5号館を出て

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姫のお城で

 今日は昨日ご紹介したシンポジウム「日本の科学技術コミュニケーションのこれから」が、なんとM姫のお城で開催されました。
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 これはシンポジウムの後に行われた懇親会の後に撮った、雪景色の中に浮かび上がる姫のお城の情景なのですが、諸々の事情があってとんでもない低解像度の写真しか使えない状況になってしまいました。しかし、そのぼやけた感じが幻想的雰囲気を増強しながら醸し出していて、いかにも姫の居城(魔女の居城か)という感じがするのもまた事実なのでありました。

 まあ、この手の会にはつきものの時間が足りなくなるという状況との戦いの一日ではありましたが、Ustreamでダダ漏れしながらtwitterで雑談する全国の皆さんと一緒にシンポジウムに参加するという形式も新鮮で、インスピレーションを刺激される創造的な一日を過ごすことができました。

 小出さんの横綱相撲のようなオーソドックスなお話もそれなりにおもしろかったのですが、ニュージーランドの大学で大学院生に科学コミュニケーションを教えていらっしゃるSpencer Davis LLOYDさんと、今目の前で起こりつつある科学技術コミュニケーションのうねりの本質を捉えようともがいていらっしゃる石村さんの話には、たくさんの刺激をいただき、こちらの頭の中が整理されて、たいへんに有意義な一日になったことを感謝したいと思います。

 Lloydさんは、科学コミュニケーションは研究したり解析したりしていてもラチがあかないもので、しょせん実行してなんぼのものよというふうに聞こえるお話をいただき、ある意味で非常に挑発的ではありましたが、「そうだよね」と思わされるものが多い講演でした。話の合間に、通訳の方をからかうフレーズが飛び出すのも、コミュニケーターとしての優秀さを感じさせられるものでした。

 そして、何度も強調されていた「ストーリーテリング」こそが、科学コミュニケーションの中でもっとも重要であるという論点は、私も常日頃思っていたことなので、うなずきっぱなしでした。

 もう一つ、確かにネット上ではずいぶん前から噂になっていたことなのですが、Appleが新しいタブレットマシンで、iTabletという名前になるかもしれない新機種が、来週の水曜日に発表されると、彼が何度も言っていたことが、強く印象に残っています。ほんとうなんでしょうかね。まあ、そのことだけでも、彼が「ネットおたく」であることがとても良くわかるのですが、彼はこのマシンこそが科学コミュニケーションの展開に大きな役割を果たすだろうと期待をしていることは、そうかもしれないとおもいつつも科学コミュニケーションだけじゃなくて、あらゆるコミュニケーションのあり方を変える革命になるんじゃないかというのが、私の感想です。

 そして、石村さんはいつも難しい言葉を使う人なのですが、最近は科学コミュニケーションに「生物学用語」を多く導入していることが気になっています。今回は「コミュニケーション生態系」の中で科学技術コミュニケーションが「適応」していく過程に注目しているというようなことを言っていたのが記憶に残りました。

 石村さんの話の中で、もはや政府やメディアが科学コミュニケーションをコントロールできる時代は終わったというようなことを言っていましたが、科学コミュニケーションだけではなく、すべてのコミュニケーションが政治勢力や大手メディアにコントロールされる時代が終わっているのだということですよね。

 科学コミュニケーションは新しく意識され始めたコミュニケーションですが、メディアのありようがマスからミニあるいはミクロ・ナノへと分解されつつある今、科学コミュニケーションが立ち上がったということは、そのうねりの中で新しいコミュニケーションのあり方の見本として、すべてのコミュニケーションをリードする存在になりうるのではないかという、科学コミュニケーションにとって「今はピンチではなくチャンスなのだ」ということを認識させてもらったのは、今日の大きな収穫だったように思います。

 今日、集まっておられた方は、科学コミュニケーションやリスクコミュニケーション、科学技術社会論などといった議論の場には必ずといっていいほど集まってこられる人が多かったようにも思われますが、日本全体でも、さらには世界全体でもまだまだ小さな科学コミュニケーションという領域が、世界のコミュニケーションのありよう全体を考え直し、さらにはその将来のフレームワークをリードしながら提示するというようなことになるのかもしれないと考えると、少々背筋がぞくぞくするほど「歴史の転換」に立ち会っているような気分になったりするのも不思議です。

 明日もこんな調子で、いろいろな刺激を受けられることを期待しております。
by stochinai | 2010-01-23 23:56 | コミュニケーション | Comments(0)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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