2011年 10月 07日
完全な胎盤を持つトカゲ
哺乳類でさえカンガルーなどの有袋類は胎盤を持ちませんが、軟骨魚類のサメや一部の硬骨魚類では卵胎生といって卵を体内で孵化させるだけではなく、輸卵管で栄養やガス交換を行ってしばらくの間、稚魚を育てるものが知られています。そういう動物で母体と子の間でガス交換や栄養・老廃物の交換をする組織は我々真性の哺乳類(真獣類)と同じく「胎盤」と呼ばれることがあります。
両生類の中にも、背中で卵を育てるもののうちいくつかのものは、母体との間でガス交換や栄養供給をするものがあるようで、そういうものも「胎盤」のような組織を持っているとされています。
しかし、哺乳類に近縁な爬虫類にも卵胎生のものが知られていますが、爬虫類では栄養供給や老廃物の受け渡しをする、いわゆる本格的な「胎盤」を持つものは知られていなかったようです。
最近出た Journal of Morphology には、爬虫類ではじめて真性の胎盤と呼べるほどの本格的な胎盤組織を持ち「胎児」を育てるトカゲが発見されたという論文が載りました。
一見したところ、普通のトカゲのように見えますが、アンゴラ・ザンビア・コンゴにしかいないアフリカ産の非常に珍しいトカゲなのだそうです。
このトカゲが卵胎生だということは昔から知られていたそうですが、実際にお腹の中で育ちつつある卵や「胎児」を組織学的に研究することで初めてこのトカゲが本格的な胎盤を持つことがわかったようです。
こちらが、発生初期の卵の組織切片像です。
卵の直径が1ミリほどで、卵黄もそれに対応して極端に少ない(カエルほどしかない)ですから、肉食のトカゲがカエルのオタマジャクシほどの大きさで生み出されても、餌を採って大きくなることは難しいだろうと想像できます。
というわけで、しばらく大きくなるまでは母親の胎内で栄養をもらうことになったのだろうと思いますが、こんな小さな胚がそこそこ大きな子に育つまで栄養を与えるためには、やはり本格的な胎盤的構造が必要だったのだろうということで、哺乳類と同じような胎盤を持つように「収斂進化(収束進化)」したと考えられます。
胎児が育っている輸卵管 oviduct は、胎盤が形成されているので哺乳類の子宮と同じように子宮的輸卵管 uterine oviduct と呼ばれることもあるようですが、確かに切片で見るかぎり爬虫類とはおもえません。
こういう構造を見ていると、恐竜の中にも同じように卵胎生から、栄養を供給する真性の胎生だったものもいたのではないかと想像されますし、爬虫類や鳥類のような羊膜類では意外なほど簡単に胎生に進化できるのかもしれません。
しかし、そう考えると未だに胎盤を進化させなかった哺乳類である有袋類がいるのも不思議な気がします。
まったく進化というものは不思議なものです。
両生類の中にも、背中で卵を育てるもののうちいくつかのものは、母体との間でガス交換や栄養供給をするものがあるようで、そういうものも「胎盤」のような組織を持っているとされています。
しかし、哺乳類に近縁な爬虫類にも卵胎生のものが知られていますが、爬虫類では栄養供給や老廃物の受け渡しをする、いわゆる本格的な「胎盤」を持つものは知られていなかったようです。
最近出た Journal of Morphology には、爬虫類ではじめて真性の胎盤と呼べるほどの本格的な胎盤組織を持ち「胎児」を育てるトカゲが発見されたという論文が載りました。
こちらが、発生初期の卵の組織切片像です。
というわけで、しばらく大きくなるまでは母親の胎内で栄養をもらうことになったのだろうと思いますが、こんな小さな胚がそこそこ大きな子に育つまで栄養を与えるためには、やはり本格的な胎盤的構造が必要だったのだろうということで、哺乳類と同じような胎盤を持つように「収斂進化(収束進化)」したと考えられます。
胎児が育っている輸卵管 oviduct は、胎盤が形成されているので哺乳類の子宮と同じように子宮的輸卵管 uterine oviduct と呼ばれることもあるようですが、確かに切片で見るかぎり爬虫類とはおもえません。
しかし、そう考えると未だに胎盤を進化させなかった哺乳類である有袋類がいるのも不思議な気がします。
まったく進化というものは不思議なものです。
by stochinai
| 2011-10-07 20:57
| 生物学
|
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