5号館を出て

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原子力発電所の煙と火力発電所の煙

 おそらく何もない時ならば、原子力発電所から出る湯気も火力発電所から出る湯気も、白い煙はほとんどが温められた水であって、どうということもないものなのだと思います。それどころか、原子力発電所から出てくる湯気は、ごくごく微量の放射性物質を含んでいたとしても基本的には水しか出てきていないと見なせるくらい「キレイな」もののようです。
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(C) photoXpress

 それに対して、火力発電所からは大量の二酸化炭素も同時に排出されています。
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(C) photoXpress

 この二酸化炭素が地球温暖化の原因の一つであるということで、つい3ヶ月前までは、できる限り火力発電をやめて、原子力発電あるいは太陽・自然エネルギー発電にシフトするのが、地球にもそして人間の未来にも優しい政策なのだという声が大きかったと思います。

 ところが、大地震・大津波とともに引き起こされた福島原発の暴走を人類が止められないということがわかってから風向きが変わってきました。制御できない熱源を使った発電など、問題外だという声が大きくなってきたのです。

 実は問題ないように見えていた「平時」の原発にも大きな問題があることが、この写真からもわかります。

 日本の原発はほとんどが海岸に建てられており、何段階かのステップは踏んでいますが、結局は海水で冷却するシステムのため、普段はこの写真のように大量の湯気を出すことはありません。海水で冷やすにせよ、このように大量の湯気を出しながら大気で冷やすにせよ、原発では出てきた熱のほとんどを捨てて(あるいは地球を温めて)、その一部だけを発電に使っているというなんとも贅沢な発電方式だということも、今回の事故をきっかけに多くの人が知るところとなりました。

 発電所から出るものが、二酸化炭素や、温められた水くらいのものならば、少なくとも「ただちに健康に影響を及ぼす」ことはまったく考えられませんが、放射性物質の場合には、その量によっては即死するほどのものが原発の事故現場から放出されています。

 同じように目に見えないといっても、短期間に間違いなく人を殺す性質を持つ放射性物質と、地球温暖化の末に人類を絶滅へと導く可能性のあるという可能性を持つ二酸化炭素とを比べて、どちらを選ぶかという質問を出されたらあなたなどのように答えますか。

 私の場合ならば、即座に私が死ぬ可能性の低い方を選びます。選択の余地はありません。
Commented by あさ at 2015-07-12 02:16 x
WHO報告によれば、原発のかわりに火力発電を使用する事で、環境汚染による死者は、原発停止前より1,300人くらい年間、人知れず死んでいる計算になります。
by stochinai | 2011-06-09 22:05 | 環境 | Comments(1)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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