5号館を出て

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自然保護運動組織のロゴの変遷

 今日出た今週のNatureは表紙が「博士の未来」という、ある意味非常に悲観的な現実を象徴するデザイン(博士授与の学位記が未来を見通す望遠鏡になっている)で、中にもいくつかの博士関係の論説が載っていますが、世界的に同じような博士問題が起こっているようです。
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 今日はその問題はさておき、それらと並んで世界の自然保護運動組織が使っているロゴが時代とともにどのように変遷してきたかという、広い意味での科学コミュニケーション(環境、政治、デザイン)の象徴ともいうべきテーマを扱った論文から、そこで引用されたロゴを見ながら頭を休めていただきたいと思います。

 これは、タイトルの上にどかっと出てきた the World Wide Fund for Nature (WWF) のロゴです。実は最初に出てきたWWFのパンダは、例外的に変化の少ないロゴの代表でした。
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 約10年から15年おきくらいに変わってきたWWFのパンダはあまり変わっていないようにも見えますが、よく見ると結構変わっていて、最初のパンダはかなりリアルですが、最新のものはかなりシンポライズされたデザインに変わっていて、その前の変更の時から加わったWWFのフォントも、より図案化されたものになっています。時代とともに、垢抜けしてきたのが一目でわかります。

 続いては Birdlife International というトリの保護団体です。これも具象から抽象へとかわっています。
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 次は Conservation International というところです。
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 これはまた、ジャングルが丸と棒と極端に単純化してしまいました。
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 次の Marine Conservation Society というところは、リアルなヤドカリが、デザイン化されたイルカとヒトが仲良く泳いでいるところです。
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 こちら、Durrell Wildlife Conservation Trust はマダガスカルで絶滅したドードーです。最初からかなりデザイン化されていたのですが、こんどは一筆書きの墨絵のようになりました。

 2羽の白鳥が飛んでいた Wildfowl & Wetlands Trust はそのシルエットをそのまま利用しています。
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 The Woodland Trust は木が葉っぱになりました。
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 続く6つは、2回の変遷のあるものです。最初は British Trust for Ornithology というトリの愛護団体です。
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 どんどん単純化しています。

 次の International Union for the Conservation of Nature は最初こそデザイン化されたアーティチョークの蕾をデザインしたものを使ってはいますが、次からは自然をデザインすることは完全にあきらめて文字だけで済ませています。
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 ある意味、いさぎよいですが、銀行か何かと間違われそうなロゴではあります。

 次の Royal Society for the Protection of Birds のシンボルはソリハシセイタカシギという鳥だそうですが、典型的な愛鳥団体ロゴですね。
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 こちらも単純化の歴史を歩んでいます。

 The Woodland Trust と同じようなカシワの葉っぱをモチーフにした The Nature Conservancy ですが、これは他の大多数の団体とは逆に段々と複雑化してきています。
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 こういう例もあるのですね。

 オリックスをつかっているのは、Fauna and Flora International です。
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 これもデザイン化の道を走ってきましたね。

 最後の Friends of the Earth International が使った最初のロゴをよく見ると2羽の鳥が張っているひもか棒のようなものにカメがかみついてぶら下がっています。何か有名なお話のワン・シーンのようにも思えますが、その挿し絵の版画のようなものが使われています。
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 次に変わったロゴではヒトのてのひらのようにも、また鳥が太陽を背景に飛んでいるようにも見える抽象性の高いロゴに3か国語で「地球の友達」という団体の名前が書かれており、国際性が強調されています。そして、最後にはただの丸になってしまって今日に至っているようです。

 というわけで、組織のロゴは時代とともにその文化的背景に強く支配されつつも、伝統をどのようにつないでいくかというせめぎあいの中で生まれてくるものですから、うまくできたものは非常に強いインパクトを持って我々に訴えかけてくるというわけです。

 これも、重要なサイエンス・コミュニケーションの一分野だと思います。

 引用元はこちらです。

The art of conservation

Henry Nicholls
Nature 472, 287–289 (21 April 2011) doi:10.1038/472287a
Published online 20 April 2011

by stochinai | 2011-04-21 20:24 | コミュニケーション | Comments(0)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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