5号館を出て

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もっとも必要としている人が読まないだろう「教育の職業的意義」

 前から気になっていた本田由紀の本をようやく手に入れて読みました。
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教育の職業的意義―若者、学校、社会をつなぐ (ちくま新書)


 書かれていることを一言で言い表すことができるほどメッセージはシンプルです。
 教育には若者に職業に対する<適応>と<抵抗>の力を与えることが求められている。
 書かれていることは、きわめて正当で説得力のあることばかりなのですが、はっきり言って読みにくいと感じました。

 私は大学で教職に就いておりますので、読みにくい書籍を読むことは自分の義務みたいなものだと覚悟していますが、この本には私のような人間が読むことよりも若い高校生や大学生あるいは大学院生、さらには中学生などにも読んでもらいたい重要なことがたくさん書かれています。

 しかし残念なことに、この本に書かれている重要な情報が、それをほんとうに必要としている人たちに届かないだろうという悲しさも感じてしまいました。

 本田さんがこのブログを読むことはないだろうと思いますが、もしも彼女に近い方がお読みいただけたのでしたら、是非とも本人にお伝えください。

 高校生くらいでも平易に読めるバージョンのものを是非とも出していただきたいと思います。

 今の社会がどう変わらなければならないかという提案が書かれていることはわかりますが、今職業を選択しなければならない若者達あるいは職業が選択できなくて苦悩している若者達にとっては社会が変わるまで待っている余裕はありません。彼らにとっては、現状を理解し、その上で自分たちがどのように対処していかなければならないのかということを知ることは死活問題なのです。

 その死活問題について、社会がまだ動き出してはいなさそうなこと、そうである以上、自分が動き出さなければならないこと、そのメッセージを彼らに一刻も早く届けなければならないと思います。

 とても重要なことが指摘されている本だと思いますが、もっとも大きな影響を受ける人たちに届く形でメッセージを届けることも求められているのだと思います。

 私は本田さんのファンですが、そこのところを考えていただけるとうれしいと、逆に言うならちょっと残念な気持ちになった本でした。
by stochinai | 2010-03-30 20:29 | 教育 | Comments(0)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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