5号館を出て

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原始的なカエルは四肢を拡げてお腹で着地する

 結構長いことアフリカツメガエルをはじめとする両生類を使って研究してきたので、両生類についてあまり知らないことはないと、なんとなく自信のようなものが芽生え初めていたのですが、今日簡単に覆されてしまいました。

 10月号のスミソニアン・マガジンをiPadでパラパラと流し読みをしていたら、かわいらしいカエルの写真が出ていた短いコラムのようなものがあったので、読んでみるとビックリ。原始的なカエルは、ぴょんと跳びはねて着地するときに、両手両足(四肢)を大きく拡げてお腹から着地すると書いてあったのでう。

 しかも、聞き書きのあいまいな記事ではなく、きちんとした論文の引用もある本格的な生物学的知見のようです。

 本が手元にない方でも、ウェブで記事を読むことができます。

 「Wild Things: Life as We Know It」というページで、いろいろな動物が登場するのですが、一番下のニュー人ランドに住む原始的なカエルが写真付きで紹介されています。
原始的なカエルは四肢を拡げてお腹で着地する_c0025115_23252184.jpg
 それだけではなく、動画も着いているのですが、その動画が衝撃的です。

 どうやら、この原著論文の写真のもとになった動画そのもののようです。

NATURWISSENSCHAFTEN
Volume 97, Number 10, 935-939, DOI: 10.1007/s00114-010-0697-4
SHORT COMMUNICATION
Landing in basal frogs: evidence of saltational patterns in the evolution of anuran locomotion
Richard L. Essner, Daniel J. Suffian, Phillip J. Bishop and Stephen M. Reilly


 この論文はpdfファイルで全文がアクセス可能ですので、是非ともご覧いただきたいのですが、いろいろなカエルを跳ばしてみて、その様子を比べてみるという、なんとものどかに思える論文ですが、結果は(少なくとも私にとっては)かなり衝撃的なものでした。論文の写真を引用します。
原始的なカエルは四肢を拡げてお腹で着地する_c0025115_23251924.jpg
 一番上の段が問題のカエルの跳ぶ姿です。

 2段目と3段目のカエルは、一番下が跳ぶカエルとしてはもっとも進化していると考えられている、トノサマガエルに近い仲間です。真ん中は、韓国などにもいるスズガエルで、ちょっと原始的だと言われています。この両者はどちらも、「普通のカエル」のように跳びながら、両手両足を縮めながら、着地へと向かいます。この姿勢で着地すると、着地と同時に次の飛躍にすぐ移れます。

 ところが、今回問題になっている一番上のカエルの写真を見てください。跳び上がってから着地まで、両手両足をだらりと伸ばしたままで、まるでカエルのフィギュアに見えます。そして、そのままお腹で着地してから、おもむろに両手両足を縮め始めるというなんともスローモーな運動です。これでは、着地してから次の飛躍まで結構時間がかかってしまい、敵にも捕まりやすいのではないかと思われます。もちろん、固い地面にお腹を打つ危険もあります。

 論文によれば、世界中にいるこの仲間はみんな同じような飛躍と着地の姿勢をとるので、これは進化的に原始的な性質なのだと論じています。確かに、この姿勢での着地は着地というよりは、「着水」に適した姿勢に見えます。というわけで、これらの跳ぶカエルは水辺で跳ぶ行動が進化したのだという議論のようです。

 また、これらのお腹着地カエルは泳ぐ時も、いわゆる「カエル泳ぎ」という両手と両足の動きを左右で同期させる泳ぎができず、4本の手足を交互に出す「トロット泳ぎ」をするという特徴もあるのだそうです。

 私は先日、北海道新聞にカエルには跳ぶカエルと跳べないカエルがいるというコラムを書きましたが、その時にはこのお腹で着地するカエルのことはまったく知りませんでした。今度、同じような記事を書くときには、まったく違った文章になってしまうことっでしょう。

 それにしても、まだまだ勉強が足りませんでしたね。反省です。

【追記】 しかも、この原始的な仲間のカエル(Ascaphus)には、大人になっても雄にはしっぽが残っている種がいるのだそうで、またまたビックリです。
Commented by さなえ at 2010-10-04 06:35 x
大笑いしてしまいました。お腹の脂肪が厚いか、皮が厚いかw。ジャンプしているうちに上達しそうなものですがw。もちろん人を想像してしまいました。これだからおばちゃんは…といわれそうですw。
Commented by stochinai at 2010-10-04 19:28
 おもしろいと素直に喜んでくれる人もいるのですが、そんなことがわかっても人間の経済生活にはなんの足しにもならないことは事実ですから、そんな研究をやってなんになると言われることもあります。ノーベル賞をもらうことはないでしょうが、イグ・ノーベル賞ならば有力候補になると思います。
by stochinai | 2010-10-03 23:46 | 生物学 | Comments(2)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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