2010年 02月 18日
我々はオリンピック選手に何を期待しているのか
今朝、時間的にタイミングがあったのでたまたまオリンピックのスノーボードの予選を見ることができ、騒ぎになったあの国母選手の滑りを見ることができました。2回とも安定した滑りで余裕が感じられ、この調子ならばメダルにも手が届く可能性があるのかもしれないと、なんとなく安心した気持ちになりました。
スノーボードというものは、若者の遊びだったスケートボードが雪の上に進出したものでしょうから、他の伝統的スポーツとは違って、バイクやスポーツカーのような遊びにも通じる若者文化そのもののように思われます。オリンピックの会場でも、プロのスケボー・イベントのように大きなモニターで選手の映像を流したり、滑っている時にも大音量で音楽を流し続けているという様子を見ていて、さらにその感を強くしました。
(CC)wikipedia
スノーボードがそういう種目であるということを考えると、先日来ニュースになっている「服装の乱れ問題」というのは日本人以外には理解できないきわめて日本的な事情に思えてなりませんでした。
髪を伸ばしたりドレッドにしたり、ヒップホップ風の服装や言動をしたりといったことのすべてがスノーボードというカルチャーの一環なのだとしたら、そういう文化に対して「服装が乱れている」という指摘はあまりにも的外れなものではないかという気がします。
朝青龍をめぐって相撲の世界が「品格」論争をしていた時には、相撲という伝統文化の中で横綱にある種の「品格」が要求されるということが理解できなくはありませんでした。しかし、その場合は日本相撲協会が行うべき、外国人という異文化を持つ人間を相撲文化の中に入れるための教育義務があるはずで、それを怠った相撲協会にも大いに責任があったと思います。
一方、今回のスノーボードの場合には日本の「体育関係者」が、もともとスノーボードが持っていたカルチャーを無視して、古典的スポーツと同じ「品格」や「規律」を求めるという勘違いが原因になっているような気がしてなりません。さらに、そうした冷静な視点を持って報道したマス・メディアがほとんどなかったことにも大いに失望しました(といっても、最初から期待はしていませんでしたが)。
そんなピンボケな周りの対応に負けることなく、自分を貫き通して世界第8位という堂々たる成績を上げた国母選手の根性に対して、私は心からの賞賛を送りたいと思います。もちろん、叩かれなかった青野選手の9位もすごいものだと思います。
国母選手はこんな逆境の中でも負けずに、おそらく持っている実力をほぼ出せたのだと思いますが、もしも日本が一丸となって彼の応援していたならば、ひょっとすると彼は気持ち良くなって実力以上の成績を残せた可能性もあったのではないかと思えてなりません。彼のインタビューを見ていると、なんとなくそんな人の良さを感じさせられました。そう思うと、試合とは関係のないところでバッシングして彼の気分を害したことは、まったく誰のためにもならなかったのではないかと、本当に残念に思われます。
たとえ試合に負けてもいいからお行儀の良い坊ちゃん嬢ちゃんをオリンピックに送り出したいというのが、我々の希望というわけではないですよね。
スノーボードというものは、若者の遊びだったスケートボードが雪の上に進出したものでしょうから、他の伝統的スポーツとは違って、バイクやスポーツカーのような遊びにも通じる若者文化そのもののように思われます。オリンピックの会場でも、プロのスケボー・イベントのように大きなモニターで選手の映像を流したり、滑っている時にも大音量で音楽を流し続けているという様子を見ていて、さらにその感を強くしました。
スノーボードがそういう種目であるということを考えると、先日来ニュースになっている「服装の乱れ問題」というのは日本人以外には理解できないきわめて日本的な事情に思えてなりませんでした。
髪を伸ばしたりドレッドにしたり、ヒップホップ風の服装や言動をしたりといったことのすべてがスノーボードというカルチャーの一環なのだとしたら、そういう文化に対して「服装が乱れている」という指摘はあまりにも的外れなものではないかという気がします。
朝青龍をめぐって相撲の世界が「品格」論争をしていた時には、相撲という伝統文化の中で横綱にある種の「品格」が要求されるということが理解できなくはありませんでした。しかし、その場合は日本相撲協会が行うべき、外国人という異文化を持つ人間を相撲文化の中に入れるための教育義務があるはずで、それを怠った相撲協会にも大いに責任があったと思います。
一方、今回のスノーボードの場合には日本の「体育関係者」が、もともとスノーボードが持っていたカルチャーを無視して、古典的スポーツと同じ「品格」や「規律」を求めるという勘違いが原因になっているような気がしてなりません。さらに、そうした冷静な視点を持って報道したマス・メディアがほとんどなかったことにも大いに失望しました(といっても、最初から期待はしていませんでしたが)。
そんなピンボケな周りの対応に負けることなく、自分を貫き通して世界第8位という堂々たる成績を上げた国母選手の根性に対して、私は心からの賞賛を送りたいと思います。もちろん、叩かれなかった青野選手の9位もすごいものだと思います。
国母選手はこんな逆境の中でも負けずに、おそらく持っている実力をほぼ出せたのだと思いますが、もしも日本が一丸となって彼の応援していたならば、ひょっとすると彼は気持ち良くなって実力以上の成績を残せた可能性もあったのではないかと思えてなりません。彼のインタビューを見ていると、なんとなくそんな人の良さを感じさせられました。そう思うと、試合とは関係のないところでバッシングして彼の気分を害したことは、まったく誰のためにもならなかったのではないかと、本当に残念に思われます。
たとえ試合に負けてもいいからお行儀の良い坊ちゃん嬢ちゃんをオリンピックに送り出したいというのが、我々の希望というわけではないですよね。
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耕太郎
at 2010-02-19 03:27
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私もハープパイプを予選から決勝まで見ていました。私も先生のご意見に全く同感です。國母選手の演技は大変すばらしかったです。予選では42点台を出しており,メダルを期待せずにはいられませんでした。決勝では惜しくも着地でバランスを崩してしまいましたが,顔から血を出しながらも最高の滑りを見せてくれたことに感動した次第です。8位入賞という成績も日本勢の中ではトップであり,トリノから大きく飛躍したこともすばらしいとしか言いようがありません。手前勝手ですが,4年後が楽しみになってきました。長々とすみません。
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ぢゅにあ
at 2010-02-19 04:05
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時差がないにもかかわらず、見逃してしまいました。
国母選手、私も応援していたのでよい滑りができたと聞いてうれしいです。
ところで、服装問題、スノボをサブカルとして捉える見方もあるでしょうが河野太郎氏のブログでルールと価値観をはき違えるなと言う話があり、そういうことだったのかとすごくすっきりしました。
国母選手、私も応援していたのでよい滑りができたと聞いてうれしいです。
ところで、服装問題、スノボをサブカルとして捉える見方もあるでしょうが河野太郎氏のブログでルールと価値観をはき違えるなと言う話があり、そういうことだったのかとすごくすっきりしました。
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まあね
at 2010-02-19 09:22
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スノボがひとつのカルチャーならオリンピックもひとつのカルチャーなんでね。日本以外の選手をみてもきっちりしてるでしょう?
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天下一品
at 2010-02-19 22:42
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stochinai at 2010-02-19 23:10
嫌な感じと言えば、腰パンだって舌打ちだって嫌な感じではあります。でも髪を染めていたり、ピアスを見ても、最初は嫌な感じがしました。入れ墨は今でも嫌な感じがしますけれども、それだって若い人の間ではタトゥーとか言っておしゃれになりつつあります。若者が使う「むかつく」という言葉もしばらくは聞く度に嫌な気持ちになりましたが、最近ようやく慣れてきました。私にとっては、今回の大騒ぎの原因が「その程度」のものにしか思われないのです。
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AsuY
at 2010-02-20 00:17
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それは違うと思います。
国母選手,横綱朝青龍が認められてしまったら
強ければ何しても良い,という概念でこの国が占められ、今後の
どうなることでしょうか。
皆さん勘違いしているようですが
アメリカをはじめとする欧米諸国の方が
見た目に気を使いますよ。それは、人に注目される立場の方の方が特にそうです。
教育者として無責任な発言は控えて欲しいと存じます。
国母選手,横綱朝青龍が認められてしまったら
強ければ何しても良い,という概念でこの国が占められ、今後の
どうなることでしょうか。
皆さん勘違いしているようですが
アメリカをはじめとする欧米諸国の方が
見た目に気を使いますよ。それは、人に注目される立場の方の方が特にそうです。
教育者として無責任な発言は控えて欲しいと存じます。
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stochinai at 2010-02-20 01:16
ははは、「教育者」とくくられても困るのですが、私が「教育」しているのは立派な判断力があると想定される、大学生・大学院生以上ですので、そこのところはよろしく。
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AsuY
at 2010-02-20 21:59
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ははは
at 2010-02-20 22:13
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タイガー・ウッズもちゃんと謝罪してますよね。誰とつきあおうがゴルフとは直接関係ないのに。
by stochinai
| 2010-02-18 23:59
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Comments(9)