2011年 09月 22日
動物学会2日目ムツゴロウさん登場
学会2日目。午前中には学会本部企画のシンポジウムがありました。
「東日本大震災(津波)による動物生態系や生物多様性への影響」 - 復興に向けて -
HS1-1:
Impact of the 2004 Indian Ocean Tsunami on the seafloor and corals at MuKo Similan Marine National Park, Thailand
最初に2004年のインド洋津波で被害を受けたタイで,被災直後から精力的に行われたサンゴの被害調査の報告がありました。タイではサンゴが重要な観光資源となっており,その状況はタイの経済に非常に大きな影響があるということで,国を挙げての調査が行われたという話は知りませんでしたが,なかなか興味深い話でした。
HS1-2:
東北大震災後の三陸沿岸生態系の復旧過程に関する研究
Impact of Tohoku earthquake on Sanriku coastal ecosystems
HS1-3:
津波が潮間帯に生息する生物に与えた影響
Effect of tsunami on intertidal animals
この2題は動物学会らしい学問的な検証です,被害の大きさに息を飲んでばかりはいられないと感じさせられました。
HS1-4:
東日本大震災の津波による昆虫と海岸の生物多様性に対する影響
The impact of Tohoku earthquake’s tsunamis on insects and seashore biodiversity.
最後は,学者ではなくプロの生態写真家による報告です。それまで撮影を続けてきた被災地を精力的に取材し,写真を撮ることでいなくなった動物,津波によって一時的に増加した動物の変化など,「素人の目」に写った震災・津波直後の変化を記録することの重要性を訴えていました。被災直後の研究体制が整わない時期には,どうしても研究者による調査が遅れがちになりますので,こうしたアマチュアを含めた人々による記録は,将来意外と重要な資料となる可能性も感じられました。
といういわけで,最後に動物学会ができることということが検討され,提案されました。
研究をするためにはどうしても「研究費」がなければなりませんが,研究費が獲得できないということは「絶対にやらなければならない研究」をやらない理由にはならない,という本日最後に発表された写真家の方の発言を受けた真剣なものになっています。
今年の動物学会は「何か違う」と感じた方も多かったかもしれません。実は今日の午後に行われた大会総会をもって,動物学会が社団法人から公益法人へと変わることが決議されたのました。それを考えると,午前中のシンポジウムが「学会の公益性」をアピールするものとなっていたように感じられたのは,あながち邪推というわけでもなさそうです。
「公益性」というと,今年度から創設された「動物学会教育賞」もそうした活動の一環なのかもしれません。記念すべき第1回の教育賞受賞者は,ムツゴロウさんこと畑正憲さんです。そういえば,彼は東大の動物学教室の卒業生でもありました。
テレビ以外では見たことがなかった畑さんを久しぶりに見ましたが,さすがにお年を召した感じです。廊下ですれ違った時には,まさかこの方があのムツゴロウさんとは気がつかないほどでしたが,夜の懇親会の席で挨拶された時には,例の「ムツゴロウ節」が炸裂して,大人気でした。
動物学会にこういう形の「有名人」がおいでになることも,今年から「動物学会は変わります」というメッセージだったのかもしれません。
テレビでも報道されたのではないかと思いますが,こうした動物学会の変化が「公益性」として,学会内外に受け入れられていくかどうかはこれからの問題で,まさに「試される学会」としてまな板に乗ったというところでしょうか。
明日は最終日,科学館サイパルでは子供たちを対象に「動物学ひろば」が開催されます。クリスタルホールでは,昼から全国から集まった高校生の研究ポスター発表会と,さらに午後からは公開シンポジウム「変わりゆく北海道の自然」もあり,いずれも市民の皆さまに公開されている行事です。
どなたさまも,どうぞお気軽においでください。
「東日本大震災(津波)による動物生態系や生物多様性への影響」 - 復興に向けて -
HS1-1:
Impact of the 2004 Indian Ocean Tsunami on the seafloor and corals at MuKo Similan Marine National Park, Thailand
最初に2004年のインド洋津波で被害を受けたタイで,被災直後から精力的に行われたサンゴの被害調査の報告がありました。タイではサンゴが重要な観光資源となっており,その状況はタイの経済に非常に大きな影響があるということで,国を挙げての調査が行われたという話は知りませんでしたが,なかなか興味深い話でした。
HS1-2:
東北大震災後の三陸沿岸生態系の復旧過程に関する研究
Impact of Tohoku earthquake on Sanriku coastal ecosystems
HS1-3:
津波が潮間帯に生息する生物に与えた影響
Effect of tsunami on intertidal animals
この2題は動物学会らしい学問的な検証です,被害の大きさに息を飲んでばかりはいられないと感じさせられました。
HS1-4:
東日本大震災の津波による昆虫と海岸の生物多様性に対する影響
The impact of Tohoku earthquake’s tsunamis on insects and seashore biodiversity.
最後は,学者ではなくプロの生態写真家による報告です。それまで撮影を続けてきた被災地を精力的に取材し,写真を撮ることでいなくなった動物,津波によって一時的に増加した動物の変化など,「素人の目」に写った震災・津波直後の変化を記録することの重要性を訴えていました。被災直後の研究体制が整わない時期には,どうしても研究者による調査が遅れがちになりますので,こうしたアマチュアを含めた人々による記録は,将来意外と重要な資料となる可能性も感じられました。
といういわけで,最後に動物学会ができることということが検討され,提案されました。
今年の動物学会は「何か違う」と感じた方も多かったかもしれません。実は今日の午後に行われた大会総会をもって,動物学会が社団法人から公益法人へと変わることが決議されたのました。それを考えると,午前中のシンポジウムが「学会の公益性」をアピールするものとなっていたように感じられたのは,あながち邪推というわけでもなさそうです。
「公益性」というと,今年度から創設された「動物学会教育賞」もそうした活動の一環なのかもしれません。記念すべき第1回の教育賞受賞者は,ムツゴロウさんこと畑正憲さんです。そういえば,彼は東大の動物学教室の卒業生でもありました。
テレビでも報道されたのではないかと思いますが,こうした動物学会の変化が「公益性」として,学会内外に受け入れられていくかどうかはこれからの問題で,まさに「試される学会」としてまな板に乗ったというところでしょうか。
明日は最終日,科学館サイパルでは子供たちを対象に「動物学ひろば」が開催されます。クリスタルホールでは,昼から全国から集まった高校生の研究ポスター発表会と,さらに午後からは公開シンポジウム「変わりゆく北海道の自然」もあり,いずれも市民の皆さまに公開されている行事です。
どなたさまも,どうぞお気軽においでください。
by stochinai
| 2011-09-22 23:59
| 札幌・北海道
|
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