5号館を出て

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公開でプレゼン・ディスカッションできる場で敗退した文科省

 今日は文科省関連の事業仕分け作業があるというので気になっていたのですが、最後の2つはネット中継をみることができました。テニュアトラックやポスドク支援など若手研究者支援関係のものについては、ネット上で録音したものが配布されていたので、それをだいたい聞きました。

 今感じていることは、こうしたチャンスをもらったにもかかわらずきちんと自分たちの予算を守る論戦を張れなかった文科省は最悪だったということです。話を聞いていると、どうやら今までにも行政刷新会議と何回かやりとりがあったようで、今日もどういうことを訊かれるかはだいたい予想できていたはずです。

 それでいながら、あのていたらく

 国立大学を事実上経営している機関ですから、いわば我々の上層部にあたる方々です。我々の生殺与奪を握っている予算に関して、胸を張ってどのくらい重要なものであるかを、いわば素人の委員達を蹴散らしてもらわなければ、我々としては頼るわけにはいかないではないですか。

 まあまあまともな議論になっていたのは科学未来館館長の毛利さんだけだったと感じました。もっとも彼は獅子身中の虫を告発して会議の委員達と共犯となって、広報なんちゃらという独法内独法を壊滅させるというしたたかな作戦も持っていたようで、そういう意味では半分刷新会議側だったのかもしれません。

 それにしても、文科省があれだけなにも防衛できなかったということは、今まで彼らが提案して予算化されてきたプロジェクトのほとんどが客観的にどころか、彼ら自身ですらも自信を持って推進していたものではないということがすべて白日の下にさらされたということに思えます。

 つまり、今までの予算の決まり方は、プロジェクトの内容がきちんと評価されて、どこから見ても問題のないものが採択されていたわけではなく、まさに文科省の「思いつきプロジェクト」がさしたる審査も受けずに決まっていたものばかりで、だからこそ「素人である」刷新会議の追求にタジタジになってしまったということなのではないでしょうか。

 ということは、自民党体制のもとで決まっていたさまざまの大型プロジェクトに関しては、文科省が内容にそれほど自信を持っていたものが通ったというものばかりではなく、まさに「政治的決定」がまかり通ってきたことを示しているのではないかと感じました。

 もし、それが事実だとすると、そのおかげで実際に採択された課題よりもはるかに内容のある立派な提案の中に、不採択の憂き目を見ていたものもあったということが想像に難くありません。

 そんなことを考えていたら、だんだん腹がたってきました。

 大学が法人化された時には、法人化したい文科省が法人化を推進する自民党政権にあっさりと認めてもらったという経緯があったでしょう。もしも、あの時に今回と同じような場が設定され、刷新会議程度のメンバーに追求されたら、おそらく文科省側としては国立大学法人化案を防衛できなかったに違いありません。

 もちろん刷新会議側にも、大学や研究に関するおかしな誤解や錯誤はたくさんあったと思いますが、そんなものはいわば「素人のたわごと」ですから、文科省が自分たちのやっていることに確固たる自信を持っていたならば(たとえ結果的に政治的決断として負けることはあったとしても)、議論で負けることなど考えられないことです。

 文科省は、全国の大学・研究所の教員・研究者・ポスドク・大学院生・学生の前で腹を切ってもおわびする(坊主になるだけでもいいですが)のが、しかるべき状況ではないでしょうか。

 文科省を仕切って新しい教育研究省と、それとは独立した文化省を作ることに賛成したいと思います。

 昨日の朝見た朝焼けがなんとなく胸騒ぎを予感させたのですが、これだったのですね。
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 ため息・・・
Commented by 甘すぎ at 2009-11-13 21:18 x
予算をきられるのは文科省が悪い、なんでもかんでも文科省が悪いって、文科省に文句を言い続けても状況は改善せんよ。財務省の役人はこのエントリー見て笑うだろう。この分だと大学の運営費交付金をぶった切っても批判されるのは文科省だって。
あと、大学の法人化は臨調時代の議論から10年を経て文部省が
文科省に変わる中抗しきれなくなったという経緯があるのをお忘れなく。文部省が小手先で法人化したものではないよ。
Commented by stochinai at 2009-11-13 21:29
 では、作戦をお授けください。
Commented by OneWord at 2009-11-13 23:01 x
文科省に限らずですが、欧米のように官僚のトップ級は現場の専門知識を持った博士号取得者でないと、だめだなぁと感じました。
Commented by 甘すぎ at 2009-11-13 23:24 x
ポスドク、科研費、今後の大学運営費交付金であれ事業仕分けの誤り/不当性を指摘していくことではないでしょうか。抗議の声を上げることです。やり方はこのWebでもいいし大学人として行動して北大を動かすのもよいでしょう。八ツ場ダムの周辺住民みたいになりますが講義の声を上げないとヤバイとおもいます。たった1時間の事業仕分けで来年度以降研究費やポスドクの雇用ができなくなるかもしれないのですよ。自分も今後事業仕分けを受ける研究に絡んでいるので声を出していくつもりです。
Commented by 名無しの教員 at 2009-11-14 02:16 x
いつも興味深く読ませていただいております。

事業仕分けにおいては、私の知る限り財務省の用意する論点ペーパーなるものが存在し、まずおおよその結論ありきで、それに沿って議論が行われいるようです
東京新聞:「主計局頼みの『圧縮』 事業仕分け始まる」
ttp://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2009111202000066.html
衆議院議員山内康一のブログ:「事業仕分けに財務省の影」
ttp://yamauchi-koichi.cocolog-nifty.com/blog/2009/11/post-1d06.html
ですからいくら文部科学省の担当官が頑張っても流れは変えられなかったのではないかと思います。それも当然で、出口の削減額が国債発行額という形で決められ、「選抜された」有識者によって議論されているのだから仕方のないことではないでしょうか?

Commented by stochinai at 2009-11-14 07:10
 おそらくおっしゃるとおり結論は変えられないのかもしれませんが、もしもプロジェクトの計画に合理性があるのだったら、少なくとも「ディベートでは明らかに勝っていたのに予算は削減された」という状況に持ち込むことはできたのではないかというのが私の思ったことです。そういう状況でなければ、とても「国民を見方につけて状況をひっくり返す」などということは思いもよらないと思いました。
Commented by Mishima at 2009-11-14 09:41 x
文科省だけではないのですよ。厚労省の医療関連もひどいものでした。
ただ、これらは財務省の予算執行調査であらかじめやり玉に挙げられるのがわかっていたものでした。そのことについて7月の時点で危機感を感じた者がだれもいなかったことに問題があります。財務省のホームページをご覧ください。
Commented by stochinai at 2009-11-14 10:13
 要するに構造的問題が表出したという意味で、今回の仕分け作業にはやはり一定の評価ができると思います。

 2つ上のコメントの「見方」は「味方」の間違いです。訂正します。
Commented by 馬鹿まるこ姫 at 2009-11-14 10:36 x
次世代スーパーコンピューターなどの科学技術関連予算がが事業仕分けで見送られるようでは、夢も希望もない。
ノーベル賞受賞者が怒るのも無理は無い。
民主党の蓮舫のような科学技術に無知で、日本の将来に無関心な人物が仕分け人では、致し方ないこと。
毎年2.5兆円の税金を使う高速道路無料化は、無駄な予算であるから、事業仕分けによって廃止してもらいたい。
Commented by nw5709 at 2009-11-14 10:54
民主党と名乗ってますが・・・・、ずいぶんとちゃいますね.
その仕分けとやらに、はいそうですかと、ひっこんでしまうのですか?

“文科省を仕切って新しい教育研究省と、それとは独立した文化省を作る”には、私も賛成です.
Commented by ゑぶ at 2009-11-14 16:17 x
毛利さんをつれてきていいのなら、文科省ももっと応援団をつれてきたらいいのにと思いますね。役人は基本的に利害調整者だから、学問的なことはわかりません。昔、某国立大学の経営協議会を傍聴したことがありましたが、理事クラスの教授なら、学問のことなら言うに及ばず、経営に関しても役人以上に議論ができるなと思いました。もともと頭がいいのもあるでしょうし、プレゼンや議論にも慣れていることもあるでしょう。
Commented by miw at 2009-11-14 21:11 x
構造的に悪い部分がわかったことと、

スプリング8やスパコンをとめることはつりあいますか?

Commented by stochinai at 2009-11-14 22:14
 最終的にそうしたことに結論を下すのは納税者です。納税者の理解を得られないのなら、研究者から見てどんなに大きな価値を持つものでもやはりあきらめざるを得ないのが、この国の体制です。
 その納税者の代表として選んだ政府が決めたことに逆らいにくいのは、政府が自民党でも民主党でも同じだと思います。自民党政権下で認められていたことが、民主党政権下でひっくり返されるというのは、ある意味「当然」起こり得ることです。
 自民党政権下では、ロビー活動(陳情)によっていろいろな予算が通ったと聞いていますが、今度は政府側ではなく国民の側に働きかけて理解を得るという作戦も考えても良いのではないでしょうか。
Commented by miw at 2009-11-14 23:22 x
”世界で一番でないといけないのですか?”という質問をする時点で、
おかしいと僕はおもってます。

Commented by OneWord at 2009-11-15 05:47 x
あなたがどう思うかではなく、納税者がどう思うか(どう思わせられるか)でしょう。stochinaiさんの意見に同意です。少なくともスパコンについては、事業仕分けの場での文科省の説明には説得力がなかったですね。
Commented by OneWord at 2009-11-15 05:57 x
ノーベル賞受賞者がいかに怒っても、国民に対するきちんとしたメッセージを出せていない点で負けです。そのノーベル賞受賞者は、高学歴ワーキングプアをさらに推進しようとしている人ですから、現状分析力に難があり過ぎです。
Commented by コメントA at 2009-11-15 10:52 x
仕分けは、財務省への概算要求に対する折衝を、財務省の代わりを素人議員が行ったデモンストレーションでしょう。

概算要求を出させているから、既に結論ありきの議論で、公開の場で何か出てきたら微調整するくらいだと思う。議論で仕分け人を説き伏せても、”先に結論ありき”だから、仕分けに挙げられた案件の中で、どれを優先させるかに過ぎない。

科学技術は予算とリンクしている。アメリカのベル研は、かつては技術開発の中心だったが、AT&Tの民営化で、資金が減り仕分けをし、あっという間に地位を失った。日本国内の科学技術も同じ道を歩んでいる。

大学の独法化から始まり、もうすぐ10年。地方大学はボロボロだ。あと、10年続くと、日本の科学は韓国にも負けると思うね。それも愚民の同意なのだろう。そして、鳩山政権は、ドル中心とした経済崩壊に備えることが第一で、技術は今は2番以降で良いと安易に考えているのかもしれない。でも、一度失われた科学技術は元に戻すのは、相当大変だということが、分かっていない。蓮舫のような馬鹿もいるからね。
Commented by 通行人 at 2009-11-15 18:04 x
主さんは役所の人事をご存じない方なのかなと思いました。あなたの申請書を審査する人は、人事交流制度に基づき林野庁やサントリーから出向している人かもしれません。文部行政の重要性なんて全く理解していない人たちが、下々の者たちの運命を日々決定しているのです。
Commented by というよりも at 2009-11-15 22:07 x
仕分けでなにを落とすか、あんな短時間のプレゼンの場で決まるわけないでしょう。
ふだんから予算策定の作業でなされている事務作業を、さも自分たちの発案であるかのように民主党がパフォーマンスの場にしただけのことです。
基礎研究は大事だと騒ぐばかりで、大学の教官という絶対安全圏に護られて、自分たちの研究がどう役に立っているのかを一般に知らしめる作業を怠ってきたのですから、自業自得でしょう。
テレビに出たから、さして売れもしない本を書いたから普及になった、なんてもし思っているのなら、呆れてものも言えませんが、まさかそんなことありませんよね。
政府の支援無しでも民間や国民の寄付金を集めて最低限ないしそれ以上の研究をできるような組織や体制を自分たちでつくるか、議員にロビィ活動して政府を自分たちでコントロールするか、いいかげん考えるべきではありませんか?
予算はもともとは国民の税金です。生きるか死ぬかの生活をしている人たちからも強制的に搾り取られるし、自分の頭脳や才覚でがんばって利益をあげた人たちからはさらにむしり取られる。そんな金です。だまって口を開けていれば、天から勝手に降ってくる飴ではありませんよ。
Commented by OneWord at 2009-11-16 02:57 x
1つ前のコメントに反論です。
管理人さんの趣旨は、科学技術行政における文科省の役割ということだと思います。
Commented by 通りすがり at 2009-11-17 02:45 x
>>というよりも さんへ

自分は大学の教員ではないけど、あんたの人生よりも大学教員の方が世の中の役に立っていることは間違いない。

アメリカでも、一般市民に科学を分からせる必要は求められない。
スポンサーになりうる、多額の税金を支払う人だけが分かれば良いとされている。

つまり、あんたが余程の大金持ちでない限り、科学の重要性を理解出来ないなら、
”オマエはバカだから仕方ないね”
でアメリカではスルーだよ。

税金だとか言ってるが、あんたはいくら所得税を納付して居るんだ??所得税が年間100万以下だったら、あんた自身が社会のダニみたいに、税金をすすって生きていると認識した方がいい。
Commented by だーさん at 2009-11-26 07:01 x
>通りすがり
「スポンサーになりうる、多額の税金を支払う人」はもっと納得しないと思うぜ。
税金の値とか意味をわかっていれば効率の悪い使い方をしようとは思わない。悪いが今回の文科省の説明は「ああこいつら俺の金をおもらって自慰する気なのね」としか思えない内容だった。
Commented by 名無し at 2009-11-29 10:12 x
客観的なデータなを示すと、アメリカと比較して日本は2006年の時点で、
論文数1/3
論文引用数1/6
大学特許・ライセンス収入1/200
なんですね。

大学特許・ライセンス収入を見るに、日本の大学の研究はアメリカの研究に比べほとんど国益をもたらしていないことになります。
まず、このギャップをどう解決するか。
その上でアメリカと差がある論文のクオリティを如何にあげていくか。

これらの具体的なビジョンと政策を決め、
そのためにいくらお金が必要かを数値で示すべきでは。

こんかいの議論で我々は科学者の側から数値的根拠が全くでないことに眩暈を覚えました。仕分人に非科学的と言われてもしょうがないと思います。あのJALでさえ、お金をもらうときには改善策を出しているのに。

お金をもらうのに改善案を出さず、権力者を集めてカネだけ要求する研究者は正直世間からの支持をもらうのは絶望的だと思います。
Commented by stochinai at 2009-11-29 11:16
 客観的データを理解できる相手の時には、それを出すことによって話が早いですし、そういう場でデータを出さないということは、データがないと判断されても仕方がないと思います。逆に、市民などでデータを判断することに困難を覚える方を相手に大量で難解なデータで話を押し切ろうとすると疑念を持たれます。

 科学者や官僚などには、この「相手によって話し方を変える」というコミュニケーション・スキルの欠けている人が多いと感じられます。
Commented by ライセンス少なすぎ at 2009-11-29 23:39 x
つまり日本の場合は論文のための論文が多くて実社会に還元できていないということですか。博士が敬遠される理由もこの辺にあるのかもしれませんね。
by stochinai | 2009-11-13 21:09 | 大学・高等教育 | Comments(25)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


by stochinai