5号館を出て

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直ちに健康に被害が出るものではない

 今日、福島第一原子力発電所付近で放射線の線量が「直ちに健康に被害が出る恐れのある」くらい強くなったために、多くの作業員が原発から待避したということがありました。その後、線量が低下したことを受けて、作業に戻ったというニュースがありました。

 今朝のNHKテレビでは30キロ以上離れたところを飛ぶヘリコプターから望遠レンズで撮った、3号機付近から白煙が上がる様子が放送されていました。
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 同じ頃(10時過ぎ)に、第1原発の正門付近での線量が急増して、10時10分に毎時810マイクロシーベルトだったものが、10時半には毎時2399マイクロ(2.4ミリ)シーベルトに、40分には近くの場所で毎時10ミリ(10000マイクロ)シーベルトにまで増えたため、現場の作業員に退避命令を出したということです(ロイター記事)。

 6-7(6000-7000ミリ)シーベルトの放射線照射が致死量ということです。ウィキペディアによれば5%致死線量が2シーベルト、50%致死線量 (LD50) が4シーベルト、100%致死線量が7シーベルトだそうです。同じところに、「200ミリシーベルト以下の被曝では、急性の臨床的症状は認められないとされる」と書いてありますので、どうやら「直ちに健康に被害が出るものではない」という最高の値がこのくらいということなのかもしれません。

 そこで、自衛隊や米軍が逃げ出す線量が50ミリシーベルトであるというのもなんとなくわかるような気がします。もっと高い値のところで作業をすることが多いと思われる原発の現場作業員の厚労省が認めていた許容被曝量も、もともとは100ミリシーベルトだったということですから、50-100ミリシーベルトというのがギリギリ「直ちに健康に被害が出るものではない」数値なのかもしれません。ところが、この値がかなりアバウトな(非科学的な)ものであることは、厚労省が最近その値を250ミリシーベルトまで引き上げたということからもわかります。つまり、数日前までは労働者にとって100ミリシーベルトが「直ちに健康に被害が出るものではない」数値だったものが、今日は250ミリシーベルトがその数値になっているのです。(The New York Times アメリカの原発労働者の許容量は50ミリシーベルトだそうです。)

 しかし、医学的には500ミリシーベルトで白血球減少が証明されているということですから、安全を見越してその許容量が50ミリシーベルトになっているのは、かなり納得できるものです。それを、いきなり250ミリシーベルトまで引き上げるというのは、ちょっとむちゃくちゃと言えます。いくら緊急時だとはいえ、こんな軽々に基準を動かして良いものでしょうか。そういう意味で、原発上空に50ミリシーベルトを遙かに越えた放射線が飛んできているという理由でヘリコプターによる作業を拒否した自衛隊の判断も理解できます。

 というわけで、「直ちに健康に被害が」出ようが出まいが、放射線は常に危険なものであり、どんなに小さなものであってもそれに対して拒否感や嫌悪感を持つのは健全な反応だと感じます。
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 こんなひどい状況になった原発に対して、いくら目に見えないものとは言っても、その背景に放射性物質そしてそれが出す放射線があるということを考えると、普通の人ならばただ遠くへ逃げることしかできないと思います。

 それにもかかわらず、東京電力に雇われているたくさんの正規・非正規の職員、警察、消防隊員、自衛隊員、米軍の方々が、状況を改善するために事故現場に立ち向かっている勇気には頭が下がります。しかし、それはあくまでもそれぞれの命を大切にすることを前提にした上でやっていただくべきものであり、他人が偉そうに「直ちに健康に被害が出る」とか出ないとか言えることではないはずです。

 しかし、この原発をこのまま放置しておけば、この先何十年にもわたって「死の灰」が吐き出され続けて、たくさんの人々に健康被害を及ぼすことは確実なので、なんとかしなければならないこともまた事実です。

 ここは原発に賛成も反対もすべて忘れて、一日も早く核燃料の「火を消す」ことに英知と努力を結集していくしかありません。科学者も、素人もプロも、みんなでアイディアを出し合いましょう。
Commented by jy at 2011-03-17 13:15 x
RI講習の時、
放射線の影響には"確率的影響"と"確定的影響"があると習った。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%94%BE%E5%B0%84%E7%B7%9A%E9%9A%9C%E5%AE%B3
なのに何故、政府もマスコミも誰も確率的影響に言及しない!

"直ちに"健康に被害が出るものではない・・・
インチキだらけだ
Commented by eisberg at 2011-03-19 01:05 x
ドイツのテレビは、現在敷地内に残って作業している人達の一部はホームレスや外国人労働者、未成年であると伝えています。彼らは「使い捨ての原発奴隷」で、たいした防御措置もなく働かされていると......

Commented by eisberg at 2011-03-19 01:06 x
ドイツ語ですが、リンクを貼らせてください。

http://www.youtube.com/watch?v=GmwSpyX8n_Q&feature=channel_video_title
Commented by stochinai at 2011-03-19 21:58
 ドイツのジャーナリストはおそらく「真実」をしっかり見ているのだと思います。その点に関しては日本人の大多数は知らないのではないかとも思います。
Commented by eisberg at 2011-03-20 16:13 x
ドイツの報道が正しいかどうか判断することは私にはもちろんできないのですが、以下の記事と関係しているのではないかと恐ろしく思っています。

http://www.jca.apc.org/mihama/rosai/elmundo030608.htm
Commented by albrecht16 at 2011-03-21 02:33 x
いかにもドイツらしい報道ですね。ドイツの原発反対派は今回の福島原発の事故を今度の選挙で左翼政党が勝ついいチャンスだとしかとらえていません。原発の悪いイメージをとことん国民に植え付けたいんですよ。
Commented by eisberg at 2011-03-21 04:19 x
albrecht16さん。私はこの報道の内容が事実かどうかを気にしています。ドイツが何故このような報道をしたのかはまた別問題です。
by stochinai | 2011-03-16 20:40 | 医療・健康 | Comments(7)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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