2011年 08月 15日
リーダーズキャンプ最終日: 有馬元文部大臣の講演
小渕内閣で元文部大臣・科学技術庁長官をやったといいますから、今の文部科学大臣と同じ役職にいたという元東大学長の有馬朗人さんの講演会が今朝の9時から1時間ほど行われました。
これだけのビッグ・ネーム(だと私が勝手に思っていただけかもしれません)ですから、マスコミもさぞやたくさん集まるかと思っっていたら、会の関係者以外は誰も来ていなかったようです。14日の朝日新聞ローカル版には写真入りでこの行事のことが取り上げられていましたし、有馬さんの後の鈴木誠さんの講演の時にはNHKのビデオ・ニュースクルー(と言っても二人)がいましたので、札幌のマスコミ関係者が有馬さんの講演の存在を知らなかったはずはなく、要するにニュースバリューがない、あるいはマスコミは有馬さんが嫌いということで「無視」されたのではないかという気がします。
有馬さんのほうでもマスコミが嫌いらしく、有馬さんの講演の中で子供たちの「学力低下」と「理科離れ」はマスコミが捏造したデマだということをしきりと強調していました。日本の小中学生は理科が好きで、学力は低下していないということを繰り返しながら、彼が音頭をとっていた(?)「ゆとり教育」のせいで、日本の子供の学力が低下したという「神話」をなんとかぶち壊したいという強い熱意を感じさせる講演でした。
それにしてもお若い。80歳とは思えぬ元気さと、口舌の滑らかさ、さらにマスコミや大学教授達をののしる毒舌の鋭さ(汚さ?)は、講談としてはなかなかおもしろいものでした。
まあ百歩譲って、日本の子供たちの学力が低下していないということに同意したとしても、同じ姿勢で教育を受けてきたはずの高校生や大学生の学力はどんどん低下しており、最悪は日本の大人の学力が極めて低いとおっしゃっていたのですが、それはひょっとするとやっぱり初等中等教育の失敗でもあるのではないか、私は思ったのですが、そういう議論を受け入れてくれそうな雰囲気ではありませんでしたし、それより何より時間がなかったので、有馬さんのご意見は良くわかりましたということで、記憶に留めておくことにしました。
またどなたかの質問に答えて、日本のマスコミはノーベル賞以外の科学関係の賞は全く無視していると喝破していましたが、なるほど有馬さんはノーベル賞以外のたくさんの賞をお取りになっておられるのですね。これはすごいと思いますが、どんな発見・発明をなされたことに対する授賞なのでしょうか。
核物理学者でいらっしゃったのですね。その割には、原発事故関係で表に出てこられていなかったように思えますが、こういう講演会をとらえては小さな「核のリスクコミュニケーション」をやっておられるのかもしれません。どちらかというと、原子力発電を今でも推進すべきと考えておられるのかもしれません。
経歴などを考えてみると、マスコミが有馬さんをシカトしているのは、彼は「引退した政治家」として考えられているからかもしれません。マスコミが好きなのは、政治力のある人でこれからの日本の方向を決めるような景気の良いことをバンバン言って支持を集めるオピニオンリーダーなのだとすると、今や教育の舞台から消えつつある「ゆとり教育」の立役者の一人は、あまり「おいしい」存在ではないのでしょう。さらにまた反原発こそが世界的な「旬の方向性」なのだという流れを演出したいマスコミにとっては、核を夢のエネルギーだと今も信じていいるかもしれないオールド核物理学者でしかもマスコミを敵の如く思っておられる方を取り上げる理由が見つからないというところなのかもしれません。
マスコミにとっては、このサイエンスリーダーズキャンプも子供たちを理科離れから理科好きへと誘導し、さらには学力低下を食い止め、科学技術立国を目指す新しい教育の胎動としてニュースにしようという意図なのだとしたら、「子供の学力は低下していない。私の主張した『ゆとり教育』は間違ってないなかった」と叫び続ける老兵はご遠慮申し上げたというところでしょうか。
今度の高校の生物の学習指導要領を作られた方の話が聞けたり、またいろいろな先生達の本音や建前の話を聞けたりと、大学の中ではあまり得られない貴重な経験をさせていただいたという意味では、我々にとっても非常に貴重な経験になったイベントでした。
関係者の皆さまにはたいへんにお疲れさまでした。お盆はつぶれてしまいましたが、この後少しゆっくりとお休みください。私は明後日から大学院の入試が始まりますので、夏はないものと諦めております。
有馬さんのほうでもマスコミが嫌いらしく、有馬さんの講演の中で子供たちの「学力低下」と「理科離れ」はマスコミが捏造したデマだということをしきりと強調していました。日本の小中学生は理科が好きで、学力は低下していないということを繰り返しながら、彼が音頭をとっていた(?)「ゆとり教育」のせいで、日本の子供の学力が低下したという「神話」をなんとかぶち壊したいという強い熱意を感じさせる講演でした。
まあ百歩譲って、日本の子供たちの学力が低下していないということに同意したとしても、同じ姿勢で教育を受けてきたはずの高校生や大学生の学力はどんどん低下しており、最悪は日本の大人の学力が極めて低いとおっしゃっていたのですが、それはひょっとするとやっぱり初等中等教育の失敗でもあるのではないか、私は思ったのですが、そういう議論を受け入れてくれそうな雰囲気ではありませんでしたし、それより何より時間がなかったので、有馬さんのご意見は良くわかりましたということで、記憶に留めておくことにしました。
1978年 仁科記念賞そういえば、上のスライドの今日話す項目の7番目に唐突に「アイソトープとは」と書いてあるのが気になりました。
1987年 フンボルト賞
1990年 フランクリン・インスティテュート・ウエザリル・メダル(アメリカ)、ドイツ連邦共和国功労勲章(大功労従事賞)
1993年 日本学士院賞、ボナー賞(アメリカ物理学会)
1998年 レジオン・ドヌール勲章
2002年 大英帝国勲章(KBE)
2004年 文化功労者、旭日大綬章
2010年 文化勲章
(Wikipediaより) 原子核物理学の権威。原子核構造論などで多大な業績がある。代表的なものに有馬・堀江理論(配位混合の理論)、相互作用するボゾン模型の提唱、クラスター模型への貢献など。
核物理学者でいらっしゃったのですね。その割には、原発事故関係で表に出てこられていなかったように思えますが、こういう講演会をとらえては小さな「核のリスクコミュニケーション」をやっておられるのかもしれません。どちらかというと、原子力発電を今でも推進すべきと考えておられるのかもしれません。
経歴などを考えてみると、マスコミが有馬さんをシカトしているのは、彼は「引退した政治家」として考えられているからかもしれません。マスコミが好きなのは、政治力のある人でこれからの日本の方向を決めるような景気の良いことをバンバン言って支持を集めるオピニオンリーダーなのだとすると、今や教育の舞台から消えつつある「ゆとり教育」の立役者の一人は、あまり「おいしい」存在ではないのでしょう。さらにまた反原発こそが世界的な「旬の方向性」なのだという流れを演出したいマスコミにとっては、核を夢のエネルギーだと今も信じていいるかもしれないオールド核物理学者でしかもマスコミを敵の如く思っておられる方を取り上げる理由が見つからないというところなのかもしれません。
マスコミにとっては、このサイエンスリーダーズキャンプも子供たちを理科離れから理科好きへと誘導し、さらには学力低下を食い止め、科学技術立国を目指す新しい教育の胎動としてニュースにしようという意図なのだとしたら、「子供の学力は低下していない。私の主張した『ゆとり教育』は間違ってないなかった」と叫び続ける老兵はご遠慮申し上げたというところでしょうか。
今度の高校の生物の学習指導要領を作られた方の話が聞けたり、またいろいろな先生達の本音や建前の話を聞けたりと、大学の中ではあまり得られない貴重な経験をさせていただいたという意味では、我々にとっても非常に貴重な経験になったイベントでした。
関係者の皆さまにはたいへんにお疲れさまでした。お盆はつぶれてしまいましたが、この後少しゆっくりとお休みください。私は明後日から大学院の入試が始まりますので、夏はないものと諦めております。
by stochinai
| 2011-08-15 19:13
| 教育
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