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2億3千万年前に退化したカエルの下顎歯が2千万年前に再進化

 コロンビアやエクアドルに住むフクロアマガエル(Gastrotheca guentheri)というカエルがいます。
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 (public domain: Wikipedia)

 このカエルは、メスが背中のフクロの中で卵を育てるということでも有名ですが、Wikipediaにも書いているように、本当の歯(true teeth)を持った唯一のカエルなのだそうです。
2億3千万年前に退化したカエルの下顎歯が2千万年前に再進化_c0025115_18491371.jpg
 これは、こちらからお借りしたウシガエルの歯です。
2億3千万年前に退化したカエルの下顎歯が2千万年前に再進化_c0025115_185315.jpg
 上顎には細かい「歯」がたくさん生えていますが、下顎には歯がまったくありません。

 写真を見つけることができなかったのですが、このフクロアマガエルには上顎だけではなく、下顎にもちゃんとした歯が生えているのだそうです。

 BBC Earth Newsによると、進化を考えるとカエルでは2億3千万年前に下顎の歯が退化して以来、その後に進化したカエルはすべて下顎に歯が生えていないのですが、なんと2千万年前にこの種が出現した時に下顎の歯がまた進化してきたということのようです。

Frogs re-evolved lost lower teeth

 原著はどこだということで探してみると、1月27日付のEvolutionという雑誌のオンライン早版に出ていることがわかりました。
2億3千万年前に退化したカエルの下顎歯が2千万年前に再進化_c0025115_18591468.jpg
 この論文の中に出ている現生両生類の進化系統樹のひとつを見ると、確かに両生類の中で尾のないカエル(青いライン)が進化してきた時に、下顎歯がなくなったことが示されています(図の上の方にある矢印がそれを示しています)。
2億3千万年前に退化したカエルの下顎歯が2千万年前に再進化_c0025115_19559100.jpg
 そして、ずっと時代が最近になって進化してきたフクロアマガエルになってまた下顎に歯が進化してきたということになります(下の方の矢印がそれです)。

 その間隔がなんと2億年ほど、進化学では「Dolloの法則」と言って、進化は不可逆的に起こるという一般的なルールがあることになっていますが、たっぷりと時間をかけるとそういうことも起こるということを示しているのかもしれません。

 私としては、むしろこの「Dolloの法則」の方に違和感を覚えていたので、楽しい論文でした。
by stochinai | 2011-01-31 19:15 | 生物学 | Comments(0)

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