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アンモナイト化石の3D解析で彼らの食性が明らかになった

 およそ4億年前のデボン紀初期から、白亜紀が終わる6500万年前まで繁栄を続けたオウムガイのような殻を持つ頭足類(イカ・タコの仲間)であるアンモナイトは、化石としてもふんだんに出てくるものですが、その生物体本体である軟体部分が化石として残りにくいことから、彼らが何を食べていたのかということに関する情報は極めて限られていました。

 今日公開されたScienceには、中生代のアンモナイトであるBaculites属の化石をシンクロトロンX線マイクロトモグラフィーという方法で解析することで、その微細な3D構造を明らかにした論文が載っています。

 解析されたアンモナイトBaculitesの復元図(Image credit: A. Lethiers, UPMC)が、こちらで紹介されています。
アンモナイト化石の3D解析で彼らの食性が明らかになった_c0025115_18332436.jpg
 そして、マイクロトモグラフィーのビームが当たっているアンモナイト化石を解析中の写真です(ソースはこちら)。
アンモナイト化石の3D解析で彼らの食性が明らかになった_c0025115_18364098.jpg
 論文のタイトルは、「顎の構造が保存された化石から明らかになった中生代のアンモナイトの食物網における役割」とでもなりましょうか。

Science 7 January 2011:
Vol. 331 no. 6013 pp. 70-72
DOI: 10.1126/science.1198793
REPORT
The Role of Ammonites in the Mesozoic Marine Food Web Revealed by Jaw Preservation

Isabelle Kruta, Neil Landman, Isabelle Rouget, Fabrizio Cecca and Paul Tafforeau


 この論文では特にアンモナイトの口器部分の解析を中心に行っており、カラストンビと呼ばれる上顎と下顎、そして特ににその間にある歯舌が精密に再現されており、その口器の中には甲殻類と貝のプランクトンも残っており、彼らが動物プランクトン食であることが明らかになったと主張されています。
アンモナイト化石の3D解析で彼らの食性が明らかになった_c0025115_1844582.jpg
 上の図で一番上の茶色の2つがアンモナイトの化石そのもので、それ以外はコンピューターで再構築された3D映像で示されているようなのですが、素人が見るとなかなかこのグシャグシャの3Dから元の構造をイメージするのは難しいものです。

 しかし、その次の図ではきれいに再構築された歯舌が描かれており、これならなんとかわかります。
アンモナイト化石の3D解析で彼らの食性が明らかになった_c0025115_18445770.jpg
 そして何といっても圧巻なのが、グシャグシャの歯舌と並んで保存されていた見事なエビのような甲殻類(等脚類だそうです:青色)と、上のほうにピンクに塗られている小さな貝殻が、このアンモナイトが化石になる直前に食べていた「最後の食事」だという事実です。
アンモナイト化石の3D解析で彼らの食性が明らかになった_c0025115_1844549.jpg
 これによって、少なくともこの属のアンモナイトの食事は動物性のプランクトンであるということが明らかになり、彼らが絶滅した白亜紀の終わりにはこれらのプランクトンの大絶滅(激減)があったので、それがアンモナイトの絶滅の原因だと考える強い証拠にもなるということです。

 いずれにしても、なかなかスケールの大きな話で楽しい論文だと思いました。
by stochinai | 2011-01-07 18:59 | 生物学 | Comments(0)

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