5号館を出て

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大学図書館の廃棄書籍はどうなるのか

 昨年の夏頃から、北大内の様々な図書館から、本が不要になったので利用の希望があったらお知らせくださいというメールが頻繁に届くようになったと思っていたのですが、今年になってからは全国の大学から同様の問い合わせが来るようになりました。例えば、これは今週の月曜日に届いたメールです。一部、省略や伏せ字、改行の変更などがあります。
各位

                         ***図書室

     東***大学からの照会について(お知らせ)

東***大学から下記のような照会が届いております。
もしも、利用希望がありましたら、***図書室までお知らせください。
(当該図書は、資産として管理することが求められます。)

------------------------------------------
>
>                         平成22年 11月8日
> 国立大学図書館協会加盟館
>   (附属)図書館担当者 殿      
>
>                東***大学附属図書館長
>                           * *   * 
>
>   不用物品(図書)の無償譲渡について(照会)
>
> いつもたいへんお世話になっております。
> 下記物品(図書)は重複等のため本学において今後利用する
> 予定がありませんので譲渡の照会を行います。
> つきましては,貴館において譲渡希望がありましたら
> お知らせください。
> 希望資料が重複した場合には先着順とさせていただきます。
> また,希望が無い場合は,回答不要です。
>
>                記
>
> 1.譲渡対象図書リスト
>   次のURLを参照ください。
>
>   ***学部(**キャンパス)図書館
>   http://lib.*****.ac.jp/library/*/haikilist-s.html
>   ***学部(***キャンパス)図書館
>   http://lib.*****.ac.jp/library/*/haikilist-e.html
>
> 2. 贈与の対価:無償としますが、送料は譲渡を受ける側
> の負担とします。
>
> 3.受付期間:
> 平成22年11月8日(月)~平成22年11月15日(月)
>
------------------以上引用----------------------
 全国の大学から来るようになったと思っていたのですが、文書の宛先が「国立大学図書館協会加盟館」の担当者となっていますので、国立大学同士で行っていることのようです、それが頻繁に来るようになったということの原因は、いくつか考えられます。

 直感的な感想としては国立大学の法人化で図書館も大変なんだなと思ってしまいますが、引用文の前のカッコの中の注釈で「当該図書は、資産として管理すること」とあることから、ちょっと勘ぐりたくなくことがあります。図書は国立大学の「資産」であるらしいということです。法人化後は各大学の持っている資産の厳正な管理を求められているようなので、利用されないものを資産として抱えていることは国立大学にとって不利なことに違いありません。それで、緊急に全国の図書館で整理・放出が始まったのではないでしょうか。

 しかし、処分といっても「資産」をいきなり「廃棄」するわけにはいかないので、いちおう形だけでも全国の国立大学図書館に「無償譲渡」を打診しているものと思われます。もちろん、廃棄しようと思うくらいのものですから、ある意味で「ゴミ」に近いものと判断されるような書籍ですから、引き取り手があるとは思ってもいないということが、膨大な量の書籍の譲渡希望の受付期間がわずかに1週間というところからうかがえます。

 ほとんど利用されない書籍が法人の資産として計算されてしまうことが国立大学にとって不利になるだけではなく、膨大な図書が占有している所蔵スペースという空間資産の有効利用ということも大学側の切実な事情だと推察されます。

 あまりまじめに内容を点検したことはないのですが、添付のリストを見ると教育用書籍で重複したものが多いような傾向がありますので、ひょっとすると一部ずつは図書館で保管した上で廃棄しようとしているのかもしれませんが、中にはかなり貴重と感じられる定期刊行物の学術専門誌なども見受けられます。
c0025115_2016142.gif
 (C) photoXpress

 私の研究室にも、かなりたくさんの廃棄書籍がありますが、その科学的価値はさておき、昔の専門書籍は歴史的そして美術的価値の高いと思われるものがたくさんあり、置く場所がないからとか、資産として計算されてはかなわないというだけの理由で廃棄されるということは、とても心が痛みます。

 というわけで、せめて廃棄される本はできるだけデジタル化してデータだけでも保存しておけないものかと思います。Googleがスポンサーになってデジタル化してくれるという可能性があるのだったら、それがその後どのように利用されるかということはとりあえず不問にして、とにかく人類の歴史を保存するという意味で廃棄するものについてはそうしても良いのではないでしょうか。(まあ、廃棄するようなものをGoogleがデジタル化してくれないかもしれませんが、そうだったら廃棄する側の責任としてデータを保存すべきではないかとも思います。)

 全国の国立大学の図書館が競争で本を廃棄しているのではないかと思われるほど、頻繁に上記のようなメールが届くものですから、ちょっと不安になってしまいました。

 世界の図書館が横の連携なしに書籍を処分し始めたら、何百年後かに「貴重な本でしたが、世界には1冊も残っておりません」などというほんがぞろぞろ出てくるかもしれません。

 テクノロジーがあるのですから、最低限の保存努力くらいはしておかないと、子孫達に申し訳ないと思います。
Commented by lib at 2010-11-13 14:32 x
blog拝見しました。国立大学図書館の者です。

こういった照会メールは,年に10回ほど見るでしょうか。当館でも他大学から照会があった時は,いただくことがあります。しかし,他大学からの照会をさらに学内教員に照会するということはしておりませんでした。

当館でも照会をかけたことがありますが,対象は重複資料と破損資料です。最低1冊は必ず図書館に残してあります。破損していても1部しかなければ廃棄対象にならない場合もあります。

個人的には,できれば廃棄はしたくありません。とにかく書庫が狭隘しており,泣く泣く廃棄するものです。

廃棄する側でデータ保存,という点については,図書館には所蔵権しかありませんので,できるかどうかは著作権法上難しいかもしれません。
Commented by stochinai at 2010-11-13 22:05
 丁寧に教えていただき、ありがとうございました。なんとなく事情が飲み込めてきました。せっかく作られた書籍ですから、最後までなんとか有効に利用できる方策が見付かると良いのですが・・・。
by stochinai | 2010-11-10 20:33 | 大学・高等教育 | Comments(2)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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