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ウニの発生

 なんとも懐かしいものに出会いました。高校生物の教科書で発生の項でカエルの発生と並んで、必ず出てくるウニの発生が新しい論文として出てくるとは思ってもいませんでした。

Vellutini BC, Migotto AE (2010) Embryonic, Larval, and Juvenile Development of the Sea Biscuit Clypeaster subdepressus (Echinodermata: Clypeasteroida). PLoS ONE 5(3): e9654. doi:10.1371/journal.pone.0009654

 PLoS ONEですから、もちろんオープンアクセスです。

 学名が Clypeaster subdepressus というのは、日本ではタコノマクラと呼ばれているカシパンの仲間です。タコノマクラもウニやヒトデ、ナマコなどとともに棘皮動物と呼ばれるグループに属しているので、いずれの動物の発生の様子は良く似ています。こちらが、材料になったタコノマクラです。
ウニの発生_c0025115_02632.jpg
 ちなみにタコノマクラやカシパンといったおもしろい名前の由来については、慶應義塾大学日吉紀要. 自然科学 No.39 (2006. ) ,p.53- 79に「タコノマクラ考 : ウニやヒトデの古名」というタイトルの論文があり、これも慶應の機関リポジトリで全文が公開されています。

 その受精から小さな成体へと発生する様子を観察しただけの論文で、特に目新しい発見があるわけでもなく淡々と記載してあるだけなので、電子ジャーナルの時代になって紙面の物理的制約がなくなったことも、こうした論文が発表される理由の一つのような気がします。研究費の欄を見てみると、「修士奨学金」と書いてあるので、修士論文なのかもしれません。

 中を見ると、生物系の大学を出た人ならば、なんとも懐かしい気持ちになる「ウニの発生」写真のオンパレードです。

 まずは、卵の中にある卵核(白)と侵入した精子からできた精核の融合です。
ウニの発生_c0025115_09421.jpg
 このモンタージュ写真のもとになったムービーが添付されているのも、電子ジャーナルならではです。ちょっと重たいですが、こちらに精子が卵に侵入して受精膜が上がるところから、核が融合し、卵割がはじまるところの動画があります。

Elevation of the fertilization membrane after sperm entry, pronuclei migration, and initial clevages (5.36 MB AVI)

 ここからの写真を懐かしいと思う人が多いのではないでしょうか。まずは、初期卵割4細胞期まで。
ウニの発生_c0025115_0143359.jpg
 ついで大割球・中割球・小割球へと不当分裂する16細胞期と32細胞期。
ウニの発生_c0025115_0154266.jpg
 さらに胞胚から嚢胚形成(原腸形成)期。
ウニの発生_c0025115_0175894.jpg
 ここらあたりまでは、実際に顕微鏡で見たことのある人が多いと思います。本当に懐かしい感じです。

 さらに発生が進んでプルテウス幼生。
ウニの発生_c0025115_0192874.jpg
 ここから先は時間もかかりますし、なかなか育てるのが難しいので実物を見たことのある人は少ないかもしれません。幼生から小さなウニへと変態する様子です。
ウニの発生_c0025115_0203610.jpg
 そして出来上がった小さな成体。この位の時期だとトゲや管足もはっきりしていて、タコノマクラもウニの仲間だということが実感できます。
ウニの発生_c0025115_0213971.jpg
 このようななんとも美しいウニの発生の様子を見て、動物発生学の研究に目覚めた人も、昔はたくさんいたように思います。

 こういうのを見ていると、やっぱり生物学の研究は視覚からだなあと思うのは私だけではないと思います。最近は目に見えない遺伝子や分子の研究が盛んですが、イメージングといってそれらを可視化することで説得力が増すこともあり、百聞は一見にしかずは科学においてもいまだに力を持っています。

 というわけで、この論文を見て「やっぱり私は光学的に見えるレベルの生物学が好きだ」ということを再確認しました。
by stochinai | 2010-03-25 23:59 | 生物学 | Comments(0)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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