5号館を出て

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民意はどこにある(「討論型世論調査」実験)

 やるたびにコロコロと意見が変わる世論調査は、話の種としてはおもしろいかもしれませんが、何年も先のことを見通した政策を決定する際などに、長いスパンで人々が何を考えていくだろうかという意味での「民意」を知るための手段としてはいかにも危ういものに見えます。もちろん常に揺れ動いているというのもある意味での「民意」の側面であることは間違いなく、そういう「瞬間最大風速」を知るためには新聞社やテレビ局が毎月やっている「出たとこ勝負」の世論調査にも一面の真理があるには違いないのだと思いますが、それだけではやはり何かが足りないと思われます。

 そこで、十分に情報提供し、じっくりと話し合った上で、世論調査をやった場合には、出たとこ勝負の世論調査とは違った結果が得られるのではないか、またそうして得られた世論調査は行政が政策を決定する際に、瞬間風速測定型よりはより適切な参考になるのではないかという期待のもとで始められたものが、今回実験的に試みられた「討論型世論調査」というもののようです。

 慶應義塾大学DP(討論型世論調査)研究センターのホームページに解説が載っています。
討論型世論調査(deliberative poll: DP)とは、通常の世論調査とは異なり、1回限りの表面的な意見を調べる世論調査だけではなく、討論のための資料や専門家から十分な情報提供を受け、小グループと全体会議でじっくりと討論した後に、再度、調査を行って意見や態度の変化を見るという社会実験です。
 こういうものを理解するには、実際に行われているものを見るのが一番ということで、見学させてもらいました。

 今回行われた「討論型世論調査」実験は、札幌市、北海道新聞社、北海道新聞情報研究所の協力のもと、BSEに関する討論型世論調査実行委員会と北海道大学 高等教育推進機構科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)とが主催して、現在行われているBSEの全頭検査について再検討する「みんなで話そう、食の安全・安心」というものです。

 札幌市民に対する世論調査ということで行われた今回のスケジュールの概要がこちらにあります。世論調査ですから、まずは市民から無作為抽出されたメンバー選考から始めます。最初に市民から3000人を無作為に抽出し、アンケートを送ります。アンケートを戻してくれた方の中にいる11月5日全日をかけて行われるイベントに参加できる人の中から、年齢・性別・職業・住居など、できるだけ札幌市民全体と同じような組成になるように150名を選び出します。この作業がうまくいかなければ、札幌市民を代表する「民意」をすくいとったことになりませんから、この段階はとても重要です。

 その150名の方々に、事前に情報提供のための資料をお送りし、予習しておいていただきます。その資料がこれです。
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 こちらに電子ブックが公開されておりますので、ご覧下さい。

 さて、今日がイベント・デー、いよいよ「討論型世論調査」を実際に行う日です。午前中に集まって、まず「討論前アンケート(世論調査)」に回答してもらいます。その後、15人ずつのグループに別れて「BSE問題のこれまで」について討論し、グループごとに「専門家に聞きたい質問」をまとめます。その後、全体が一堂に介して専門家3名の方々に各グループから出てきた質問に答えてもらいます。これがその時の模様です。
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 続いて、再度グループに別れ、今度は「今後のBSE対策」について討論し、専門家に対する質問をまとめ、再度全体が集まったところで専門家に質問に答えてもらいます。

 冊子の中にこれからのBSE対策(全頭検査)をどうするかの選択肢が示されており、ここではそれについて討論してもらいました。

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 各グループでいろいろな意見が出たのですが、おもしろいと思ったのは、各グループから「専門家の皆さんはこれから全頭検査をどうしたら良いと思うかを聞きたい」という質問が出てきたことでした。

 今までだと、専門家と市民が議論する場などでは、まず専門家から「こうしたら良いのではないか」という提案がなされ、それに対して市民が疑問や意見を言うという場面をいろいろと見聞きした記憶が多く、今回のように幾つかの選択肢を前に、市民から「専門家としては、どれが良いと思うか」などという質問が出るという状況はほとんど記憶がなかったものですから、これはなかなか新鮮な印象でした。まさに、市民が専門家に諮問しているというようにも思えたのです。

 というように、2回のグループ討論と2回の専門家への質疑応答を経て、市民の皆さんの意見はどのように変わったのでしょうか。あるいは、変わらなかったのでしょうか。それを知るために「討論後アンケート(世論調査)」が行われました。
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 もちろん、本日の「実験」の最大の興味は討論前と討論後で行われたアンケートの変遷なのですが、それを知ることは今はできません。今後、時間をかけて残された3回のアンケート(事前/討論前/討論後)の結果と、イベント当日の議論の内容などを集計・分析した結果が発表されることになっています。

 その結果如何によっては、行政側が「民意」を知るためにこの手法を使いたいと思うようになるかもしれません。あるいは、危険すぎるということで封印されてしまうかもしれません。

 いずれにしても、結果のレポートが楽しみです。

 運営ならびに参加された皆さん、お疲れさまでした。
by stochinai | 2011-11-05 22:52 | 医療・健康 | Comments(0)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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