5号館を出て

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リテラシーが多すぎる

 そらのさんは今朝の初詣ダダ漏れから今年度の活動を開始しました。先程からはMIAU新春特別対談 「どーなる!?2010年のネット界」がダダ漏れされています。これは、ニコニコ動画との合同同時放送ということのようですが、前半の時には楽屋カメラもUstreamされていて、(画像はかなり汚かったのですが)そらのさんとニコニコ動画のカメラマンを撮すという、革命的なダダ漏れも行われました。

 これは、先日行った我々の忘年会ダダ漏れと基本的に異なるものではなく、レベルは違いますが酒を飲みながらの宴会での放談を流しっぱなしにしたものと言っても良いものですが、お正月らしい乱れ方でそれなりにおもしろいものでした。この対談の中でも、リテラシーという言葉がなんどか出てきました。

 昨年末に参加した「科学技術と人間」研究総括領域全体会議合宿でも、リテラシーという言葉が何度も何度も出てきて、正直言って「リテラシーはもうたくさん」という感想を持っている今日この頃の私です。

 とは言え、私もついつい便利なので日常会話において頭に特定の単語をつけてこの「リテラシー」という言葉を良く使ってしまいます。どんな言葉にでもリテラシーを付けさえすれば、「それっぽく」なるところが魔力です。

 情報リテラシー
 コンピューターリテラシー
 民主主義リテラシー
 (インター)ネットリテラシー
 携帯リテラシー
 コミュニケーションリテラシー
 メディアリテラシー
 検索リテラシー
 科学リテラシー
 消費リテラシー
 学術情報リテラシー
 医療リテラシー
 セキュリティリテラシー
 グローバルリテラシー
 起業リテラシー
 図書館情報リテラシー
 旅行リテラシー
 健康リテラシー・ヘルスリテラシー
 リスクリテラシー
 ITリテラシー
 ICTリテラシー
 数学的リテラシー
 文学リテラシー
 投資リテラシー
 金融リテラシー
 経済リテラシー
 科学技術リテラシー
 技術リテラシー
 研究者リテラシー
 サイバーリテラシー
 データ(解析)リテラシー
 知財リテラシー
 外国語リテラシー
 法務リテラシー
 経営リテラシー
 交渉リテラシー
 日本語リテラシー
 ゲノムリテラシー
 数理リテラシー
 災害リテラシー
 新聞リテラシー
 環境リテラシー
 電気リテラシー
 外国語リテラシー
 デジタルリテラシー

 思いつくまま上げたものと、ネットでちょっとだけ探してみたものを書き連ねただけで、たちまちこれくらいの「リテラシー」が集まりました。中には怪しげなものもあり、探せばまだまだいくらでもありそうなのですが、根が尽きました。

 リテラシーというのは「常識的教養」というようなニュアンスで、知的社会人ならば当然身につけていることが期待されるものというくらいの意味だと思うのですが、こうして挙げてみると今の時代にはあまりにも身につけることが期待される「リテラシー」が氾濫していることがわかります。

 そこで先日の合宿の時にも悲鳴のように、「私は、そしておそらく多くの人も、こんなにたくさんのリテラシーを要求されて、それに応えることなどもとても無理です。すべてのリテラシーが『各論』とするならば、『基礎』あるいは『概論』的なリテラシーを与えてくれないでしょうか」と叫んでしまいました。ここ数年、あらゆる分野から「普通の人々」に対して出された「リテラシーを持て」という要求が、ここまで来ていかに途方もないことかが良く分かると思います。

 というわけで、今年は最初から「基礎リテラシーとはなにか」という大きな問題を抱えることになっています。難問ではありますが、この「基礎リテラシー」というものが確立できたら、上にあるような有象無象のリテラシー各論などは蹴散らして、「これだけ押さえておけばOK」ということになるかもしれません。

 「この15か条だけであらゆるリテラシーが押さえられる」というような新書が書けそうですね(笑)。
Commented by ym-wk at 2010-01-05 16:31 x
あまり確かな根拠はないのですが、自然科学に関係する「基礎リテラシー」は、ほとんどが中学校の理科に行き着くのではないか、と思いました。他の多くの分野のリテラシーも中学校の教科内容が中心になるように思えています。
「この15か条だけであらゆるリテラシーが押さえられる」
是非、書いてみてください。自分の考えがどの程度正しいか、確かめられるのを楽しみにしています。
Commented by stochinai at 2010-01-05 18:08
 口から出まかせ、言ってみただけですので勘弁してください(^^;)。

 冗談はさておき、おっしゃるようにリテラシーというものを考えていくと義務教育に行き着くという説は、なるほどと思いました。あまりにもどこへでもリテラシーが出てくるということは、日本の義務教育があまり機能していないということなのかもしれませんね。
Commented by ゑぶ at 2010-01-06 00:52 x
リテラシーと同じく、義務教育段階で、有識者からよく提唱される「○○教育」も数が多すぎて、勘弁してほしいという気持ちになります。
環境教育、金融教育、メディア教育、法教育、コミュニケーション教育、知的財産教育、男女共同参画教育、…、ひとつひとつの○○教育について、どれも重要であることに異論はないのですが、こういう○○教育があまりに多すぎて、これを現場で全部子ども達に教えようとしたら、子ども達の頭がパンクするんじゃないかと思います。
Commented by stochinai at 2010-01-06 07:38
 おっしゃるとおりだと思います。いずれも、リテラシーを持たなければならない側や教育を受ける側の都合などおかまいなしに、「かくあるべし」と思う側がてんでんばらばらに勝手なことを言っている結果ですね。
Commented by sivad at 2010-01-06 14:44 x
新年おめでとうございます。リンクのような記事を以前書きましたが、確かにリテラシーのためのメタリテラシーが必要な状況になりつつあるようですね。
Commented by stochinai at 2010-01-06 15:09
 sivadさん、今年もよろしくお願いします。

 すっかり忘れていましたが、件の記事を読んだ記憶はありました。この記事を書くにあたっての潜在知識にもなっていたように思えます。ご指摘ありがとうございます。

 それはさておき、「リテラシーがない」とか「リテラシーを持て」とか言われる度に、「普通の人々」がどんどん逃げていくのではないかと感じる今日この頃、リテラシーという「葵の御紋のついた印籠」はそろそろ退場させないとダメですね。
Commented by あすてろいど at 2010-01-07 13:04 x
ギリギリ・・・
新年おめでとうございます。

逃げていくと言えば、
「社会リテラシー」なんて言うと、「専門家・研究者・科学者」ら諸氏はひいていっちゃいますよね。実際のところ。

今年はイヤでもリテラシーにつきまとわれそうですね。
Commented by stochinai at 2010-01-07 13:13
 今年もよろしくお願いします。

 すべてのリテラシーを身に付けたスーパーパーソンなどは存在しえない。まずは、リテラシーがなくても大丈夫ですよ、というところから始めるということでしょうか。
Commented by んー at 2010-01-07 13:30 x
小中学校や地域の自治会などで標語をつくって立看板にしてあるのをよく見かけますが、その言葉自身は大事なことを言っているようでいて、多すぎて実は誰も覚えてないといった状態に似ていると思います。
また、その言葉自体が大事なことは気づけるのですが、では具体的に自分に置き換えた場合どうなのかもわからないことも多いです。
多くの事柄がそうなんですが、すべてのベースである単純な原則をじっくり考える機会がなく、紹介に終わってしまい、各自の判断に丸投げになってしまうことが原因かなと思ったりもします。
Commented by stochinai at 2010-01-07 14:57
 言葉の魔術に囚われてしまった私たちという感じですね。
by stochinai | 2010-01-04 21:32 | 教育 | Comments(10)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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