5号館を出て

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就活は4年後期まで禁止、卒業はいつでも自由

 わかりにくいタイトルを書いてしまいましたが、結局昨今の就職事情が企業ペースで進められている結果、大学生が焦ってどんどん就活の時期が早まっているとともに長期化しているという状況が、大企業を除くほとんどの企業と就職活動をする学生にとって良くないことであるということは、多数意見であるように思われます。

 大学で勉強する期間が4年でいいのかどうかはさておくとしても、現状では受験を終えてしばらくの間、虚脱状態や開放されて学生生活を楽しんでいる間もなく、3年生になると情報収集を含めた就職活動が始まってしまうということで、落ち着いて大学での勉学ができる期間は、大学院へ進学する人を除くと2年くらいという状況なのかもしれません。

 企業の側からみても、最近の大学卒業生には不満があるようで、そういう意味でもできるだけ大学で勉学する時間を長くとって欲しいというのは、企業・大学を問わない希望なのだと思います。もちろん、当の学生は何がなんだかわからないうちに就職活動に追い立てられていますので、それが緩和されていろいろな意味でもう少し大学生活を楽しみたいと思っているに違いありません。

 最近、就職活動に失敗した学生のことを思いやってか、大学卒業後3年間は「新卒」として扱うなどということも提案されているようですが、これは明らかに就活落ちこぼれ生に対する対策ということが見え見えですので、当の「落ちこぼれ生」にとってはそんなにメリットがあるとは思えません。

 というわけで、企業・大学・学生がそろって満足できる解決策はないかと考えてみたのですが、ひょっとするとこれはいいのではないかというアイディアが浮かびましたので、皆さまのご批判を仰ぎたく思います。
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 (C) photoXpress 

 それを要約したのが、タイトルに書いた「就活は4年後期まで禁止、卒業はいつでも自由」ということです。

 まず、大学にしても企業にしても、そしておそらく学生達自身にしても、大学のカリキュラムが4年間という年限をもうけて作られている以上、基本的には4年間かけてマスターして初めて「大学卒」といえるものが身につく(可能性がある)という了解はあるのだろうと思います。ですから、できるだけそれに近い時間(ここでは、譲歩して3年半)は、大学にどっぷりと浸ってもらうことを義務づけます。

 昔だって、就職活動4年生の秋からという「協定」があったのですから、この拘束は特に大きな問題にならないと思います。しかし、近年就職活動がレース化して、より早期からより精力的にやることで勝つというような傾向に陥ってしまった結果、序盤戦で勝てなかった人の就職活動はいつまでも続き、景気が良くない今のような時代には結果的には卒業までには就職が決まらないというようなことも多々出てくるということなのだと思います。

 というわけで、就職活動を4年の前期まで禁止してしまうと、大量の就職難民が生まれてしまう可能性がありますが、そういう人や大学では4年間しっかりと勉強して、それからゆっくりと就職をしたいという人は、4年を終えてからでも就職活動を始められたり、継続できるようなシステムを作るために、大学を卒業する時期は学生の意志で4年でもいいし、その後4年間くらいはいつでも卒業できるようにするというのが私の提案です。

 実は、今でも大学は4年を終えた3月だけではなく、6月、9月、12月に卒業できることになっているのですが、それを特殊な例外とするのではなく、誰でもが単位さえ修得していれば卒業する時期を「自分で選べる」ようなシステムにするというのは、現行のシステムのままでも運用はそれほど難しいことではないはずです。

 ただ、今のままだと4年を越えて在学する人は「留年」ということになって、学業成績や出席実績が不良であることを証明するようなことになっておりますので、その「偏見」をなくすためにたとえ学業成績が優秀な学生でも本人が望めば、4年を越えて在学し、いつでも好きなときに就職活動を開始できるようにしてあげるというのが私のアイディアです。

 それと今のままのシステムだと、5年目からもそれまでと同じ「高い授業料」を払わなければならないので、かなり負担になりますので、単位取得後の在学に対しては例えば授業料を5分の1とか10分の1とかに下げてあげるということも是非してあげたいと思います。大幅値下げとはいえ、在学のための授業料を払っているのですから、大学側に余裕があったら彼らが大学でさまざまな授業の単位を取ることも許可してあげると良いと思います。全学の「教養教育」などは1年生が受けるよりは大学院生くらいの年齢になってから受けたほうが、本人にとってもおもしろく身にもつくものだとも思いますので、そういう意味でも良いシステムとなるでしょう。

 こういうシステムが定着してくれば、企業の側でも4年で卒業するのが優秀な学生で6年かけて卒業するのは落ちこぼれというような判断はできなくなってくるでしょう。逆に、じっくりと時間をかけて大学で自分を磨いて5年・6年かけて大学を卒業し、これで社会で出ても良いという自信を持った上で就職活動をしてくる卒業生がどんどん出てくるようになれば、それは間違いなく後者を取りたいという企業の方が多くなると思います。

 とりあえず、日本の大学を変えるための一つの提案を考えてみました。ご意見をお聞かせ願えると幸いです。
Commented by ぢゅにあ at 2011-02-17 23:01 x
インターンシップというのは日本で普及していないんでしょうか?
少なくともこちら(アメリカ)では新卒を優遇するという企業はありませんので、学生は長期休暇や卒業後、インターン(就業訓練)によって実務経験を積むことが求められます。
何故日本の企業はそんなに新卒を欲しがるのでしょうか?
今にして思うと不思議です。
Commented by 甘過ぎ at 2011-02-18 04:42 x
4年で卒業した学生と6年かけて卒業した学生が、採用する企業にとってどちらが望ましいか判断する指標が求められるのでは。それがなければ企業は5〜6年かけて卒業する学生を実質留年・就職浪人したものとみなすと思います。

また就職活動を4年の後期からとすると、卒論はどうなるのでしょうか。私が学生の時代は今のように就職難ではなく、4年の前期に就職活動は終え、4年の後期は卒論に注力できる環境でした。
企業側にとってみると4年後期から採用活動をやると大量のエントリをさばけるのか、という懸念が出るのでエントリをしぼるようになるでしょうね。学生にとってみると今より一発勝負的な就職活動になるのでしょう。

新卒の一括採用は年功序列の雇用習慣の名残で、雇用規制の弾力化とともに能力主義がさらに一般化し、近い将来新卒と中途採用者が企業が求める能力を巡って競い合うことになるのではないのでしょうか。そうなると卒業してから就職活動してもいいと思います。それがほんとの姿なのでは。
Commented by K at 2011-02-18 20:18 x
私は現在就職活動をしておりますが、一斉採用をやめるのが困難なのであれば、卒業した春から就職活動を開始して、よく春に採用、としていただけると在学中は学業、研究に専念できて助かります。卒後3年というよく分からないを設けることが出来るのなら、卒後から開始も可能なのではないでしょうか?今までも、企業によっては採用0人の年はあったと思います。ならばどこかで1年遅らせることぐらい可能なのではないでしょうか?
Commented by stochinai at 2011-02-18 20:43
 Kさんのおっしゃっているやり方が、おそらく「世界標準」であり、政府や企業がしきろとグローバリゼイションをおっしゃるならら、そこも世界標準に合わせていただきたいと私も思います。実は、一斉採用もズルズルと続いてきた慣習に過ぎず、企業としてのメリットがあると説明できる人はいないのではないかと思います。企業さえ、現役一斉採用の呪縛から解き放たれれば、解決される問題はたくさんあると、私も思います。
Commented by あろえ at 2011-03-12 20:48 x
とても魅力的な記事でした。
また遊びにきます。
ありがとうございます。
by stochinai | 2011-02-17 22:00 | 大学・高等教育 | Comments(5)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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