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シードラゴンの収斂進化

 新しい論文をご紹介します。Zoologica Scriptaというノルウェーとスウェーデンの分類学雑誌に載っていたものです。
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 最近は表紙がダーウィンの描いたいたずらがきのような「系統樹」なので、印象に残っていました。

 印刷前のオンライン版です。

Convergent camouflage and the non-monophyly of ‘seadragons’ (Syngnathidae: Teleostei): suggestions for a revised taxonomy of syngnathids
Nerida G. Wilson, Greg W. Rouse

Article first published online: 10 SEP 2010
DOI: 10.1111/j.1463-6409.2010.00449.x


 オーストラリアに住むシードラゴンはタツノオトシゴに似ていますが、別のグループの動物です。いずれも海藻にとても上手に擬態した3種類が知られており、その特異な形態からいずれも近縁種だと考えられていました。
シードラゴンの収斂進化_c0025115_19342435.jpg
 この写真のAがウィーディシードラゴン(海藻っぽい)、Bがリーフィーシードラゴン(葉っぱが多い: これが映像などでもっとも有名なもので、各地の水族館でも競って収集していると思います)、そしてCがちょっと珍しいリボンシードラゴン(ホンダワラの枝に似ている)と呼ばれるものです。

 今までは、この3種が何となく近縁とされていたのですが、この論文でチロクロームbという酵素や、リボソームの遺伝子を調べて系統樹を書いてみると、AとBが近縁だということは確かめられたのですが、Cは意外と離れたところに枝が分かれてしまいました。
シードラゴンの収斂進化_c0025115_19342293.jpg
 この系統樹にはヨウジウオやタツノオトシゴ、それにシードラゴンなどヨウジウオ科がまとめられていますが、茶色に塗られたものがシードラゴンの位置です。上の大きめの四角にウィーディシードラゴンとリーフィーシードラゴンが収まっていますが、リボンシードラゴンはそこから結構離れた下の方に分かれてしまいました。

 ということは、ウィーディとリーフィーは海藻に擬態する共通祖先から分岐進化してきたものと考えることができますが、リボンシードラゴンはまたく独立に似たような海藻に似せた擬態を進化させて、上記2種となんとなく似てしまった「収斂進化」の結果だと考えられるということになります。

 まあ、擬態に関しては収斂進化はそれほど珍しいことではないのですが、こういうポピュラーな動物にも進化の謎の一つである収斂が見られるということは、とてもおもしろいことなので、若い人が進化学研究へと興味を抱くきっかけになる可能性が大きいものだと思います。

 こういうポピュラーな動物を使った、正統的「先端研究」はどんどん一般の方々に成果を報告していくべきだと思います。
by stochinai | 2010-09-13 20:00 | 生物学 | Comments(0)

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