2011年 09月 27日
大くくり入試の後始末としての学生客引き
北海道大学では今年の春の入試から学部ごとに学生を募集する従来の入学試験制度を大幅に縮小し、「文系」「理系」枠での入試を行った学部などがたくさんあります。その結果として,今年の1年生が学部に進学する来年の春には膨大な数の学生の進学振り分け作業が待っています。
この振り分けは学生にとっては希望する学部学科にいけるかどうかを決める重要なポイントになるだけでなく,学生を受け入れる学部学科にとっては,どのくらいの数の「優秀な学生」を囲い込むことができるかによって,その将来が大きく左右される重要な節目になると信じられている気配を感じます。(私個人としてはそれほどとは思っていないのですが,多くの先生方を見ているとそのように感じられます。)
この学科定員と募集人員の表をご覧いただければわかるように理系として1027人を募集した中から,我々に関係の深いところでいうと生物科学科(生物学)と生物科学科(高分子機能学)では,後期やAO入試を除いて,合計80名(35名と40名ずつくらい?)がそれぞれの学科へと進学してきます。
というわけで,学科によってはより優秀な学生がひとりでも多く学科にきてくれることを願って,いわゆる「客引き合戦」が起こってしまうというわけです。
1年生の後期新学期が始まる明日を前に,今日は1年生に対する理系の学科紹介が行われました。何と朝の9時から夕方5時過ぎまで,学科紹介のプレゼンテーションと,学生に対する進学相談会が5回繰り返されたのです。さすがに,これだけの作業を特定の人に任せるわけにはいかないということで,5つの研究グループから10人の教員と,5人のTAアルバイトが入れ替わり立ち代わりプレゼンと相談会を担当しました。私は最後の回を担当しましたが,もうこのくらいの時間に来る学生などはいないだろうとタカをくくっていたら,意外にも10名くらいの学生が熱心に聞きにきてくれました。聞くところによると1日で100名を越える参加があったようです,それだけでもう学科進学には3倍くらいの倍率が予想されるという状況です。
前にも書いたことがあると思いますが,私が北大に入学したときにも入試は「理類・文類」というような大くくりの入試で,進学する時の希望学部は全学教育(教養)の成績順に振り分けられていました。ところが,当時は今のような学部や学科の案内や紹介はどという行事があった記憶はなく,まったくほったらかしにされて,進学希望学科の内情などはすべて自分で調べて,あるいはまったく知らないままに成績だけで決めていた友人が多かったと思います。
だからと言って,当時の学生から優秀な研究者が育たなかったかというとそんなことはなく,ノーベル賞を取った鈴木先生も同じような進学振り分け制度で理学部化学科へ進んだのだと思います。おそらく鈴木先生が進学した頃の日本(世界)は化学が全盛期だったはずで,特に誘わなくても優秀な学生は化学科を目指したはずです。
現在でも事情はほとんど変わっていなく,いくら我々が努力しようが,全体として彼らの将来が明るくなることが少しでも期待される学問分野を目指す学生が多いですから,そういう分野ではなんの努力をしなくても優秀な学生が集まってくることが期待されます。
というわけで,気持ちはわからないでもありませんが,我々がいかに汗を流しても,学生の流れに影響を与えることなどはほとんどできないと思います。彼らには学科や学部の正しい情報を与えることが,必要にして十分なのだと思います。
逆に,そういうものを提供しても食いついてこない学生などを呼び込んでも,後々苦労が多くなるだけなのでそれは避けたいというのが私の意見なのですが,マイナーな声にすぎないのかもしれません。やれやれ。
というわけで,学科によってはより優秀な学生がひとりでも多く学科にきてくれることを願って,いわゆる「客引き合戦」が起こってしまうというわけです。
1年生の後期新学期が始まる明日を前に,今日は1年生に対する理系の学科紹介が行われました。何と朝の9時から夕方5時過ぎまで,学科紹介のプレゼンテーションと,学生に対する進学相談会が5回繰り返されたのです。さすがに,これだけの作業を特定の人に任せるわけにはいかないということで,5つの研究グループから10人の教員と,5人のTAアルバイトが入れ替わり立ち代わりプレゼンと相談会を担当しました。私は最後の回を担当しましたが,もうこのくらいの時間に来る学生などはいないだろうとタカをくくっていたら,意外にも10名くらいの学生が熱心に聞きにきてくれました。聞くところによると1日で100名を越える参加があったようです,それだけでもう学科進学には3倍くらいの倍率が予想されるという状況です。
前にも書いたことがあると思いますが,私が北大に入学したときにも入試は「理類・文類」というような大くくりの入試で,進学する時の希望学部は全学教育(教養)の成績順に振り分けられていました。ところが,当時は今のような学部や学科の案内や紹介はどという行事があった記憶はなく,まったくほったらかしにされて,進学希望学科の内情などはすべて自分で調べて,あるいはまったく知らないままに成績だけで決めていた友人が多かったと思います。
だからと言って,当時の学生から優秀な研究者が育たなかったかというとそんなことはなく,ノーベル賞を取った鈴木先生も同じような進学振り分け制度で理学部化学科へ進んだのだと思います。おそらく鈴木先生が進学した頃の日本(世界)は化学が全盛期だったはずで,特に誘わなくても優秀な学生は化学科を目指したはずです。
現在でも事情はほとんど変わっていなく,いくら我々が努力しようが,全体として彼らの将来が明るくなることが少しでも期待される学問分野を目指す学生が多いですから,そういう分野ではなんの努力をしなくても優秀な学生が集まってくることが期待されます。
というわけで,気持ちはわからないでもありませんが,我々がいかに汗を流しても,学生の流れに影響を与えることなどはほとんどできないと思います。彼らには学科や学部の正しい情報を与えることが,必要にして十分なのだと思います。
逆に,そういうものを提供しても食いついてこない学生などを呼び込んでも,後々苦労が多くなるだけなのでそれは避けたいというのが私の意見なのですが,マイナーな声にすぎないのかもしれません。やれやれ。
by stochinai
| 2011-09-27 19:59
| 大学・高等教育
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