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哺乳類トガリネズミと爬虫類ドクトカゲの毒タンパク質の収斂進化

 毒を持つ哺乳類は数少ないのですが、前にハイチソレノドンという巨大な毒をもつトガリネズミ(?)を話題にしたときにcomplex_catさんから「毒を持つ哺乳類には,いわゆる単孔類に属するカモノハシと,この食虫類に属するブラリナトガリネズミ Blarina brevicauda がおります」と教えていただきました。今回はまさにそのブラリナトガリネズミの登場です。

 こちらがブラリナトガリネズミです。かわいい顔をしているので、まさか毒があるとは思えないところが危険です。
哺乳類トガリネズミと爬虫類ドクトカゲの毒タンパク質の収斂進化_c0025115_19391851.jpg
 (CC) Wikimedia

 このトガリネズミの毒は唾液腺から出される強いタンパク分解酵素活性を持ったカリクレインと呼ばれる酵素に似ており、もともとはおそらく消化酵素として使われていたものが毒に進化したもののようです。酵素が毒に変わった時に起こった変化を調べてみると、酵素のタンパク分解活性中心付近にいくつかのペプチド配列(遺伝子ではDNA配列)が挿入されたもののようです。

 その毒をメキシコドクトカゲ(Mexican beaded lizard: Helodermata horridum)の持つ毒と比べて見たところ、こちらは異なるタンパク分解酵素が祖先になっているにもかかわらず、ブラリナトガリネズミの場合と同じようにタンパク分解活性中心付近にいくつかのペプチド配列が挿入されて毒に変化したことがわかったということで、脊椎動物ではタンパク分解酵素が毒の祖先で、それが毒になるには似たような進化(収斂進化)が起こるという共通の原理があるのではないかという、非常に興味深い論文でした。

 ちなみに、こちらがメキシコドクトカゲの写真ですが、Wikimediaでは著作権を放棄したパブリックドメインになっています。
哺乳類トガリネズミと爬虫類ドクトカゲの毒タンパク質の収斂進化_c0025115_19493138.jpg
 不思議な話に思えるかもしれませんが、毒として働くためにはそんなにいろいろなしくみはあり得ないので、タンパク質で毒を作ろうとするとどうしても同じようなところへと収斂してしまうというのは、進化の話としてはむしろよくあることだと思えます。

 忘れるところでしたが、解説記事と原著論文をお知らせしておきます。

Venomous Shrew And Lizard: Harmless Digestive Enzyme Evolved Twice Into Dangerous Toxin In Two Unrelated Species
ScienceDaily (Oct. 29, 2009)


 原著論文は Current Biology です。

Current Biology, article in press
doi:10.1016/j.cub.2009.09.022

Convergent Evolution of Novel Protein Function in Shrew and Lizard Venom

Yael T. Aminetzach, John R. Srouji, Chung Yin Kong and Hopi E. Hoekstra


 毒は生物学のテーマとしては腐朽ですね。
by stochinai | 2009-10-30 19:59 | 生物学 | Comments(0)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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