5号館を出て

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5年間削られ続けた国立大学運営費交付金でポスドク雇用

 ポスドクを大量に生み出したのが中曽根首相時代のポスドク等1万人計画だったとすると、それを救済するのも自民党(自公)政権の責任とも言えるわけですが、政権交代してしまった今となっては彼らにそれをする力はほとんど残っていません。しかし、自公政権下で国立大学が法人化されて以降、毎年1%ずつ減らされ続けた運営費交付金はどうなっているのでしょうか。

 当然、他の費目に変えられて使っているのだと思いますが、ここはひとつそれを高等教育政策費として戻してもらえませんでしょうか。

 ある資料によれば、毎年90億円ほどが削減されてきたようなので、それが5年分とするとざっと450億円です。

 この450億円を使って、あらゆる研究分野のポスドクを雇用し、研究費配分の仕事をしてもらってはどうかというのが提案です。

 かなり荒っぽい計算ですが、そのお金を使って一人年間400-500万円の給料でポスドク1万人を雇用することができるという計算にならないでしょうか。その1万人のポスドクを各国立大学法人と文科省の下にあるJSPSとJSTに分配してプロフェッショナルな科学研究費プログラムオフィサーとして働いてもらうというのは、かなり現実味のある提案だと思いますが、いかがでしょう。

 もちろん、ポスドクの多くの方々は研究をしたいと思われているでしょうが、プロとして研究費配分の仕事に携わるということは、限りなく研究の現場に近いところにいるということであるともに、世界の研究動向を勘案するという意味において広い視野を持つこともできます。

 そういう仕事を数年続けたら、今度は大学や研究所の研究者と立場を交換するのです。

 アメリカでは、大学などの研究者が1年間くらい研究の現場を離れて、NSFなどで研究費配分の仕事に携わると聞いたことがあります。
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 日本でも、大学や研究所の研究者(教員)は、何年かあるいは十何年かに1回、文科省に1年間くらい現場を離れて出向し、研究費配分の仕事に携わるとか、自分の大学あるいは研究所で研究費申請や審査に携わることを義務づけてはどうでしょう。

 このシステムを起動するために、とりあえず最初はポスドクから始めてみようというのが今回の提案です。

 いきなり、科学者コミュニティに研究費配分のための組織を作れと言っても途方に暮れるだけだと思いますので、今ある組織を改編して(できれば、JSTとJSPSを統廃合し一つの組織にして)、そこに大量のポスドクを入れるところから始めてはどうでしょう。

 我ながら悪くない案だと思いますが、現時点では単なる思いつきですので、どんどん叩いてください。同時により良い対案もお願いします。
Commented by どらごん at 2009-11-27 09:27 x
アイデアは面白いと思いますが、研究費がどのように配分され、研究室内でどのように消費されているかについてふれる機会のないポスドクにいきなり研究費の配分を文科省でやれと言うのは乱暴かと、、、。ここはやはり研究室を切り盛りしている助教、准教授が適任ではないでしょうか。そうすることでポスドクではないポストの流動化につながったらもっと良いかもしれません。
Commented by ちょっと定量的な話をすると at 2009-11-27 10:16 x
「減らされ続けた運営費交付金」と同額以上が競争的研究費へ廻っているはずなので
a. 研究費を450億円(/年?)ほど減らしてもよい
b. アカデミアへの投資を450億円(/年?)ほど増やせ
のどちらかをご主張されているということでしょうかね。
Commented by ProDoc at 2009-11-27 10:24 x
博士は一人で研究を遂行する能力を持った人材です.
研究の第一歩として,研究費の申請が必要ですので,
すべての博士(研究者)にとって研究費の流れを把握しておくことは重要です.
また,研究費を投資する側(国民や企業)の意向を把握するべきです.

もし実際の研究者からどらごんさんのような意見が出てくるのであれば,
それは自分の知的好奇心(興味)だけで研究費を申請してきた証拠です.
現在の事業仕分けで研究者が叩かれている原因の一部には,そういう側面があるのかもしれません.
Commented by stochinai at 2009-11-27 10:36
 運営費交付金が競争的研究費に回されていたのだとしたら、それを減らしてポスドク大量雇用に使っても良いと、私は思っています。結果的にそれはアカデミアへの投資と言えるかもしれませんね。
Commented by どらごん at 2009-11-27 11:09 x
ポスドクに求められる事は研究をして業績を出し、次のポジションを見つけて独立することです。ポジションによっては研究費も申請できません。アメリカと日本でポスドクの経験がありますが、ボスから予算等の詳細な内容は聞かされたこともありませんし、聞いた事はありますが、それはポスドクの仕事ではないと言われました。博士は一人で研究を遂行する能力を持った人材だとおっしゃいますが、現行の仕組みでは、学位を取ってすぐに研究室を独力で切り盛りできる人材はほとんどいません。実際に研究室を切り盛りできるようになるのは、パーマネントの職を得てからだというのが一般的だと思いますので、先のようなコメントをさせていただきました。最近の学生は企業にインターンとして研修に行くようですが、各省庁と大学も事務部門ではなく予算戦略部門の人間の人事交流を進めた方が面白いかもしれません(役人は抵抗するとは思いますが、、、)。
Commented by 通行人 at 2009-11-27 12:50 x
ポスドク後の展望は?非正規雇用の拡充はいろいろと問題がありませんか?
Commented by stochinai at 2009-11-27 14:21
 もちろん正規で雇用して、大学や国立研究所の研究者とローテートさせるというアイディアです。(実現可能性はともかく、そういうことを理想としています。)
Commented by ある at 2009-11-27 19:31 x
>運営費交付金が競争的研究費に回されていたのだと

競争的にやって、こういう配分費です(以下、参照)ので、
大きい大学のポスドクやとう経費に使われたのだと思いますが。

ttp://www.mie-u.ac.jp/blog/2008/01/post-32.html

で、ポスドク終わって就職しようとしても、地方大ポスドクなんて
雇えないし、助手だってままならないので、あふれだす理屈だと
思いますが。最近、テニュアが地方大でもバンバンやるようになって
多少は就職できないポスドクの就職先は増えた感はありますが、
あくまでも国が補助している期間だけですので、その後のケアは?
だと皆、言ってますよ。テニュア取れないとどうするんだろう?
by stochinai | 2009-11-26 21:30 | ポスドク・博士 | Comments(8)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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