2011年 05月 15日
NHK教育テレビ「ネットワークでつくる放射能汚染地図~福島原発事故から2か月~」
今回の原発事故で初めてルポルタージュの名に価する番組を見たような気がします。
チェルノブイリなどの現地調査をするなどして、放射線医学総合研究所ついで厚生労働省の研究所(追記)で原発事故の研究をしていた木村真三さんは、今回の東京電力福島原発の事故に直面して、今こそ自分の研究が生きるチャンスだと考えていたところ、そうした研究調査を一切外部に発表することを禁止(追記:番組のナレーションでは「職場の幹部は自発的な調査をしないように指示」と言っています)されたことで辞表を出し、自主的に(あるいはNHKとの共同での)研究を開始、そこで得られた2ヶ月の結果をほぼリアルタイムとも言えるタイミングで報告した番組です。

彼のサポーターとなったのは1954年のビキニ事件以来、放射線観測の第一線に立ち続けてきた元理化学研究所の岡野眞治さん。かなりのご高齢であるにもかかわらず、自主的に放射性物質の降下データなどを現在も取り続けておられる方です。岡野さんと木村さんそれに京都大学、広島大学、長崎大学の放射線観測、放射線医学を専門とする科学者の方々がネットワークを作り、震災の3日後から放射能の測定を始め汚染地図を作成してきたという話は聞いたことがあり、彼らの作った汚染地図も公開されているので知ってはいたのですが、さすがNHKの取材陣の作った番組は単なるデータを越えるインパクトを与えてくれるものでした。

番組の中で出てきた岡野博士が開発した計測機はすごいものでした。ビデオで撮った現場映像とともにGPS情報、放射線量、放射性核種のスペクトルを、同時記録してゆくことができるというもので、世界唯一の機器なのだそうです。このような機器が日本にあるにもかかわず、政府や文科省が利用させてもらうということをしていないということは、彼らが今回の事故に対して、ひとりの被害者も出さず、1日も早く解決しようという意思がないことを白日のもとにさらけ出すことになったと思います。
東京電力は、原発の入り口で木村さんたちを追い返すシーンを除いて番組の中にはほとんど出てこないのですが、彼らが起こした事故が何万・何十万あるいはそれ以上の人々が何十年もかかって築いてきた生活を一瞬で破壊し尽くしたとてつもない犯罪を犯した存在であることがひしひしと伝わってきました。
ナチスドイツがユダヤ人に対する重大な人権侵害を起こした重罪犯として、ヨーロッパではいまだにその犯罪が追求され続けていることを考えると、東京電力の犯罪は今後数百年にわたって追求され続けられなければならないほどのものだという思いに至らされる番組でした。
まだ終わってはいるわけではありませんが、今回の東京電力の「犯罪」を許してしまったら、日本人は人間としての尊厳を失ってしまうだろうとも思わされました。
なお番組を見て、まだ若い木村さんが勤務先の理不尽な業務命令を不服として退職したということに喝采を送りながらも彼とご家族の生活を心配していたのですが、NHKのサイトで「木村氏は、元放射線医学総合研究所研究員。現在は北海道大学医学部非常勤講師」と紹介されているのを見てホッとするとともに、我が北大が正義漢あふれる彼の生活を支えることになっているらしいことに、なんとなく誇らしさを感じたのでありました。
ほんとうに、今回の事件では我々日本と日本人が試されていると感じます。
良い番組だったと思います。見逃した方は、何らかの方法でご覧になることを強くおすすめします。
チェルノブイリなどの現地調査をするなどして、放射線医学総合研究所ついで厚生労働省の研究所(追記)で原発事故の研究をしていた木村真三さんは、今回の東京電力福島原発の事故に直面して、今こそ自分の研究が生きるチャンスだと考えていたところ、そうした研究調査を一切外部に発表することを禁止(追記:番組のナレーションでは「職場の幹部は自発的な調査をしないように指示」と言っています)されたことで辞表を出し、自主的に(あるいはNHKとの共同での)研究を開始、そこで得られた2ヶ月の結果をほぼリアルタイムとも言えるタイミングで報告した番組です。


東京電力は、原発の入り口で木村さんたちを追い返すシーンを除いて番組の中にはほとんど出てこないのですが、彼らが起こした事故が何万・何十万あるいはそれ以上の人々が何十年もかかって築いてきた生活を一瞬で破壊し尽くしたとてつもない犯罪を犯した存在であることがひしひしと伝わってきました。
ナチスドイツがユダヤ人に対する重大な人権侵害を起こした重罪犯として、ヨーロッパではいまだにその犯罪が追求され続けていることを考えると、東京電力の犯罪は今後数百年にわたって追求され続けられなければならないほどのものだという思いに至らされる番組でした。
まだ終わってはいるわけではありませんが、今回の東京電力の「犯罪」を許してしまったら、日本人は人間としての尊厳を失ってしまうだろうとも思わされました。
なお番組を見て、まだ若い木村さんが勤務先の理不尽な業務命令を不服として退職したということに喝采を送りながらも彼とご家族の生活を心配していたのですが、NHKのサイトで「木村氏は、元放射線医学総合研究所研究員。現在は北海道大学医学部非常勤講師」と紹介されているのを見てホッとするとともに、我が北大が正義漢あふれる彼の生活を支えることになっているらしいことに、なんとなく誇らしさを感じたのでありました。
ほんとうに、今回の事件では我々日本と日本人が試されていると感じます。
良い番組だったと思います。見逃した方は、何らかの方法でご覧になることを強くおすすめします。

木村さんが放医研の後,(独)労働安全衛生総合研究所に移動され,そこで今回の「自主調査禁止」に遭遇したとの情報があり,番組でも「厚労省系の研究所」と言っていました。放医研は科技庁→文科省系ですよね。
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番組を見ると、木村先生が圧力をかけられたのは放射線医学総合研究所ではなく転職さきの厚生労働省です。放射線医学総合研究所の人たちは事故直後から現地に入り、自身らも被曝しながら医療活動や汚染調査をされています。
彼らが誤解されると悲しいです。対処をお願いします。
彼らが誤解されると悲しいです。対処をお願いします。
このあたりの情報は現時点では私には確認するすべがありませんので、間違いがありましたら「私の責任」ということで、このままにしておきたいと思います。
それはさておき、いろいろな情報の提供を感謝します。
それはさておき、いろいろな情報の提供を感謝します。

「確認するすべ」があればいいと言うなら、
http://www.veoh.com/watch/v20982554AEAKc4JS
この動画の2分40秒付近で確認できますよ。
読み込むのにちょっと時間かかりますけど。
http://www.veoh.com/watch/v20982554AEAKc4JS
この動画の2分40秒付近で確認できますよ。
読み込むのにちょっと時間かかりますけど。
ありがとうございました。番組を見ることができ、私が錯誤していたことを確認しました。記事中には「追記」という形で訂正を入れました。放医研には大変にご迷惑をおかけいたしました。訂正してお詫びいたします。
by stochinai
| 2011-05-15 23:50
| 科学一般
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Comments(5)