておけば、授業はいらないということにもなりますね。楽でいいですけど。
Commented by 【な】 at 2009-10-27 14:28 x
「単位を与える」というのは「授業内容を不足なく理解した」という証書を与えることですから、授業にもれなく出席することが要求されている授業で欠席したら「不足なく習得した」という証書を出せないのは当然だと思いますね。さらに、欠席した人にはレポートを出すことによって埋め合わせするチャンスが与えられているわけですから、「不利益」にはなっていないはずです。授業中に習得すべきことを自習で補うわけですから、プラマイゼロです。むしろ、レポートを免除する方が学生の「不利益」(同じ授業料で教育を受ける機会を逸するわけですから)になるという理屈になるかと思います。

ちなみにぼくは講義科目に関しては出席を取りません。ところが学生からは「出席を取ってくれ」と毎年要望が来るのですから、おもしろいものです(笑い。
Commented by jd at 2009-10-27 15:29 x
強制される授業やレポートはなくてもいいかもと思います。理解できない、実験できるようにならない、で困るのは学生本人ですから。授業も受けれるし実験もできる環境を用意し、本人の好きなように学びなさい、、、これではうまく学生は育たないのでしょうか?遅れようが欠席しようがコミッティーの審査をパスすればいいのかなとも思います。
Commented by stochinai at 2009-10-27 15:52
 大学院はそれで良いと思いますが、日本の学部には到達審査のための試験機関(制度)というものがありませんので・・・・。
Commented by 今回は匿名で at 2009-10-27 18:21 x
それにしても新型インフルエンザに罹患した、というのはそんなに配慮するべきことなのでしょうか?これまで季節性インフルエンザに罹患した場合も、医療機関で診断されれば、解熱後、3日間は、小中学校へは登校は許されませんでした。また、風疹や水疱瘡、おたふく風邪でも出席停止は似たような状況ではないでしょうか?小学生とは違い、健康管理を自分でできる(ハズ)年齢の大学生が、これだけ注意が喚起されている新型インフルエンザだけに罹患したからといって、配慮をせよ、というのはちょっと違和感を持っています。大学生相手ではないですが、年明けの入試でも個別学力試験で追試験を行うことが推奨されていますね(これは新型インフルエンザだけが対象ではないと聞いていますが)。このあたりでは私立中学校などの入試は、センター試験前後にありますが追試をやる、といいう話はまだ聞いていません。大学生(将来のも)に甘いように思います。
Commented by stochinai at 2009-10-27 19:43
 まったく同感です。
by stochinai | 2009-10-26 23:43 | 教育 | Comments(10)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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