5号館を出て

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また見つかった単為生殖のザリガニ

 5月31日付け(日本時間だと6月1日)で、PLoS one にちょっとだけセンセーショナルな論文が出ました。
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 1890年に北アメリカからポメラニア(現在の西ポーランド)に持ち込まれた90個体のザリガニ(頬にトゲがあるザリガニspiny-cheek crayfish Orconectes limosus)が今やヨーロッパ中に広がっているということです。同様にして北アメリカからヨーロッパに持ち込まれた8-9種のザリガニが定着しているのですが、その中でも単為生殖するということで一躍有名になったのがあのミステリークレイフィッシュです。この種ではオスが発見されておらず、完全に単為生殖のみで繁殖していると考えられていますが、この論文に出てくるOrconectes limosusは、オスもいて普段は普通に有性生殖をしているらしいのですが、メスを単独飼育すると、どうやら単為生殖もするということのようです。
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 これがOrconectes limosusです。頬にトゲがあるかどうかはっきりしませんが、それがよくわかる写真がこちらにありました。
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 論文はきわめて簡単なもので、10ヶ月くらい単独飼育したメスが産んだ個体の遺伝子(マイクロサテライト)を調べてみるとすべてが母親のものと同一だったということだけです。
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 「単為生殖」の場合には生まれる子どもの数が少ないらしいのですが、確かにみんな母親と同じ遺伝子の特徴を持っていて、クローンといっても良さそうです。

 そして、こちらが普通にオスメスの交配によって生まれた場合です。
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 子供の数が多いのと、それぞれの個体が父親と母親の遺伝子の特徴を混ぜて受け継いでいることが良くわかります。

 この論文の弱点は、野外から取ってきた個体のオスとメスを別々に飼育して生まれた子供と、オスとメスを一緒に飼育して生まれた子供を調べただけということなので、オスメスを分ける前に交尾していたメスが、貯精嚢の中に長期間生存する精子を持ち続けていたという可能性を排除しきれないことです。その批判を克服するのは非常に簡単で、生まれたばかりの子供を単独飼育して、単為生殖するかどうか見れば良いだけです。これなら小中学生にもできることなので、すぐに結論は出ると思いますが、その結果がこの論文に出ていないところをみると、ひょっとすると、このザリガニの単為生殖は一代限り(つまり孫はできない)という可能性があるのかもしれません。

 一方、2008年には野外で採集した個体のマイクロサテライトを調べた結果、アメリカザリガニでもいくつかのクローン集団が見つかったという論文(Discovery of four natural clones in a crayfish species Procambarus clarkii)も出ており、アメリカザリガニでも単為生殖がありうるのではないかと主張されています。

 というわけで、実はミステリークレイフィッシュ(Procambarus fallaxの単為生殖型)以外にも、単為生殖のザリガニが発見される可能性が高くなってきている、今日この頃です。

 世界中には結構ザリガニ・マニアと呼ばれる方がおられますから、そういうところから新しい発見があるかもしれませんね。そういえば、ミステリークレイフィッシュも見つかったのは、ペットショップでした。
by stochinai | 2011-06-02 19:29 | 生物学 | Comments(0)

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