5号館を出て

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シリーズ原発危機 第2回 広がる放射能汚染

 やっぱりNHKは見ごたえのある番組を作ることができますね。
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 6月5日に放送した「シリーズ原発危機 第1回 事故はなぜ深刻化したのか」続編、「シリーズ原発危機 第2回 広がる放射能汚染」です。第1回目は「事故対応にあたった官邸、保安院、原子力安全委員会、そして東京電力はどう動いたのか。当事者たちの証言と内部資料をもとに徹底検証する。」という掛け声は良かったのですが、事故そのものが現在進行形で収束の目処も見えないという中、関係者がなかなか「本当のこと」を言ってくれるはずがないという状況でしたので、予想通り食い足りない印象ではありましたが、今回のものは期待を裏切らないものになっていたと思います。

 厚生労働副大臣が、現在の市場に「規制値を超えたものが流通していないとは断言できない」と本音の真実を語ったり、チェルノブイリで現在行われている住民に対するサポート体制を報告したあとで「今の日本政府からは感じ取れないものがいかに重要か」と言ったり、今の民主党政権がガタガタであることも理由のひとつなのかもしれませんが、少なくともNHKの番組を事前検閲して作り替えさせたりしていたような自民党政権時代とはやはりちょっと雰囲気が違うのかもしれないと思わされました。

 政府批判や政府内部からの本音トークが出てくることは放送・報道としては健全この上もないことだと、歓迎します。

 前半は、放射性物質の降下に見舞われながらも、その量から政府が保証する避難地域に指定されず、経済的にも避難のできない人々の取材がありましたが、いくら本人や家族が避難を希望しても、そういう地域の人々の移動は自己責任・自己負担となります。普通の「庶民」の多くは、仕事を捨て、家を捨てて、新しい土地へ移るなどという余力はありませんから、政府を信じられない限り精神的ストレスはいかばかりかと胸が痛みました。

 私はやはり原発事故以前の基準だった、年間1ミリシーベルト以上の線量が記録されるところは、管理地域として国が責任をもって規制する場所として扱うべきだと思います。その上で、精密で経時的な調査を行い、除染で1ミリシーベルト/年以下に下げれるのならばそうして、できないならば住民の移動を援護し、その方たちには仕事の世話も保証するというところまでは、国がやるべきことだと思います。

 それから、今回の番組で実は高濃度の放射性物質の降下が原発から数百キロ離れたところでも起こりうること、そしてそれは日本の持つ調査技術でしっかりと把握できるということを示したことも良かったと思います。今日初めてしって愕然とした方もいたかもしれませんが、漫然と待っているだけではなく、主体的に調査したり、調査を要求したりすることが大事だと思われた方も多かったのではないでしょうか。

 そして、この番組を見てのある意味で最大の収穫は、チェルノブイリ周辺地域では我々が想像していた以上にきめ細かく科学的な住民の食と健康を守る取り組みが行われているということだったと思います。我々はソ連やロシアは科学技術レベルが低いばかりではなく、国民の人権などはあまり尊重されない国家なのだと教えられてきたような気がしますが、今の福島と比べるとチェルノブイリ周辺地域の住民サポートは天と地ほどの違いがあると思いました。

 各学校に食品の放射線をカウントする装置があったり、あちこちにホールボディカウンターが用意されており、内部被曝を簡単にチェックできる体制ができていたり、無料の医療体制が用意されていたりと、いったいどっちがどっちの国なのかとわからなくなってしまうほどの充実ぶりでした。

 放射線との戦いは、「忍耐と努力そして財源」なのだという言葉は今の政権そして次に政権を取るかも知れない方々の心に深く刻んでおいてほしいと思います。日本の大臣は事故が収束していない現時点で、そろそろ避難から元の場所に戻ることなどを提案している時点で、この三つ「忍耐と努力そして財源」についてまったく理解がないことを暴露していると言わざるを得ません。

 「後戻りできない現実があるとしても、できることがたくさんある」そう締めくくった司会の言葉を、我々日本人全員がよく噛み締めて、原発そして原発事故と向かい合わなければならないと思いました。

 見逃した方、再放送は7月9日(土)午後4時30分からの予定だそうです。
Commented by 甘すぎ at 2011-07-04 04:12 x
チェルノブイリの住民サポートが充実したのは被害の深刻さの裏返しでしょう。

京大の今中助教のレポートだと30キロ圏避難住民の平均被曝量は180〜250mSv。原発から6キロのKrasnoe 村の方は、事故から1週間後の避難までに280〜300mSv位も被曝したらしい。それも外部被爆のみで。

住民の方の被爆や土壌汚染も含めチェルノブイリの事故がどの程度であったかもう一度認識した上で日本の対応を考えるのが良いと思います。

ホールボディーカウンターでの内部被曝調査は日本でももっと早くすべきでしたが今からでもすぐにすべき。減衰してしまったヨウ素131の被曝量は推測するしかありませんが。

また指摘の除染は学校や公園など公共の場所は可能でもすべての場所の除染は現実的には難しいでしょう。今は話題になっていませんが山、森、林など国土全体の汚染も次第に明らかになってくるはず。(こうしたところは自然のフィルタになっている)
Commented by トホの養母 at 2011-07-04 08:07 x
私も昨晩この番組を見ました。私も同じような感想を持ちました。
また、「甘すぎ」さんとも同じように、チェルノブィリの住民サポートが充実しているのは、被害の深刻さと、25年という歳月があったからだと感じました。

ベラルーシでは今でもそこに住んで、通常の生活を送るだけで内部被ばくしてしまうほどの汚染が残っているようです。
http://blog.goo.ne.jp/nbjc/e/111ec719f2281a1d45937639fe7796c3

私自身は現在北関東に暮らし、年間3ミリシーベルトを超える状況にいます。しかしチェルノブィリ事故時にはホットスポットができたウィーンに暮らしていて、10日間で被ばくした量は、現在の北関東の居住地域で福島事故直後の被ばくの100日間分に相当するほどでした。

「私はやはり原発事故以前の基準だった、年間1ミリシーベルト以上の線量が記録されるところは、管理地域として国が責任をもって規制する場所として扱うべきだと思います。」というご意見はごもっともだと思いますが、その範囲があまりに広大なので、現実問題としては、まず最も汚染が激しい福島から優先して徹底した対策をとってほしいと願っています。
by stochinai | 2011-07-03 22:56 | 医療・健康 | Comments(2)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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