2009年 12月 20日
セブンイレブンの罠
献本お礼 > 株式会社 金曜日 殿
セブンイレブンの罠(渡辺仁 著/金曜日 刊)
もともと私は「週間金曜日」の定期購読者で、この本の内容の一部になった連載は読んでおりましたので、これを読んで初めて知ったことから大きな衝撃を受けたというようなことはあまりなかったのですが、それにしてもどこの街に行ってもちょっと歩けばコンビニが見つかるというほどコンビニだらけになってしまったこの国で、コンビニをめぐるこれほど深刻な事態が生じていたという事実に出会い、改めて考えさせられてしまいました。
これはセブンイレブンという特定のフランチャイズ・チェーンに対するルポルタージュですが、おそらく他のコンビニエンス・ストアでも大同小異似たり寄ったりのことが起こっているのではないかと想像させられました。
Wikipediaによれば「コンビニエンスストア (convenience store) とは、年中無休で長時間の営業を行い、小規模な店舗において主に食料品、日用雑貨など多数の品種を扱う形態の小売店である」ということになっていますが、昔からあったいわゆる街角の小売店はコンビニの登場によって、ほぼ根絶やしにされてしまったと言える状況ではないでしょうか。私が子どもの頃には、街には市場や小売店がたくさんあり、家族経営されていたそれぞれの店では、閉店後でも裏口からお願いするといつでもなんでも売ってくれるというように、十分にコンビニエントでした。また、それほど裕福ではなかったのかもしれませんが、それぞれの店のご主人が「一国一城の主」ということで、宮仕えの人々を尻目に、ある種の「自由人」としての生き方を謳歌していたようにも記憶しています。
それが、1970年代頃からのコンビニエンスストアとスーパーマーケットの登場で、街角の小売店と市場は次々と姿を消していきました。この本を読んでみると、酒屋などの小売店がコンビニのフランチャイズに衣替えしていったケースも多かったようで、確かに酒屋さんの後に酒を扱うコンビニができたという例は多かったように思います。
コンビニは、我々利用者からすると、営業時間が非常に長いということと、利用者のニーズを良く考えられた品揃えがされていること、スーパーほど安くはないけれども、昔の小売店のような定価販売よりはちょっとは安い感じの値付けがされているというようなことで、確かにコンビニエントな店だと思います。また、大手のフランチャイズが多いということで、大きなバックがあることによる品揃えの良さと、品質の維持、品切れの少なさ、どこの街のどこの店でも同じものが手に入るなどという安心感があります。
逆に、このような営業形態が出てきてしまうと、昔ながらの小売店はとても競争になりませんので、廃業するかフランチャイズの軍門に下るかしかないということもわかります。さらに、ある程度の自己資金を持っていれば、土地や店を持っていなくともセブンイレブン本部が貸してくれることで出店できるということもあっって、もう人にこき使われるのはこりごりという脱サラ組などを惹きつけるには十分な「魅力」があった(まだある?)のだと思います。
しかし、消費者にもコンビニエントで本社も大増益を続けているということは、冷静に考えてみればこの本に書かれているように、各フランチャイズ店に過酷な負担がかかっているということの裏返しであり、なぜにこれほどまでにセブンイレブン本社の業績が上がっているのかという件に関して、この本を読むと目からウロコが落ちます。
つまり、セブンイレブン本社は我々消費者もさることながら、フランチャイズ経営者を最大の「顧客」あるいは「収入源」としている業務形態をとっているということなのです。最近、あちこちでセブンイレブン関連の訴訟が頻発していますが、ある民事裁判の原告はこのように語ります。
夏頃にマスコミで報道された、売れ残りの弁当などを安売り販売することを本社が禁止しているというような程度のことをセブンイレブン問題と考えていた私は、一連のルポを読み、そして改めてこの本を通読してみて、脱サラして独立して一国一城の主になれるコンビニの店主もひょっとしたらイイかも?などと思っていた自分の考えの甘さにはちょっと背筋が寒くなりました。
この本を読むと、まさに渡る世間は敵だらけという感になります。フランチャイズというのは、決して独立して商売をするなどという業務形態ではなく、ネズミ講のような収奪システムにすぎないと思わされる恐怖の書とも言えるかもしれません。
脱サラして、小売店を廃業して、あるいは親の遺産をつぎこんで、コンビニのフランチャイズになろうと思っている方は、まずこの本を詠んで再考してみることをおすすめします。
もともと私は「週間金曜日」の定期購読者で、この本の内容の一部になった連載は読んでおりましたので、これを読んで初めて知ったことから大きな衝撃を受けたというようなことはあまりなかったのですが、それにしてもどこの街に行ってもちょっと歩けばコンビニが見つかるというほどコンビニだらけになってしまったこの国で、コンビニをめぐるこれほど深刻な事態が生じていたという事実に出会い、改めて考えさせられてしまいました。
これはセブンイレブンという特定のフランチャイズ・チェーンに対するルポルタージュですが、おそらく他のコンビニエンス・ストアでも大同小異似たり寄ったりのことが起こっているのではないかと想像させられました。
Wikipediaによれば「コンビニエンスストア (convenience store) とは、年中無休で長時間の営業を行い、小規模な店舗において主に食料品、日用雑貨など多数の品種を扱う形態の小売店である」ということになっていますが、昔からあったいわゆる街角の小売店はコンビニの登場によって、ほぼ根絶やしにされてしまったと言える状況ではないでしょうか。私が子どもの頃には、街には市場や小売店がたくさんあり、家族経営されていたそれぞれの店では、閉店後でも裏口からお願いするといつでもなんでも売ってくれるというように、十分にコンビニエントでした。また、それほど裕福ではなかったのかもしれませんが、それぞれの店のご主人が「一国一城の主」ということで、宮仕えの人々を尻目に、ある種の「自由人」としての生き方を謳歌していたようにも記憶しています。
それが、1970年代頃からのコンビニエンスストアとスーパーマーケットの登場で、街角の小売店と市場は次々と姿を消していきました。この本を読んでみると、酒屋などの小売店がコンビニのフランチャイズに衣替えしていったケースも多かったようで、確かに酒屋さんの後に酒を扱うコンビニができたという例は多かったように思います。
コンビニは、我々利用者からすると、営業時間が非常に長いということと、利用者のニーズを良く考えられた品揃えがされていること、スーパーほど安くはないけれども、昔の小売店のような定価販売よりはちょっとは安い感じの値付けがされているというようなことで、確かにコンビニエントな店だと思います。また、大手のフランチャイズが多いということで、大きなバックがあることによる品揃えの良さと、品質の維持、品切れの少なさ、どこの街のどこの店でも同じものが手に入るなどという安心感があります。
逆に、このような営業形態が出てきてしまうと、昔ながらの小売店はとても競争になりませんので、廃業するかフランチャイズの軍門に下るかしかないということもわかります。さらに、ある程度の自己資金を持っていれば、土地や店を持っていなくともセブンイレブン本部が貸してくれることで出店できるということもあっって、もう人にこき使われるのはこりごりという脱サラ組などを惹きつけるには十分な「魅力」があった(まだある?)のだと思います。
しかし、消費者にもコンビニエントで本社も大増益を続けているということは、冷静に考えてみればこの本に書かれているように、各フランチャイズ店に過酷な負担がかかっているということの裏返しであり、なぜにこれほどまでにセブンイレブン本社の業績が上がっているのかという件に関して、この本を読むと目からウロコが落ちます。
つまり、セブンイレブン本社は我々消費者もさることながら、フランチャイズ経営者を最大の「顧客」あるいは「収入源」としている業務形態をとっているということなのです。最近、あちこちでセブンイレブン関連の訴訟が頻発していますが、ある民事裁判の原告はこのように語ります。
数年たっても利益が出ず、赤字が続き貯金を切り崩し、国民年金保険料も払えない窮乏生活に追い詰められていた。セブンーイレブン本部は、毎年、大儲けの決算を発表するが加盟店オーナーは一向に儲からない。夫婦で年中働いても彫金がなくなり、借金生活になってしまった。こうした、ケースが次から次へと提示され、その原因がセブンイレブンが取っている、特殊な会計方式と出店ポリシーであることが示されています。
夏頃にマスコミで報道された、売れ残りの弁当などを安売り販売することを本社が禁止しているというような程度のことをセブンイレブン問題と考えていた私は、一連のルポを読み、そして改めてこの本を通読してみて、脱サラして独立して一国一城の主になれるコンビニの店主もひょっとしたらイイかも?などと思っていた自分の考えの甘さにはちょっと背筋が寒くなりました。
この本を読むと、まさに渡る世間は敵だらけという感になります。フランチャイズというのは、決して独立して商売をするなどという業務形態ではなく、ネズミ講のような収奪システムにすぎないと思わされる恐怖の書とも言えるかもしれません。
脱サラして、小売店を廃業して、あるいは親の遺産をつぎこんで、コンビニのフランチャイズになろうと思っている方は、まずこの本を詠んで再考してみることをおすすめします。
by stochinai
| 2009-12-20 23:59
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