5号館を出て

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カモノハシとハリモグラはどうやって有袋類の出現をやり過ごしたか

 単孔類と呼ばれる卵を産み、くちばしを持つほ乳類はオーストラリアとタスマニアに住むカモノハシと、オーストラリア、タスマニアそしてニューギニアに住むハリモグラ類しか生き残っていません。

 こちらがカモノハシです。(Wikipediaより)
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 そして、こちらがハリモグラです。(Wikipediaより)
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 Scientific American の12月号に、なぜ単孔類がまだ生き残っているのかという短い記事が載っています。
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 単孔類というのは、ほ乳類の中ではもっとも古い姿のものと言われており、単孔類がやがてオポッサムやカンガルーを含む有袋類へと進化し、さらに我々のような胎盤をもつ有胎盤類へと進化したと考えられています。

 つまり、ほ乳類は最初は単孔類しかおらず、その後に進化してきた有袋類が繁栄して、それまでいた単孔類を滅ぼしてしまったということになっています。さらに、オーストラリア以外では、有袋類は有胎盤類にほとんど滅ぼされてしまったというわけです。

 私はなんとなく、オーストラリア区には有胎盤類が侵入しなかったので、単孔類も生き残ることができたのではないかと考えていたのですが、この解説によると単孔類は5400万年前から7100万年前にオーストラリア区に侵入してきた有袋類にほとんどが滅ぼされたのですが、カモノハシの先祖だけは有袋類の苦手な水中へ逃れることによって、絶滅を免れたという話になっています。過去の研究では、カモノハシとハリモグラは1億1250万年よりも前に分岐していることになっており、有袋類の侵入前ということになります。しかしそれでは、陸上性のハリモグラが生き残った理由が謎のままです。

 ところがPNASの10月6日号に掲載された論文によれば、現存のハリモグラとカモノハシが分岐したのは、4800万年前から1900年前と、有袋類がオーストラリアに侵入した遙かに後だという結果になりました。とすると、現在は陸生のハリモグラの先祖がカモノハシと分岐する前は、やはり現存のカモノハシ同様水の中で生活していたのではないかということが推測され、有袋類に滅ぼされずに今日まで生き延びた理由が納得できるということになります。

 Molecules, morphology, and ecology indicate a recent, amphibious ancestry for echidnas

doi: 10.1073/pnas.0904649106 PNAS October 6, 2009 vol. 106 no. 40 17089-17094


 しかし、現在までのところ、ハリモグラが水棲から陸棲へと変化した様子を示す化石が見つかっておらず、この説も確定的ではないのですが、研究者達は2500万年前から2000万年前の地層を調べると、カモノハシのような形の水棲ハリモグラの先祖の化石が見つかることを確信しているようです。

 もちろん、そうした化石が発見されたらすごいことなのですが、それよりなによりまさしく「生きた化石」と呼ぶにふさわしい、卵を産むほ乳類が現在まで生き残って、我々人類と出会えたことに感謝したい気持ちです。

 卵を産む「は虫類」から卵を産む「ほ乳類」への進化の過程も、今ひとつはっきりとは示されていませんので、今後はそこらあたりの研究成果も期待したいところです。

#もちろん、そのようなことがわかっても経済にはほとんど貢献しないとは思われますが、こうした研究こそが「科学の醍醐味」のひとつであることをわかってもらうことは、それほど難しくないと私は思っています。こういう研究に接すると、科学の意義を語ることって、そんなに難しいことではないと、いつも思います。
Commented by black at 2009-12-13 08:33 x
ハリモグラ 懐かしい オーストラリアに住んでいる時に、よくドライブしてそこらの草むらに居ました。オポッサム?ポッサムと言ってましたが、あれが結構、夜にうるさいし不気味な鳴き声でした。
Commented by stochinai at 2009-12-14 11:46
 そんなに、たくさんいるんですね。一度、野生で見てみたいものです。
Commented by みい at 2012-05-27 08:11 x
ハリネズミが単孔類だって初めて知りました。だって、普通に有胎盤類に見えるじゃないですか。袋は隠れて持っている可能性もあるから、有袋類と言われても、そんなに驚かないけれど。

私は恐竜絶滅直後の巨大ほ乳類が好きです。恐竜より。昨日見たテレビではオーストラリアでもやはりコアラや袋ライオン等巨大化していたようで。

あと、恐竜時代から居た、ネズミ系の動物が最初のほ乳類と思って居ましたが、最初の有胎盤類って事なんですけね?

現在一番恐竜に近いとされる、鳥類、鳥類もは虫類もほ乳類も最初は卵を産む動物だったんですね。

進化は面白い。

でも、有胎盤類の方が、進化した状態のほ乳類とは言え、有袋類と良く似ているし、何故、隔離されなければ滅びてしまう程に、弱いというか生存競争に勝てなかったのか疑問です。
Commented by stochinai at 2012-05-27 09:10
みいさん、コメントありがとうございました。
 よく間違えられるのですが、ペットショップなどでよく見る「ハリネズミ」は普通の有胎盤類哺乳類で、ここに出てくる単孔類のものは「ハリモグラ」です。「くちばし」で見分けられますので、注意してみてください、と言ってもハリモグラはペットショップにはいないと思いますが。
 有胎盤類は子育てが難しいので、敵が多い環境だと生き残るのが難しいのだと考えられています。(とはいっても、生き残っているものもいるわけですから、他にも理由はあるのでしょうね。)
Commented by at 2013-07-15 23:07 x
ハリネズミは単孔類ではない。みいさんちゃんと勉強しなさい。ハリネズミは有胎盤類(普通の哺乳類)だから。単孔類といえばハリモグラでしょ。単孔類が今日まで生き残れたのも有胎盤類や彼らの天敵などがいなかったのでは。
by stochinai | 2009-12-11 20:48 | 生物学 | Comments(5)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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